底に秘めた力│ベントレーの歴史でもっとも重要な意味を持つモデルとは?

VW時代になった新しいベントレーで最も人気を博した車のひとつであるコンチネンタルGT。この車種がいかにベントレーを変えたのか。その底力や秘めた魅力について振り返る。003年にデビューしたコンチネンタルGTこそは、100年に及ぶベントレーの歴史でもっとも重要な意味を持つモデルといえる。
 
それまで1000台にも満たなかったベントレーの生産台数は、コンチネンタルGTの生産が軌道に乗った2004年には7686台をマーク。このうち実に6896台がコンチネンタルGTで占められた。2006年にコンバーティブルが追加されてからもコンチネンタルGTはベントレーの主力モデルであり続け、初代の生産が終了した2010年までに3万台以上を販売。商業的にも新時代のベントレーを特徴付けるという意味でも、ベントレー史上もっとも成功したモデルとなったのである。なぜ、コンチネンタルGTはこれほどの大成功を収めることができたのか?
 
1998年にフォルクスワーゲン・グループに買収されたベントレーは、新時代に対応したモデルとしてコンチネンタルGTを企画。グランドツアラーというベントレーにもっとも重要なジャンルのモデルを、フォルクスワーゲン・フェートンのテクノロジーを用いて開発する方針が固まる。
 
フォルクスワーゲンのフラッグシップモデルとして2002年にデビューしたフラッグシップサルーンのフェートンは、そのトップグレードに6リッターW12エンジンを搭載。アウディ・クワトロに通じるフルタイム4WDや快適な乗り心地をもたらすエアサスペンションなどを装備しており、グランドツアラーとしても優れた資質を備えていた。


 
このフェートンをベースに、ベントレーは華やかな2ドア・ボディを新たにデザイン。インテリアはベントレーの伝統に則り、最高級のレザーとウッドで埋め尽くすとともに、イギリス製高級車の伝統であるビスポーク、つまり車の様々な仕様を顧客がひとつひとつ選択できるフルオーダー・システムを採り入れたのである。


 
結果としてできあがったコンチネンタルGTは、いわゆるプレミアムブランドが造ったラグジュアリークーペとは一線を画すモデルに仕上がった。インテリアに用いられるウッドやレザーの質がそもそも圧倒的に高いうえに、それらが華麗なデザインで仕上げられており、しかも大量生産されるプレミアム・モデルでは考えられないような、鮮やかなカラーのインテリアが誕生。美しく浮かび上がったウッドの模様もベントレー・オーナーたちの目を大いに楽しませた。


 
走りの質もそれまでのプレミアム・モデルとはまったくの別物だった。快適にチューニングされたエアサスペンションは魔法のじゅうたんのような乗り心地をもたらすいっぽう、ドライビングモード次第ではハードコーナリング時のロールがしっかりと抑えられ、ワインディングロードを意のままに駆け抜けることができた。しかも、W12エンジンのパワーとトルクは圧倒的で、0-100㎞/h加速を5秒以下でクリアするとともに、最高速度は320㎞/hに迫った。つまり、スーパースポーツカーに匹敵するパフォーマンスを備えながら、インテリアは5つ星ホテルを彷彿とする豪華さで、うっとりするような乗り心地とパッセンジャーのかすかな吐息さえ聞こえてきそうな静粛性を実現していたのだ。そうした魅力は、おそらくいま乗ってもまったく色あせていないことだろう。
 
そもそも前述したパフォーマンスは現代のどんな水準をあてはめても第一級と評価できるもの。快適性やハンドリングにしても、スーパースポーツカーではなくあくまでもラグジュアリーなグランドツアラーとして捉えれば文句の付けどころがないはず。ビスポーク・プログラムで選び抜かれたウッドとレザーは、その華やかな色合いとともに見る者の目を奪わずにはいられないだろう。


 
コンチネンタルGTでもうひとつ重要なのは、イギリスらしいラグジュアリーの世界とドイツの優れた自動車技術の融合にある。ドイツのプレミアムカーが高性能で信頼性が高いことは誰もが認めるところ。ただし、ドイツ人の質実剛健さを反映したそのデザインは、プレミアムブランドといえども華やかさに欠けた。ここに、高級車作りに長い伝統を誇るイギリスのクラフツマンシップが足しあわされたのだから、もはや完全無欠といっても過言ではない。アウトバーンで磨かれたメカニズムが、ベントレー伝統のグランドツアラーというコンセプトに見事にマッチしたこともファンにとっては幸運だった。
 
ベントレーはこの成功を糧とし、その後も同様の手法で4ドア・サルーンのフライングスパー、SUVのベンテイガなどを続々と投入。コンチネンタルGTは昨年3代目に生まれ変わり、フライングスパーも先ごろ3代目が発表されたばかりだが、いずれも目映いばかりの輝きを放っていることは皆さんもご存知のとおり。イギリスとドイツの幸福なマリアージュは、ラグジュアリー・ブランドの代表として今後も君臨し続けるだろう。