幼児による電子タバコの誤飲が米国で急増中

中毒管理センターの報告によると、米国内で幼児によるポッド型電子タバコ(ベイプ)の誤飲が急増中だ。

全米で12人が死亡、800人以上の入院が確認されたベイプ中毒に対する捜査が進められている中、こうした危機の原因究明が急ピッチで行われている。と同時に、ベイプの使用に直接関係しているわけではないものの、それに付随した問題への懸念も持ち上がっている。その最新の例がカンザス州のABC系列放送局KMBC TVの報道だ。それによると、幼い子供が電子タバコのカートリッジや液体ニコチンのボトルを誤飲するという例が相次いで報告されているという。

カンザス大学病院中毒管理センターの職員によると、乳幼児が電子タバコ用リキッドやカートリッジを誤飲または触っていたという保護者からの電話が、この3週間で9件も寄せられたという。「保護者の電話は、『うちの子がベイプ製品を手に持っていた』とか、『子供がポッド型電子タバコを口に入れているのを目撃した』というものです。実際のところ、ベイプ絡みの肺疾患件数と並んで、そうした電話も増えています」と言うのは、カンザス大学病院中毒管理センターの臨床毒理学者エリザベス・シルバー博士。TV局の取材でこう語った。「実際に誤飲した子供もいました。小さなポッドの中にニコチンが高濃度で濃縮されていますから、毒性が非常に高いんです」(誤解のないように言っておくと、こうした現象はティーンエイジャーがYouTubeの閲覧数をあげるために意図的に液体ニコチンを飲むのとは異なる――こうしたことも実際には起きているようだが、メディアで騒がれているよりはずっと少ない)


誤飲の原因と危険性

成人の読者、特に子を持つ親にしてみれば、数々の全国放送局で取り上げられたこのニュースはパニックを引き起こすには十分すぎるほど十分だ。すでに全米の関心事となった製品に対して恐怖を抱いているだけに、余計にぞっとさせられる。国立毒物情報システムのデータによると、12歳未満の子供がポッド型ベイプを誤飲・誤食・吸引した、あるいは液体ニコチンを摂取した件数はたしかに増加傾向にある。国立毒物情報システムからローリングストーン誌が入手したデータによれば、このような事故の報告件数は2016年(12歳未満の報告件数は2014件以上)から2017年(同様の報告は1619件)にかけて激減してはいるものの、2019年に再び増加に転じ、すでに1913件の事故報告がシステムに登録されている。

この増加傾向は非常に気がかりだ、とブライアン・ジェンセン氏は言う。フィラデルフィア小児病院の小児科医で、ペンシルベニア大学医学大学院の助教授だ。こうした報告の中には、なんでも口に入れたがる乳幼児の習慣が原因の場合もあるが、模倣が原因の場合もある、と彼は言う。「年上の兄弟や親が口に入れているのを見れば、子供も彼らを真似て吸ってみようとすることがあります」

ニコチン中毒の症状は多岐にわたる。それほどひどくない中毒の場合、発汗、吐き気、嘔吐、震え、動悸、息切れなどの症状が現れるが、重度の中毒となると、脳卒中や呼吸不全に至る場合もある。普通の大人なら1~2適摂取した程度であれば何の問題もないが、子供の場合、たとえほんの少量の濃縮ニコチンでも、非常に危険となりうる。ジェンソン助教授が言うには、電子タバコは規制されていないため、ニコチン濃度は製品によってかなり幅があり、中には、実際の宣伝内容よりも多量のニコチンが含まれている製品もある。だが2018年Pediatrics誌に掲載された論文によれば、体重1kg当たりわずか6.5~13mgの濃縮ニコチンでも死に至るには十分だという。これが現実のものとなった例が少なくとも1件、2014年12月に生後15カ月の乳児がニコチン中毒で死亡したという記録が残っている。


報告数の減少から再び増加への理由

Pediatrics誌は2018年、国立毒物情報システムのデータとして、2012~2017年の間に液体ニコチンと接触した6歳未満の子供は推定8269人だったと報じた。このうち大多数の子供たち(92.5%)が、実際に液体を誤飲している。研究によれば、中毒管理センターに寄せられた報告件数はものすごい勢いで急増し、2012~2015年の間では1398%の増加――アメリカ全土で電子タバコの利用者数が増えたのとちょうど同じ時期だ。消費者喫煙推進協会(Consumer Advocates for Smoke-Free Alternatives Association: CASAA)のCEOアレックス・クラーク氏は、2013年はベイプが「さらに主流化した」年だったとローリングストーン誌に語った。

