――吉田照美さん主演という「企画モノ」の作品だと軽く考えていたら、いい意味で予想を裏切られる見事な「特撮ヒーロー」作品に仕上がりましたね。そして冒頭に「ロバマン、ロバマン! ロバマンとはいかなるヒーローなのか」というナレーションが入るなど、往年の特撮ヒーロー作品のパロディも存分に織り込まれていて、わかる人に向けたパロディもふんだんに盛り込まれていて、とても愛すべき作品です。

冒頭のナレーションは『豹(ひょう)マン』だよね。脚本は俺と木川明彦が共同で書いていて、いろんな特撮番組のネタを入れ込んでいるよ。

――そもそも照美さんの役名「吉村公三」は『ウルトラマンA』のやや地味なTAC隊員から来ていると思いますし、ロバマンが出没する「北川町」は『ウルトラセブン』の第8話「狙われた街」の舞台となった場所の名前ですね。

そう。ロバマンが耳からキーンと"悪の波動"を感じ取るのも『帰ってきたウルトラマン』の郷秀樹をイメージしているんだ。

――河崎監督はアマチュア映像作家時代から『8マン』の映像化を夢見ていて、8ミリ映画『エスパレイザー』を製作したりしていましたが、今回のロバマンの外見には監督が愛する『8マン』要素がかなり入っていますね。

ずっと『8マン』を作りたいと思っていたからね。ヘルメットを造型したら照美さんの頭に入りきらず、顔が長くなってしまったのは偶然なんだけど、照美さんのキャラに合ってると思った。ジャイアント馬場がグレートゼブラのマスクを被ってもすぐ正体がバレちゃうみたいな。俺は『8マン』の漫画を描かれた桑田二郎(桑田次郎)先生のファンで、何度もご自宅に行って話したことがあるんだけど、先生が「僕は月光仮面や8マン、黄色い手袋Xやウルトラセブンと、ヒーロー漫画をたくさん描いてきたけどね、結局のところヒーローは "暴力"で悪を倒しているんだ。本当の正義とは何かね」とおっしゃっていたことがあった。桑田先生から投げかけられた問いかけを、この映画のテーマにしたんだ。非力な者がいきなり超人的な力を授かったら、どう使う? という部分は、藤子・F・不二雄先生の『ウルトラ・スーパー・デラックスマン』なども参考にしたね。

――自分の信じる正義に迷いを感じたロバマンに、往年のスーパーヒーロー「月光仮面」が現れ、励ますシーンもインパクトが強かったです。月光仮面の出演はどのようにして決まったのですか。

昨年(2018年)東京コミコンにブース参加したとき、宣弘社の方々と仲良くなってね。新しくコスチュームを作った月光仮面がカッコよかったんで、出てもらおうという話になったんだよ。

――照美さんの身体を張った熱演、そして鶴光師匠の"怪演"が最大の見どころではありますが、さらに伊東四朗さんが「タフマン」に扮して登場するのには驚かされました。

伊東さんは照美さんとラジオをやっているから、特別出演をお願いしたんだ。ポジション的には「ウルトラマンキング」をイメージして、ロバマンのピンチにさっそうと現れるんだよ。たいへんだったのは「タフマン」として出てもらうことでね。タフマンの許諾を取るために代理店と交渉したりして、苦労したよ。最初、タフマンは宇宙人なんじゃないかと想像して台本に書いたんだけど、ヤクルトから「タフマンは地底人です」と設定チェックが入って、セリフを書きなおしたという裏話がある。地底人とは思わなかった。テレスドンかよ! って(笑)。

――ロバマンが劇中で正義の怒りをぶつける"悪"はディフォルメこそされていますが、けっこうわれわれも日常で見かけるような、リアルな描写がありますね。

いくつか、実際にあった出来事を台本に入れているからね。セクハラ上司のどうしようもないセクハラ発言とか、食堂で注文の品が来ないからって怒鳴り散らす客とか。あと、太ってる子どもが同級生からいじめられるって場面があるんだけど、その子の前にロバマンが現れて「こんどいじめられたら、こう言ってやれ!」って勇気づけるでしょ。あれは俺が子どものころ「こういうことを言えたらいいな」と思ったことを、ロバマンの言葉に託したんだ。『タイガーマスク』の精神も入ってるよね。

吉村自身がロバマンになった事件を経て、少しだけ成長すると周囲の環境も変わっていったとか、ストーリーも上手くいっているんじゃないかな。とにかく、ヒーローに対する俺なりの思いをぶちこんだ映画になってます。

こんど11月4日に「浜松町ハーベストフェスタ(浜祭)」の一環として、文化放送のメディアプラスホールで『ロバマン』の浜祭特別上映会がありますので、みなさんぜひ観に来てください。ここでは照美さんがロバマンのコスチュームを着て、お客さんと直接"ふれあう"ことのできる「マザー牧場」システムをとっています。お楽しみに!