日々の食卓に並ぶさまざまな食品。魅力的な商品づくりや製造の現場を支えているのが、研究者や技術者たちです。今回の「シゴトを知ろう」は、神奈川県小田原市のかまぼこメーカー「鈴廣蒲鉾本店」研究開発課の長岡敦子さんにお話を伺いました。

■「おいしい!」のために、試行錯誤を繰り返す

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
 
一つは、新しい商品の開発です。コンセプトや価格・ターゲットなどは、商品開発課という別の部署で決まることが多いのですが、それを商品としてカタチにしていくのが私たちの役割。まず少量の試作を研究室で重ねます。そして実際に製造ラインでテストを行い、不具合がないことを確かめてレシピを作成。決裁を経て、新商品の製造が始まります。

もう一つは、既存商品の改善です。製造現場から上がってきた課題を検証し、より良い品質の商品を安定的に製造できるように改善していく仕事です。

<一日のスケジュール>
08:00 朝礼 メールチェック スケジュール共有
    試作やラインテスト
12:00 休憩
13:00 試作品の官能検査やレシピ作成
    改善が必要な既存品のテストなど
17:00 終業
 

Q2. 仕事の楽しさ・やりがいは何ですか?
 
食が好きなので、単純にいろいろなものを食べられることです(笑)。商品づくりの過程では、知識と経験をもとに仮説を立て、テストを行い、検証していきます。結果、思った通りの食感や味わいが実現できたときは嬉しいですね。

また、食品の仕事のゴールは、おいしいものをつくることです。同僚・他部署のメンバー、そしてお客様と、「おいしい!」という価値観を共有できることも、この仕事ならではの楽しさです。 

Q3. 仕事で大変なこと・つらいと感じることはありますか?
 
当社は、保存料や化学調味料を使わない「天然素材100%」のかまぼこを製造していますから、それに適う素材(原料)を見つけるのが難しいですね。でもブランドを守って、安全・安心を提供するためには必要不可欠な作業です。

もう一つは、新商品の「ネタ」を提案することです。他社を真似した商品はもちろん、他社が簡単に真似できるような商品もNG。また、製造ラインできちんと生産できるものでなくてはいけないので、なかなかハードルが高いんです(笑)。

■学生時代の学びが、研究職への道を開いた

Q4. どのようなきっかけ・経緯でその仕事に就きましたか?
 
食品の機能性について興味があったのが理由の一つです。自分が研究・開発に携わったものを、家族に食べさせられたらいいな、という思いもありました。就職活動の際、天然素材だけを使った安全・安心な商品づくりをしている当社の考え方に共鳴し、入社しました。希望通り研究開発課に配属され、11年目になります。
 
 
Q5. 大学では何を学びましたか?
 
大学・大学院で「分子生物学」を専攻していました。簡単に言うと、遺伝子がどんな役割を果たしているかを調べる学問。特に植物の葉緑体の起源と考えられているプランクトン「ラン藻」について研究していました。実験を重ね、その結果から考察する作業は、今の仕事と共通しています。
 

Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
 
高校のときは行動生態学に興味を持っていました。オーストリアの学者・コンラート・ローレンツの「ソロモンの指環 動物行動学入門」という本を読んだのがきっかけです。大学受験では、行動生態学を学べる大学を選択。入学後は違う授業が面白くなって、分子生物学の道に進みましたが、今につながっている部分もありますね。

■学びたいと思ったときが「学びどき」

Q7. どういう人がその仕事に向いていると思いますか?
 
論理的に考えて、問題解決ができる人だと思います。開発の現場では、理想としている「つくりたいもの」と現実とのギャップに悩まされます。うまくいかない原因を考えて、仮説を立て、テストを行って検証する。これが苦にならない人が向いています。あとはやっぱり、食べることが好きな人ですね。

 
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
 
なりたいものや学びたい学問が見つかっているなら、その職業に就いている人に話を聞きに行ったり、大学が主催する講座に参加するなど、実際に行動してみてほしいですね。ネットで調べられることも多いですが、身を持って体感することで、「おもしろい。やってみたい」「やっぱり違う」と判断できます。

高校時代に思ったとおりの道を進めるとは限りませんし、私もまっすぐな道ではありませんでしたが、「学びたいと思ったときが学びどき」。やりなおしはききますから、感性が豊かで体力のある高校生のうちに、たくさんのことを吸収してほしいです。
 

商品をカタチにするため、仮説を立て、テストを行い、検証することを繰り返している長岡さん。学生時代に行っていた実験や、食や生物への知的好奇心が彼女を支えているようです。長岡さんのように、興味があることへ積極的にアプローチしていく姿勢を持つことで、自分の進むべき道がクリアになっていくのではないでしょうか。
 
 
【profile】株式会社鈴廣蒲鉾本店 研究開発課 長岡敦子