大麻ベイプの模造品台頭、違法メーカーの実態とは

偽造カートリッジに対する大麻企業の努力にもかかわらず、いまだ健康被害は絶えず。

模倣されることが最高の誉め言葉だとすれば、米カリフォルニアを拠点とする人気大麻ブランドKingpenは、自分たちのベイプカートリッジが市場で最も偽造されて出回っていると知って、内心喜んでいると思うかもしれない。だが原因不明の肺疾患にメーカーも消費者も警戒を強める中、Kingpenの親会社Loudpack社はことのほか気をもんでいる。「現在の状況は大変恐ろしいことだと思います」と言うのは、Loudpack社の営業部長、ダニー・コラル氏だ。「たくさんの模造品が世に出回って市場にあふれかえり、人々に健康被害をもたらしている。このせいで、製品のイメージに傷がついてしまっている」

この2カ月間というもの、電子タバコと関連があると思われる謎の疾患で数百人が入院し、死亡したケースもあるという話が後を絶たない。疾患の原因をめぐる憶測も広がる中、疾病管理予防センターはベイプ使用に対して警告を呼びかけ、連邦および州レベルでも、フレーバーつきポッド型ベイプを禁止する措置が取られている。害を及ぼす可能性のあるカートリッジから子供たちを遠ざける、というのが表向きの理由だ。電子タバコが原因とみられる健康被害は1000件以上、死亡件数は少なくとも19件。問題が起きた経緯、ここまで手が付けられなくなった理由、被害の拡大を防ぐにはどうすればいいかなど、さまざまな疑問が持ち上がっている。だが、もう何年も合法的に営業してきた大麻企業は別の深刻な疑問を抱えている。なぜ政府はこうなることを予想できなかったのだろう?


各企業の対策

どのタイプの電子タバコがこうした疾患を引き起こしたかはいまだ不明だ。事実、現在の症例からは両者の具体的な関連性がいまだはっきりしていない。患者の中には、ニコチンベイプを使ったら症状が現れたという人もいるが、多くの患者は、THC製品を吸引した後具合が悪くなったと言っている。そのため大麻業界は、当然ながら少なからずパニックに陥っている。2012年に嗜好目的での大麻使用が州レベルで合法化されて以来、ベイプは着実な伸びを示してきた――だがこの数年、ニコチンやCBD、THCのVベイプ利用は急激に増加した。例えばカリフォルニア州では、昨年濃縮大麻の売上が従来の乾燥大麻の売上を初めて上回った。大麻市場の動向を分析するBDS Analytics社によると、合法マリファナの摂取方法の中で、電子タバコは第2位だった。今年5月の売上は、カリフォルニア州、オレゴン州、コロラド州だけで4億7300万ドル。金のなる木でありながら、いまも大衆や連邦政府からはまともに取り合ってもらえず苦労している業界としては、肺疾患の蔓延の大きな余波を受けるかもしれないのだ。

肺疾患の元凶のなかでも、主にビタミンEアセテートとプロピレングリコールといったカートリッジの増量剤が原因とみられている――この2つの物質は、加熱して吸引すると身体に害を及ぼしうる。合法大麻市場では極めて厳しい検査基準が設けられているため、メーカーの知らないところで増量剤が製品に混入することはまずない。カリフォルニア州の大手大麻検査研究機関のひとつ、Steep Hillの栽培科学部主任リディア・アバネーシ氏によると、ベイプカートリッジの検査では「カンナビノイド含有量に加え、残留溶液、残留殺虫剤、重金属、真菌毒、微生物汚染、異物」が検査対象となる。既存の検査基準の大半はカートリッジ内の増量剤を検知するのに十分なのだが、研究機関は昨今の危機的状況を受け、今後ビタミンEアセテートに特化した検査も実施することを発表した。カートリッジは最終的な製品パッケージの状態で検査されるため、メーカーが検査の後に安価な混ぜ物をカートリッジに混入する可能性はない。


