動画投稿サイトなどに放送番組が違法にアップロードされるケースが後を絶たない。SNS上でシェアし、拡散するカジュアルユーザーの増加も悩ましい問題として取り沙汰されている。そこで、全国の民間放送事業者が加盟する業界団体の日本民間放送連盟(以下、民放連)は警鐘を鳴らし、「違法配信撲滅キャンペーン」をはじめとする違法動画対策を行っている。現状をどのように捉え、取り組みを強化しているのか。民放連の知財委員会知財専門部会不正流通対策部会主査を務める品田聡氏(日本テレビ)と、民放連で放送番組の不正流通対策に取り組む前田優子氏、同キャンペーンのクリエイティブディレクターである博報堂中野仁嘉氏と川辺圭氏の4人に話を聞いた。

■違法動画は技術の進歩に従って変化している

――違法動画とは何か? そもそもの定義と共に、これまでどのような違法動画問題が起こっていたのでしょうか。改めて教えてください。

品田氏:90年代まで遡ると、当時は家庭に録画機器が広く普及していなかったこともあり、業者が録画代行を掲げ、テレビ番組を録画して提供するという問題がありました。その後、家庭にも録画機が広く普及すると、業者がより質の高い録画番組を店舗で販売する違反行為が見受けられました。そして、インターネットの時代に入ると、販売ツールが店舗からECサイトに移行していったという経緯があります。また個人でも簡単にアップロードできるようになり、新たな問題も発生しています。技術は日進月歩で進み、違法動画の定義はこの技術の進歩に従って変化しているのだと思います。

前田氏:まさに手段が時代に合わせた技術を使って変化し、放送事業者各々それに対抗するために対策をとられていますが、ここにきて違法動画対策に苦心しています。個人も手軽に手を出すことができてハードルが低くなり、規模も大きくなり、対策しても追い付かない状態です。

――いたちごっこの状態の続いている……わけですが、放送事業者としては動画が不正にアップロードされることで著作権が侵害されます。これによって様々な問題も生じます。

品田氏:著作権には複製権や公衆送信権などがあり、それらが侵害されるケースが主なところだと認識しています。番組コンテンツは、いわば権利の束で成り立っているものです。放送局が持つ権利だけでなく、脚本家や音楽などいろいろな権利が含まれた、権利の束がひとつになって番組コンテンツがあるのです。ですから、著作権の侵害はこれらひとつひとつの権利を侵害しているものになると言えます。

前田氏:法律的に違反であることに加えて、放送された番組が勝手にネット上で、無料で見られてしまうことによって、リアルタイムの放送をご覧になる方の人数が減り、視聴率にも反映されてしまいます。これは広告ビジネスを生業とする放送事業者にとって大きな問題です。放送事業者側からみた理屈にも聞こえてしまうかもしれませんが、現実的に起こり得ることなのです。放送事業者もこの問題を真摯に受けとめ、TVerなどの広告型や有料モデルの番組配信を展開し、収益を上げ、放送局をはじめ、原作者や脚本家などあらゆる放送番組に携わる方にも適正な収益が入ってくる仕組みを作り始めています。違法動画の場合は収益ゼロですから、究極的には良い放送番組を創る環境が悪化してしまうという問題にも発展する恐れもあります。正規で番組を提供することで、こうした事態を回避させることができます。

--違法動画は手軽さに伴って、やはり増加傾向にあるのでしょうか。また番組ジャンル別の特徴はありますか?

品田氏:全体の量は把握しきれていませんが、いわゆる違法サイトは増えていると認識しています。流通量も業界団体の分析をみる限り、増加傾向にあり、それを肌で感じる場面も多いです。ジャンルについては、ドラマが最も多いのかと。バラエティは面白い部分を切り取ったケースが多いです。

前田氏:これだけ長年にわたって放送事業者が削除要請を絶え間なく行っていても検索サイトで簡単に違法動画に辿り着き、違法動画を視聴できてしまう状況は変わっていません。状況が好転しているとは思えません。

