2019年7月17日、テレビ朝日が運営するYouTubeチャンネル『ANNnewsCH』内で、CGキャラクターが人間の出演者のように振る舞う「VTuber」形式でニュースを伝えるコンテンツ『MNNマスクにゃんニュース』(以下『マスクにゃんニュース』)がスタートした。

『MNNマスクにゃんニュース』

『MNNマスクにゃんニュース』では、顔を青いマスクで覆った猫のキャラクター「マスクにゃん」がMCを務め、テレビ朝日の地上波などで放送されたニュース動画をユニークなコメントとともに紹介する。

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同コンテンツはGoogle社によるデジタルニュースの信頼性向上プロジェクト「Google News Intiavie(GNI)」の一環として実施されているもの。テレビ朝日は2019年2月、東日本大震災の被災地における復興への歩みを現地の定点映像とGoogle Mapのマッピングで伝えるプロジェクト『●REC from 311~復興の現在地』を同プログラム内で展開したが、今回はそれに続く第二弾の取り組みとなる。

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同じ報道というカテゴリではあるものの、実写からCGアニメへと主軸を大きく変えた今回のプロジェクト。その経緯や実際の制作体制について、株式会社テレビ朝日 総合ビジネス局IP推進部の胡桃沢啓司氏と同社 報道局クロスメディアセンターの柴田広夢氏に話を聞いた。

【写真】胡桃沢氏、柴田氏

■『子どもに見せたいニュース』に触れやすい仕組みづくり

── 『マスクにゃんニュース』企画の経緯を教えて下さい

柴田氏:当社のYouTubeチャンネル「ANNnewsCH」の視聴者層は20〜30代の男性が多く、女性や若年層へうまくリーチできていませんでした。もう少し広い層に向け、これまで見ていなかった人にもYouTubeを通じてニュースに親しんでもらえたら、という思いから、かわいらしいキャラクターを使ったニュースコンテンツとして企画しました。

── 今回の企画には、柴田さんの母親としての視点も活かされていると伺いましたが……

柴田氏:かつて私は記者をしており、出産にともなう育児休暇から復帰して現在の部署に異動しました。これまでは取材する側でしたが、今度はニュースを知ってもらうための工夫をする立場になったのです。いまでも仕事柄、家ではテレビのニュースをつけっぱなしにしていますが、新しい技術や動物を扱ったものなど子どもに見せたいニュースがある一方で、あまり積極的に子どもには見せたくないと思うニュースも同時に目に入ってしまうことに気がつきました。親目線で、「今日はこのニュースを(子どもに)見せたい」と思うものをピンポイントで選べる仕組みがほしい、と感じたことも今回の企画の経緯となりました。

■少人数のスタッフで制作。「手軽に作って、手軽に見る」ニュースを

──『マスクにゃんニュース』の制作体制について教えて下さい

柴田氏:毎日約2名でシフトを組み、台本制作、映像編集、モーション(キャラクターの動き付け)を分担しています。番組内で使用する映像素材は、「ANNnewsCH」上にアップロードされたものをピックアップし、そのまま使用しています。

──少人数での制作体制が印象的ですが、活用しているシステムなどはありますか?

柴田氏:「マスクにゃん」の動きはAdobe社の2Dパペット制御用アプリケーション「Charactor Animator」を使用しています。プログラミングした動きのほかにウェブカメラの動きをトラッキングしてキャラクターの動きに反映できる機能を活用し、「マスクにゃん」の自然な動きを実現しています。

キャラクターの声は、NTTテクノクロス社による音声合成技術を使用し、台本から自動で生成しています。制作に関するすべての工程をデスクトップ上で完結できるため、専用のスタジオを必要とせず、通常のスタッフルームでの制作が可能となっています。

──大規模な設備と人員体制が特徴のテレビ局で、このような体制をとる意図とは?

胡桃沢氏:いまは“ネット全盛”の時代。個人でも簡単に動画を制作してアップロードでき、それを誰もが見られる時代になりました。これまでテレビ局は多くの機材を使い、時間をかけてコンテンツを作ってきましたが、こうした流れを踏まえ「手軽に(コンテンツを)作って手軽に見てもらう」という、新しいライフスタイルに合った新しいニュースの作り方のアプローチという側面も持っています。

──既存のYouTubeチャンネル上で展開するうえで、工夫している点は?

柴田氏:「マスクにゃんニュース」を展開している「ANNNewsCH」ではストレートニュースのほか、地上波で放送しているニュース番組からの素材も多数アップロードされるため、これらの時間の合間を縫う形でコンテンツをアップロードしています。コンテンツをアップロードしている月曜日から土曜日のうち、 月曜日から金曜日にかけては、夕方のニュース番組が素材をアップロードしはじめる前の午後4時~5時ごろに2〜3分の短編動画を、土曜日は“一週間のまとめ”としてあさ8時ごろに十数分程度の長尺動画をアップロードしています。ゆくゆく人気が出てきたあかつきには「マスクにゃんニュース」単独でのチャンネル展開も視野に入れています。認知を上げたい層へいかに届けるかが今後の課題です。

■IP(知的財産)も視野に入れたコンテンツ展開

──青いマスク姿の猫、という『マスクにゃん』の姿はとても印象的です

マスクニャン

柴田氏:「マスクにゃん」のキャラクターはアニメーションスタジオ「BRÜCKE(ブリュッケ)」が手掛けたものです。いくつか案を検討したなかで「マスクを被っているけれど、その下はどうなっているんだろう」と想像をかきたてられるような、ミステリアスな雰囲気を持つ現在のキャラクター案を採用しました。

──認知に向けて、番組以外に取り組まれていることがあれば教えてください

胡桃沢氏:2019年7月13日から8月25日にかけて六本木ヒルズで開催した「テレビ朝日・六本木ヒルズ 夏祭り SUMMER STATION」の会場で、「マスクにゃん」のキャラクターをあしらった「QRコード付きサンバイザー」を配布し、認知度アップを狙いました。

QRコード付きサンバイザー

受け取っていただいた来場者は、最初は「これは何だろう?」という表情でしたが、「YouTube上で見られるコンテンツ」であることを伝えると、俄然興味を示してくれました。

サンバイザーを受け取った来場者の様子

──『マスクにゃんニュース』今後はどのような取り組みを考えていますか?

柴田氏:現状はすでに公開されたニュース動画を取り上げるスタイルですが、将来的には『マスクにゃん』がニュースを詳しく解説したり、オリジナルの素材を使ったニュースの制作もしていきたいと考えています。

胡桃沢氏:これまでの番組制作で蓄積したノウハウを駆使しながら、IP(知的財産)としての展開にも力を入れていきたいと思います。(テレビ朝日の)アニメといえば『ドラえもん』、ドラマといえば『おっさんずラブ』といった認知にならんで、ニュースといえば『マスクにゃんニュース』と呼ばれる存在になりたい。キャラクターとして人気になるよう、取り組みを進めていきたいと思います。

これからメディア体験を担う若年層は、幼少期よりパソコン・スマートフォンに親しんできた、いわゆる「デジタル・ネイティブ」と呼ばれる層。1か月あたりの平均メディア接触時間が400時間(博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の発表より)に達したという今、最新のライフスタイルに寄り添ったコンテンツ作りの嚆矢として、『MNNマスクにゃんニュース』の動向が大いに注目される。