野放しの違法メーカー

ということはつまり、汚染の大半は規制の目が届かないところ、つまり闇市場で起きているのは間違いなさそうだ。違法メーカーがベイプに混ぜ物を入れる理由はいくつかある。ひとつには、THCやCBDカートリッジに含まれるある種の化合物を希釈し、結晶化や変色、経年劣化を防ぐためだ。だが、これは良い方に解釈した場合だ、とCBD製造企業TribeTokes社のCEO、デイジャ・タフツ氏は言う。「ビタミンEの場合、卸値が非常に安いんです」。彼女の会社ではテルペン――大麻やその他天然由来の製品にもとから含まれている化合物――を使って、ベイプオイルの結晶化を防いでいるが、費用がかさむ。「1g当たりのコストは(カナビノイド)オイルと同じぐらいの値段になりかねません。ですから市場が激化すればするほど、価格で勝負しようとするところが増えてきます。コストの問題もありますし、怠慢もありますね」

違法な大麻ベイプの規制が困難だとすれば、合法CBD業界はさらに難しいかもしれない。2018年の農業法によりCBDが全国で購入できるようになって以来、大麻由来の化合物はいまや健康サプリメントとなり――合法大麻の莫大な収益に追い抜こうとする勢いだ。だが、CBDのベイプにはTHCほどの「興奮作用」はないにしても、やはり摂取したくないような化学物質がカートリッジに詰まっている可能性はある。それにTHCの規制が厳格な一方、CBDは無法地帯だ。

「CBDの世界では、ありとあらゆるおかしなことが起きています」と言うのはSteep Hillの最高売上責任者、トニー・ダニエル氏だ。「他の州から来た製品の中には、CBDはかけらも検出されないこともあります。あるいは、CBDチンキなのにCBDは全く含まれず、代わりに咳止めシロップが含まれていたり。私の想像ですが、消費者にある種の快感を味わってもらおうという(メーカー側の)努力でしょうね」 すなわち、今回の危機を招いた原因と疑わしき混ぜ物などが、最寄りのCBD業者のもとに紛れ込んでいる可能性があるということだ。

TribeTokes社は、違法カートリッジメーカーが消費者に警告することなく混ぜ物を加えている可能性に気がついた。そこで同社では、現在の危機が起きる以前から、全ての自社製品にQRコードを付け、消費者に製品の検査結果が分かるようにした。「我々は先を見越して、消費者を啓蒙し、本来これはメーカーがやるべきことだと見せたかったのです」とタフツ氏。「規制で対処することも可能だとは思いますが、メーカーが自主的に消費者教育を行い、より安全な選択肢を提供したいと思うなら、たとえ法律で義務化されていようといまいと、こうした対策をとるべきだと思います」

事実、ローリングストーン誌の取材に応じた大麻業企業のいくつかは、規制の及ばない市場ではこのような大規模の危機が起こる危険が常に潜んでいることを認識し、早い段階で消費者の保護に積極的な対策を講じていたと述べた。だとすれば、なぜ政府はもっと早く手を打たなかったのか?


腰が重い政府に代わって行動を起こす企業達

我々の取材に対し、カリフォルニア州大麻管理局の広報課長補佐を務めるアレックス・トラヴェルソ氏は、管理局が「約4か月前に」立ち上げて実施している啓蒙広報活動Weed Wiseを例に挙げた。この夏以前に行った密造の取り締まり対策はどんなものがあるか、と問い詰めたところ、トラヴェルソ氏はこう答えた。「当局では、2018年末から闇市場の取り締まりを行っています。違法小売業者に関する苦情に対処し、検挙に努めています」 だが、それ以上の具体的な例は提供してもらえなかった。

したがって、真の問題は闇市場ということになる。Kingpenはこのことを肌で感じている。同社のベイプ製品(同社いわく増量剤ゼロ)は人気があり、広く認知されているが、見た目は彼らのブランドとそっくりで、ロゴも同じで、THCオイルと思しき茶色い液体を詰めたベイプが、実は規制されていない海外のメーカーの製品だった、ということもある。しかもこうしたことは、規制が対応するよりもずっと速いスピードで起きているのだ。さらに「違法営業をしている販売店が特に問題です」とコラル氏は言う。「弊社では常時ウェブサイトで、購入の際は――当社製品であれ、他社製品であれ――許認可を受けた販売所で買うことを(消費者に)呼びかけています。ソーシャルメディアでも、コメント欄に寄せられたコメントには積極的に反応するように心がけています。たとえば、『フィラデルフィアでKingpenをゲットした! 最高!』と言うコメントには、『我々はカリフォルニアでしか販売しておりません』と返答しています」

