探検家・舟津圭三×写真家・石川直樹対談 前編「地球が教えてくれること」
10年後、20年後に、社会の中心となっているはずの若い世代へ向けて、これからを生き抜くヒントを探してもらうTOKYO FMの特別講義「FM FESTIVAL未来授業」。10月20日(日)の放送では「FM FESTIVAL2019 未来授業 プレスペシャル 地球が教えてくれること~THINK SOUTH FOR THE NEXT~」と題し、今月3日(木)に都内で行われた公開授業の模様をお届けしました。

舟津圭三さんと石川直樹さん



◆犬ぞりだけで南極横断の冒険家
30年前、南極を犬ぞりで横断した探検家の舟津圭三さんと、かつて、7大陸の最高峰に、世界最年少で登頂した写真家の石川直樹さん。探究心の塊のような2人が、地球を歩いて見てきたこと、感じたこと、この星の未来を語りました。司会進行は「SCHOOL OF LOCK!」とーやま校長がつとめました。

とーやま:冒険家の舟津圭三さんは、若い頃から冒険に憧れを抱き、大学卒業後は商社に勤めるものの、数年で退職。計画も立てないまま一人でアメリカに渡ります。自転車でサハラ砂漠を横断するなどの快挙を遂げたのち、1989年、犬のトレーニングをされていたとき、犬ぞりだけで南極大陸を横断する史上初の国際隊に選ばれます。そのときのメンバーは世界6ヵ国から集まりました。アメリカ、イギリス、フランス、中国、そして日本。横殴りの吹雪にあったり、犬が何度もクレバス――氷河にできる深い割れ目――に落ちたり、ゴール目前で遭難したり。とにかくたくさんの困難と戦いました。

それらの壁を乗り越え、220日間をかけて6400㎞を犬ぞりでの南極横断を達成。世界中で話題となりました。南極点に到達されたとき、6人は世界に向けて1つのメッセージを発信しました。「Think South ――我々、南極大陸横断国際隊は、今日、南極点に到達しました。今、世界が1つに交わるこの地点から、世界の人々にメッセージを送ります。人は、たとえ、どんなに困難な状況においても、民族、文化、国家を越えて生きているはずです。」地球上で唯一国境を持たない南極で、環境と平和を訴えたわけです。

舟津:今から30年前、僕は33歳でした。6400㎞ほどを7ヵ月かけて、犬ぞりだけで横断したんです。僕たちが目指した南極点というのは、全ての子午線が一点で交わる場所。領土権の主張も凍結されている地なんです。そこで、僕たちを見てごらん、これだけ厳しい環境のなかでも、国や文化や宗教の違いを乗り越えて、一緒にやっていけるんだっていうことを伝えました。


舟津圭三さんと石川直樹さん(右)



◆辺境から都市まで旅する写真家
とーやま:続いて石川直樹さんです。石川さんは高校2年生のとき、インドとネパールへの1人旅をきっかけに旅に目覚めます。22歳のときには、POLE TO POLEというプロジェクトに参加されました。これは、世界7ヵ国の若者とともに9ヵ月かけて、北極点から南極点までをスキー、自転車、カヤック、徒歩などの人力で旅するというものです。

翌年には23歳で、7大陸最高峰の登頂に成功。これは当時の世界最年少記録となっています。辺境から都市まで地球上のあらゆる場所を旅しながら、土地が紡いできた歴史とそこに存在するリアルを写真というメディアで記録し続けている写真家です。

とーやま:何で旅をしようって思ったんですか?

舟津:僕は、小学校のときに見たグランドキャニオンの写真に憧れて、その景色をこの眼で見てみたいという想いに駆られてアメリカに行ったのが最初です。ワシントンD.Cからサンディエゴまでを、自分の足で横断しようと決めたんです。アメリカ人がかつて東海岸から西海岸に向かってフロンティアを開拓したのを真似したんですね。そのときは3ヵ月かけて旅しました。いろんな人と出会って、助けられて。最後、大西部の景色のなかでグランドキャニオンを見たときの感動は今でも忘れられません。

石川:僕は、高校2年生のときにインドとネパールに1人旅をしたのが始まりでした。高校2年生のときに思い立って、旅をしたんです。お金がないから物価の安いアジアに行こうと決めたんですね。けれど、親には当然、止められるわけです。インドは危ない、どうしても行くならシンガポールにしなさいって言われました。“わかった、シンガポールに行くよ”って嘘をついて、インド行きの飛行機に乗りました(笑)。最初で最後の嘘です。

とーやま:初めての海外はどうでしたか?