しかしその後は報告件数ががくんと減り始め、2015~2016年の減少率は20%。Pediatrics誌に掲載されていた論文の著者は、児童ニコチン中毒防止法(Child Nicotine Poisoning Prevention Act)の可決が原因ではないかとみている。バラク・オバマ大統領が署名したこの法律は、液体ニコチンの容器を子供が開けられないようなパッケージにすることを電子タバコ製造会社に義務付けた。しかしそれでは、中毒管理センターへの電話件数が2018年から2019年にかけて再び増加に転じた理由は説明がつかない。それぞれ2018年には1783件、2019年には1913件の電話が寄せられている。

小児科医であるジェンセン助教授は、ベイプ関連の肺疾患に対してマスコミの関心が高まったことが増加の原因のひとつだと考えている。「こうした製品は以前より出回っていますし、その危険性も耳にするようになりました。それで皆さん、心配になって電話をかけているんです」と彼は言う。クラーク氏の見解によれば、市場の傾向が再び小型カートリッジを好むようになったことも関しているようだ。小さくなればなるほど置き忘れの可能性も高くなり、「こうした製品をその辺に置きっぱなしにして、子供が手にするようになったのは十分考えられます」 だがおそらく、最大の原因は単純(なこと←「に」)、つい最近まで成人の間で電子タバコの利用が増加し続けていたという事実だろう。ある市場調査会社の推計によると、全世界の電子タバコ利用者数は2021年までに5500万人に達すると予想されている。


子供達を誤飲・中毒・依存から守るためには

とはいえ、乳児がポッド型ベイプを吸ったり6歳児がJUUL(ジュール)依存になる心配で夜も寝られなくなるというわけではない。国立毒物情報システムによると、子供がポッド型ベイプで中毒になる危険は、他の製品の危険よりもはるかに少ない。2016年のとある報告書によれば、5歳未満の子供による誤飲事故で、原因となった製品のうちもっとも多かったのは化粧品や美容製品だった(5歳未満の子供による事故の13.3%)。ついで家庭用洗剤(11.1%)、アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの鎮痛剤(9.21%)と続く。これと比べると、電子タバコリキッドの誤飲に関する報告件数はごくわずかだ。

さらにPediatrics誌の論文の著者は、こうした報告件数は自己申告――おそらくは、心配になった親が中毒管理センターに電話をかけたケース――に基づいている点を指摘する。電話があったからといって、必ずしも報告された子供たち全員が実際に電子タバコ用リキッドを飲み込んだとは限らない。論文の著者も指摘しているように、「基本的に事故の報告は詳細まで調査して記録しているわけではない」。したがってこうした報告の内容は、中毒管理センターでも「完全に確かめることはできない」のだ。言い換えれば、中毒管理センターに電話をかけてきた親の多くは、本当に子供が液体ニコチンを飲むのを見たとか、カートリッジを口に入れているのを見たわけではない可能性もある。子供がカートリッジやボトルを手にしているのを見て、最悪の事態を想定したのかもしれないし、念には念をと電話をかけたのかもしれない(ジェンソン助教授いわく、単にベイプカートリッジに触れただけなら、おそらく子供がニコチン中毒になることはないだろうとのこと)。

とはいえ、小さな子供が液体ニコチンを誤飲したという報告は真摯に受け止めるべきだろう。親がタバコを隠したり、小さな子供の手の届かないところに置いたりするように、電子タバコでも同じような措置をとるべきだ。だがベイプ関連の健康被害という文脈で見るならば、電子タバコを常用する若者やティーンエイジャーの数は、電子タバコの脅威にさらされた可能性のある幼児の数をはるかにしのぐことを肝に銘じておかねばならない。4万4000人以上の中高校生を対象にした最新の調査によると、高校3年生の37.5%がフレイバーつきの電子タバコを使用したことがあると答えた。同様に、中学2年生の場合は17.6%だった。中にはわざわざ危険な方法でニコチンを摂取している子供もいる可能性がある。ジェンセン助教授が言うには、電子タバコの禁断症状に襲われたティーンエイジャーが使用済みポッドからニコチンを吸い出そうとしたという話をこの6か月間で何度か耳にしたという。

ベイプが健康に及ぼす影響や、最近の肺疾患問題を引き起こしたと考えられる要因についての研究がますます増える中、多くの政治家たちが電子タバコ業界そのものを廃絶しようと対策を講じている。ニューヨーク州とミシガン州ではフレイバーつき電子タバコの禁止に踏み切ったし、ドナルド・トランプ大統領もフレイバーつき電子タバコの全米禁止措置に前向きだと発言した。こうした努力は医療関係者からは広く称賛される一方、厳格な措置をとれば従来の可燃性タバコへの揺り戻しを招くのでは、と見る人もいる(多くの活動家が主張するように、2つの悪のうち本当に電子タバコのほうがましだと言えるのか、という議論もあるが)。いずれにせよ、若年層やティーンエイジャーが危うい状況にいるという事実は変わらない――それこそが、今我々が直面している真の危機だ。