それでもKingpenやその他メーカーの前にはかなり大きなハードルが待ち構えている。そのひとつが中国の超大手eコマースAlibabaに代表されるような、ブランド品を買い叩き、安値で売りつけて、常に規制の一歩先を行く外部サイトだ。「我々が自社製品や新製品を送り出すと、基本的に48時間以内に(Alibabaで)購入できるんです。それも手ごろな値段で、大量購入できてしまうんですよ? これがある意味、偽造問題を後押ししていると思います」と、コラン氏。彼はまた、販売所を列挙するサイトも考えものだと言う。リストに挙がっている場所が合法的に営業しているかという点に関して、おそらく信用調査が行われていないからだ。

州が消費者教育や違法業者の取り締まりに「もっと資金を投入し、もっと調査を行うべき」とコラル氏は言うものの、現在Kingpenは自社で偽造問題の改善に取り組んでいる。同社は9月に模造品防止プログラムの立ち上げを発表した。数百万ドルを投じたと言われるこのプログラムでは、3D認証ステッカーとQRコードをKingpenの全製品に取り付け、製品がKingpenの正規品であるかどうか、またカリフォルニア州の規定に基づいた同社の厳しい規格をクリアしているかどうかを消費者が確認できるようにするという。


テクノロジーを駆使して消費者を守るAirgraft社

今回の危機が起きる前から、ベイプ業界の問題を予測していた者もいる。その証拠がAirgraft社だ。同社のビジネスモデルの基本となるのは「口に入れるものには注意を払うべし」という考え方だ。2018年創業のAirgraft社は、テクノロジー会社兼大麻会社を自認している。同社の創業者兼CEOのムラデン・バーバリック氏いわく、彼は従業員らと長年大麻業界の諸問題の解決に乗り出し、ベイプの透明性の欠如に原因があると警戒してきたという。「どこから来たかもわからない茶色い液体を口に入れるなんて、どう考えてもおかしいでしょう」と彼は言う。現在Airgraft社では、専売のベイプ本体と専用ポッド(カートリッジに代わるもの)を販売している。付属するモバイルアプリは、1回の吸引でどのぐらい吸い込んだかを計測する機能がついているだけでなく、巷で出回っている汚染製品や偽造品から消費者を守るためのヒントをベイプ企業に提供してくれるかもしれない。

「ポッドを本体に装着すると、本体がそのポッドを認証します」と、バーバリック氏は説明した。「ポッドには暗号化された署名がついていて、当社のサーバー経由でないとアクティベートできません。またポッドは当社の充填機で補充され、ライセンスを持つ公認業者でのみの取り扱いとなります」 さらに、蒸留物や増量剤を一切使わない「100%植物オイル」だそうだ。ポッドを使うにはアプリでアクティベートする必要があり、ひとたびアクティベートされると、ユーザーには自分が消費している製造分の完全な検査結果が提供される。「より透明な、管理の行き届いたクリーンなベイプ。誰もが喜んで摂取でき、二度とあのようなことが起きないと信用できる製品を作るのが目的です」

万が一汚染された製造分がAirgraft社のプラットフォームを潜り抜けてきた場合でも、各ポッドにはキルスイッチがついているため、会社側がスイッチを起動すれば吸引できなくなるという。こうした安全機能は業界全体でも実用可能だとバーバリック氏は言う。「弊社の充填機はサーバーに繋がっていますし大量生産も可能です。ポッドにチップを埋め込んでおけばどのポッドも追跡できます」と同氏。「そんなに難しいことではありません」。テクノロジーを使えば今まで手に負えなかった問題も、解決することは可能です」 唯一考えられる欠点は、全国規模で大麻が合法化されるまで大麻の利用が監視されるということに、一部のユーザーが腹を立てることぐらいだ。

だが、Airgraft社が危機以前から存在していたという事実から、汚染の可能性はずいぶん前から存在していただけでなく、予測可能だったことが透けて見える。さて問題は、誰が業界のクリーン化の責任を負うべきか? TribeTokes社やAirgraft社のような先見の明を持ち合わせていなかった企業が、より安全な業界作りを担うべきか? あるいは、消費者が、公認販売所でしか購入しないようにして、自衛するべきか? 政府がもっと積極的に違法販売を取り締まるべなのは明らかだ――たとえ、急速に拡大する市場では決して容易いことではなく、金がかかるとしても。当面は、ベイプの安全性を確保する最善策は消費者啓蒙と最新テクノロジー、そして規制が一体となって取り組むことだろう。それか、今まで通り乾燥大麻を買えばいいだけだ。