石川:驚きの連続でした。10m歩くごとに新しい光景に出会うんです。喫茶店でコーヒーを飲んでいたら象が歩いてくるとか、ガンジス川を眺めていたら上流から死体が流れてくるとか。そういうのって、日本で暮らしていたらあり得ないじゃないですか。今日、集まってくれた人たちのなかにも、まだ海外へ行ったことがない人っていると思いますけど、できればそういう光景を直接見る経験をしたほうがいいかなって思います。“世のなかって多様なんだ”ってわかるんです。自分の価値観が唯一の正しいものであると思っていたら、どうやら世界はそうではない、と。そのことに17歳で気づけたのは大きかったですね。

◆地球は旅人に何を教えてくれるのか
とーやま:最初のテーマは「地球が教えてくれること」。これまで長い時間、自然に身を投じられてきたお2人は、自然から何を教わりましたか?

舟津:僕は自分自身が自然の一部なんだということを学びました。南極大陸横断の際も、自然に挑戦するんだっていう気持ちで臨むわけじゃないんです。むしろ、自然の一部になっても良い、そんな感覚になるんですね。

いろんなところに旅をしましたけど、過酷な条件に身を晒すとそう考えざるを得ないんですよ。自然と対峙したときに、その脅威をどう乗り越えるかってあれこれ悩むより、いかにそれを受け入れて対処するかということを考えます。

とーやま:自然災害の多い昨今、生き抜くヒントになるお言葉です。石川さんはどうでしょう?

石川:自分の弱さみたいなことに気づかされますね。例えば、8000mの山を登るとき、身体を順応させていかなきゃいけないわけです。自分を変えなきゃいけない。無理して自分のままでいては、絶対にダメなんです。

とーやま:舟津さんは海外に住まれていたこともありますか?

舟津:はい。アラスカに22年ほど住んでいました。フェアバンクスっていう、市街から車で45分の森のなか。あっちは土地だけはいっぱいあるので、4万8,000坪くらいの土地を買って、その一部を開墾して、自分で家を建てて。井戸も自分で掘りました。

とーやま:ちょっと待ってください。普通のことのように話されていますけど、驚いていいですよね(笑)?

舟津:そうですね(笑)。アラスカは日本の4倍の面積があるんですが、人口が60万人しかいないので、そういう大きな土地が手に入るんです。ドッグヤードはこれくらいの広さにしようとか計算しながら、家とサウナ小屋の場所を決め、畑も耕していって、いわゆる開墾生活をしていました。

とーやま:今まで、一番嬉しかった瞬間って何ですか?

石川:僕はすげぇ喉乾きながら登頂して戻ってきたときに飲んだコーラかな。めちゃくちゃ嬉しかった。「うま!」って(笑)。もちろんですけど、山に自販機なんてないわけで。5,000mの岩と雪に囲まれたところで2ヵ月くらい暮らして、ヘロヘロになって帰ると、あらゆるものが美味しく感じるんです。

舟津:そういう意味では、身体が凍えてテントに入って最初に飲むお茶とかは最高ですね。砂糖を1杯だけ入れるんです。そうすると、自分の血液が温かくなって、指先がじわっとなる。非常に快感ですね。やっぱり、そういう自然のなかでしか味わえない非日常を通じて新たな自分を見つけるというのは面白いですね。

石川:水のありがたみとかそういう話をすると、どうしても説教臭くなっちゃうからあまりしたくないんです。でも、水道から飲み水が出るとか、コンビニ行ったらなんでも買えるとか、実はありがたいことなんだってわかります。当たり前なんだけど、当たり前だと思っちゃいけないっていうか。

<番組概要>
番組名:FM FESTIVAL2019 未来授業 プレスペシャル 地球が教えてくれること~THINK SOUTH FOR THE NEXT~
放送日時:10月20日(日)19:00~19:55
出演者:とーやま校長
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/future/fes/