神戸大学発のベンチャー企業Integral Geometry Scienceは9月17日、乳がん検診の精度向上を可能にするマイクロ波マンモグラフィの実用化と普及を進めることを目的に、協力企業ら9者と総額約20億円の資本提携を行ったことを明らかにした。

乳がん検診は、世界で標準的にX線を用いたマンモグラフィが活用されてきたが、近年、高濃度乳房を撮像した場合、乳房全体が白濁したコントラストとなるため、乳がん組織と正常組織を判別することが難しく、代替として超音波の活用も進められているが、乳房の大半を占める脂肪が超音波を減衰させるため、低S/N、低コントラスト比が原理的な課題とされている。

Integral Geometry Scienceが着目するマイクロ波は、血管と細胞が密集し水分が多いがん組織との間で大きな反射が観測されるため、有用と考えられるが、散乱したマイクロ波の観測信号から、散乱体である乳がん組織を映像化することは難しいとされてきた。神戸大 数理データサイエンスセンターの木村建次郎 教授らは、多次元空間における散乱場の基礎方程式の導出と、これを解析的に解くことに成功。同社を立ち上げ、同成果を応用したマイクロ波を使ったマンモグラフィのプロトタイプ機を開発することに成功したという。

  • マイクロ波マンモグラフィ

    マイクロ波マンモグラフィプロトタイプ機の外観と測定風景

すでにプロトタイプを用いて、神鋼記念病院、兵庫県立がんセンター、神戸大学附属病院、岡本クリニックなどの協力病院にて臨床研究を実施。結果として、高濃度乳房を含むすべてのタイプの乳房で高い乳がん検出感度を有することが示されたという。

なお、マイクロ波マンモグラフィは2019年4月に厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されており、承認審査期間を通常の12か月から6か月へ半減される予定となっており、同社では3年後の販売開始に向けて医療機器の承認申請を進めていく計画としている。