学生の頃の入院をきっかけに、医療従事者になりたいという夢を抱き臨床検査技師となった松井さん。医療情報技師の顔も持ち、現在は独立法人国立病院機構で、全国60カ所以上の病院の電子カルテデータを集約し、ビッグデータ化するプロジェクトにも参画されています。臨床検査技師ならではの「あるある」や日常生活を中心に、番外編としてご紹介します。

■医療情報技師の資格を取得。臨床検査技師の仕事の幅が広がった

―― この仕事に就いてから、何か勉強していることはありますか?
 
臨床検査技師の他に、医療情報技師の資格も取得しました。これは「医療」「情報処理」「医療情報学」の3つの学問領域を網羅する資格で、私のような医療従事者の他に、電子カルテや検査機器を作るメーカーのSEさんなども取得しています。医療情報技師の資格は、医療従事者とSEの方をつなぐ通訳のような役目を果たし、お互いに共通言語で話ができますので、取得しておくことで臨床検査技師の仕事の幅も広がります。

医療分野では学会も頻繁に開催され、研究論文を発表するチャンスもたくさんあります。向学心の強い方にはうってつけの環境ですが、通常の勤務時間は大量の検査に追われて論文を書いている時間はほとんどありません。日々気づいた発見や疑問をコツコツメモして、勤務時間外にまとめることが多いですね。


――この仕事ならではの「あるある」はありますか?

よくレントゲン技師(診療放射線技師)と間違えられます(笑)。患者さんと接するのは圧倒的に放射線技師の方が多いので、仕方がないですね。お互いに縁の下の力持ちという点は共通しています。

また、医療従事者全般の「あるある」だと思いますが、採血しやすい血管のタイプを一目で見分けられるようになります。電車やバスでは、つり革をつかむ人の腕をつい観察して、血管の走り方や形状、弾力など想像しています(笑)。

■医療法改正で、ますますコミュニケーション能力が必須に

―― 臨床検査技師として働くにあたって、気を付けていることはありますか?

さまざまな細菌やウイルスへの感染を防ぐため、健康管理と感染防御は必須です。手の洗い方やマスクの付け方は医療従事者の基本中の基本、かなり時間をかけて丁寧に洗います。あごマスクと言われるマスクの付け方もNGです。常に自分への感染するリスクを減らし、体が弱っている患者さんへうつさないように気を付けています。


―― 一般の方に言うと驚かれる業界の常識はありますか?

がんなどの検査のため、手術で切除した人間の臓器などを毎日のように目の当たりにします。ご遺体にも触れる機会があります。血や排泄物を扱うのも日常茶飯事です。臨床検査技師はパソコンや機械の前で検査をするだけの仕事ではないというところが、驚かれるところかもしれませんね。


―― 臨床検査技師に向いているのは、どんな性格の人ですか?

社交性があって、どんな業種の方とも分け隔てなく交流できる人です。どんなに病気の知識があって正確にデータを分析できても、それを言葉にして医師や看護師に伝えられなければ、せっかくの情報が無駄になってしまうかもしれません。知識があるということはもちろん大事ですが、アウトプットできない人は、その能力を100%生かしきることができず、もったいないですね。

臨床検査技師は病気の診断を下すわけではないですが、検査データの内容から、ある程度は何の病気か察しが付くものです。ドクターと良好な関係を結べていれば、後で正しい病名を教えてもらい、“答え合わせ”ができますし、珍しい病気が見つかったときはドクターの方から教えていただくこともあります。とくに新人の頃は、医師や看護師にかわいがってもらえる愛嬌があるといいですね。

また、2018年12月の医療法改正により、病院内で行われる全ての検査を臨床検査技師が管理することが義務付けられました。臨床検査技師による一括管理によって、検査の精度と安全性を高めることが法改正の目的とされています。これまで、臨床検査技師の管理下にあるのは検査室で行った検査のみでした。病棟で行われたものはドクター、外来で行われたものは看護師といったようにそれぞれが管理し、病院全体で管理するということは行われていませんでした。今後は、臨床検査技師に求められるスキルがますます多くなり、コミュニケーション能力はもちろんのこと、書類管理方法や課題推進力なども求められるようになるでしょう。情報の整理や管理などをするのが好きな人は向いているでしょうね。これから臨床検査技師を目指す方と、幅広い分野で一緒にがんばりたいですね。

■住居や服装に制限はないが、情報収集は常に怠りなく行う

―― 住む場所や服装、休日の過ごし方に制約はありますか?

病院によっては、急な呼び出しである「オンコール」の当番のときは、自宅にいても病院にかけつけなければならないということがあり、自宅に帰らずに病院で仮眠をとり待機するという検査技師さんもいます。通勤時の服装は、病院で白衣に着替えるため、自由です。休日の過ごし方も普通の人と変わらないですよ。ただし検査の最新情報は日々更新されますので、勤務時間以外でも常に情報収集は怠らないようにしています。


―― 医療従事者として特に意識していることはありますか?

基本中の基本ですが、爪や髪の毛などは清潔に整えるようにしています。病院を訪れている患者さんやご家族に与える印象も違いますし、何より感染症の予防に効果的です。

 

これからの臨床検査技師には、高いコミュニケーション能力が必須だと語る松井さん。ぜひ学生のうちにいろいろな立場の方と客観的・論理的に話すトレーニングを積んで、コミュニケーションスキルを磨いておきたいものです。医療従事者として、体調管理や身だしなみにも気を使っている先輩の姿をぜひ参考にしてください。
 
 
【profile】独立行政法人国立病院機構 本部 情報システム統括部 データベース企画課 主査 システム専門調整職、臨床検査技師、医療情報技師 松井一樹