――国外にも海賊版がネット上で流通しているケースも見受けられます。

品田氏:日本の番組が海外でどれだけ需要があるかどうかに左右されますが、見る人がいれば供給があるという論理です。

前田氏:日本の番組の海外展開を促進させる活動として民放連も参画している「国際ドラマフェスティバルin Tokyo」という組織があり、そこのイベントを通じて、海外で海賊版が流通されていることが間接的にわかることがあります。正規にライセンス契約が組まれていない国で番組を上映しても会場が盛り上がることがあるからです。番組のシーンをご覧になって「ワーっ」と歓声が上がると、残念ながら違法動画が広まっているのではないかと考えます。

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■違法アップロードに「いいね」、アフィリエイト収入も

――では違法動画に対して、具体的にどのような対策を行っているのでしょうか。各局それぞれの対応と放送業界全体の取り組みについて教えてください。

品田氏:放送事業者各局の取組みは基本的には同じですが、温度感の差はあり、力の入れ具合が若干異なります。日本テレビでは専門部署は設けていませんが、私が所属する編成局著作権契約部を中心に現場からの助けを借りたり、時には現場が主体となりながら、そして民放連をはじめ業界の団体等と常にお付き合いしながら、対策を練って、取り組んでいるところです。また特定の業者に業務を委託し、削除要請を行っています。

前田氏:これまでも各社の取組みを共有することは日常的に行っていましたが、具体的な削除要請や個別の対策は各放送局にお任せしています。民放連は権利者ではないため、取り組みに限界もありますが、違法動画の問題は無視できない状況にもなり、放送番組の違法配信撲滅キャンペーンの取り組みを6年前から始めました。民放連として力を入れて取り組んでいます。

――インターネットの普及によって、ユーザーのインターネットリテラシーそのものは上がっているように感じられる一方で、カジュアルユーザーが増えています。何故こうした現状が違法動画問題を引き起こす原因として考えられているのでしょうか?

品田氏:リテラシーの向上を期待していますが、上がっているとは言い切れません。違法アップロードを確信的に行っている場合やカジュアルに知らずに行っている人も多いからです。特に未成年はその可能性があります。原因として考えられるのは、違法アップロードに対して「いいね」がつき、アフィリエイトのような収入に繋がることもあります。あってはならない悪質な方向に移行していくことを防ぎ、すそ野を広げないように注視していく必要があります。

前田氏:違法配信撲滅キャンペーンを開始してから、年度ごとにインターネット上でアンケート調査も行っています。直近の調査結果で回答者の8割が違法行為を認識していることがわかりました。相対的にはリテラシーは上がっており、良い傾向ではあるのですが、何故、撲滅されないのかという疑問も残ります。民放連の主催する大学の寄付講座の際、大学生に違法動画の話をしたところ「YouTubeでまるごとアップロードすることはダメだとわかっているけれど、好きな番組の一部をTwitter上にアップしたり、番組の静止画を拡散したりすることはダメなのか?」と、逆に質問を受けました。つまり、細かい部分は判断しかねるということ。まだまだ啓発できていない部分があると思いました。

中野氏:違法動画がなくならない理由は、違法行為であることを知ってはいるものの、覚悟を決めて上げる人は義賊的な役割を担っているからだと思います。見逃したドラマを上げると、「ありがとう」「神回です」と感謝され、高揚感を味わい、わかっていても上げてしまう。また、放送されているテレビ画面をスマホで5分だけ撮影して、上げるといったライトなユーザーも多い。

川辺氏:若手芸人さんなどは、違法動画がシェアされることによって知ってもらえるチャンスにも繋がっていきます。心理的には理解できる部分は正直なところあります。自分が制作したポスターをスマホで写メして、シェアしたいと思う時があるからです。でも、タレントさんの肖像権の問題が発生しますから、できません。違法動画についてもテレビ局としてはやってほしくない行為なのです。

放送番組が不正にアップロードされることで、様々な問題が生じることを改めて理解することができたのではないか。時代と共に手法は変化し、違法動画が絶えない理由も探ることで具体的な対策を講じることができる。そこで、今年度から始められたのが新啓発スポット『違法だよ!あげるくん』だ。後編はこの民放連の違法配信撲滅キャンペーンの新たな展開についてお伝えする。