ラストアイドル、史上最高難度ダンスを語る(前編)「泣きながらマネージャーに中止を求めたことも」

テレビ朝日系「ラスアイ、よろしく!」で、約3ヶ月にわたって史上最高難度ダンスに挑戦してきたラストアイドル。完成した新曲「青春トレイン」のダンスは、神宮外苑花火大会(8月10日)やサマーソニック(8月18日)テレビ朝日の「ミュージックステーション」(8月30日)などで披露される度に、「カッコいい」「感動した」とアイドルファン以外からも大きな反響を呼んだ。
振付と指導を手掛けているのは、「バブリーダンス」が国内外で話題となった登美丘高校ダンス部総監督のakane先生。これまでのアイドル文脈とは違ったダンスは、大きな反響を呼んだ反面、あまりの激しさにメンバーたちが倒れてしまうなど、取り組むアイドルたちに大きな負担を強いていたのもまた事実だ。

3ヶ月の猛特訓の間、彼女たちは何を考えていたのか。そして、完成したダンスを披露した後、見えてきた景色とは。ラストアイドルメンバーに史上最高難度ダンス挑戦の日々を語ってもらったインタビューを前後編でお送りする。(後編は本日9日(月)正午12時公開)

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──今回はダンスのことを中心にお話を伺えたらと考えています。というのも、ここ3ヶ月、ラストアイドルファミリーはテレビ番組「ラスアイ、よろしく!」で「史上最高難度ダンス」に挑戦しています。これまでのアイドル文脈とはまた違ったダンスで、久しぶりに番組を観た人の中には「これがあのラストアイドル!?」って衝撃を受けている人も多いと思うんです。

池松 たしかにそうかもしれないですね。自分たちでも「気づいたら、すごいところまで来ちゃったな」という感覚がありますし。

──ところで今やっているakane先生によるダンスですが、あれは正式名称があるんですか? たとえば「ブレイクダンス」や「団体行動」みたいなジャンル名が。番組内では「史上最高難度ダンス」と紹介されていましたけど。

長月 ダンスの企画ではあるけど……ダンスの名前となると、わからないですね。「歩く芸術」とか「フォーメーションダンス」みたいなキャッチーな呼び方はまだないかもです。

奥村 私が聞いたのは、「トレインダンス」という呼び方。akane先生が名付け親らしいですよ。

阿部 そんな呼び方があったのか~。今、初めて知った(笑)。

奥村 とはいっても、トレインダンスをやっているのは現時点だとラストアイドル以外いないんです。akane先生的には、これから流行らせていこいうとしているみたいですけど。

長月 流行らせるもなにも、メンバーが「トレインダンスって何?」っていう状態だからな~。まずは、この記事でその呼び方を浸透させてください(笑)。

──かしこまりました(笑)。で、そのトレインダンスなんですが、具体的に何が大変だったんですか? テレビを観ているだけだと、リアルに伝わらない部分もありまして。

長月 ラストアイドルに入ってから2年間、私はダンスができないことを隠してきたんです。

町田 えっ、そうなんですか!? 意外です……。

長月 これは本当なの! ダンスの実力は全然ないのに、本番までに陰でコソコソ2~3日練習しつつ、なんとなく顔の表情でごまかすのが私のやり方。テレビで放送されていたように、akane先生は振り入れの段階で「はい、これやって!」って急にいろいろ言ってくるじゃないですか! そんなの私には無理なんです! これまでダンスをやってきていないんですから!

池松 なにもそこを強調しなくても(笑)。

長月 自分としては、「長月翠=なんでもできる人」みたいなイメージでいきたかったんですよね。それで言うと、今まではある程度ごまかせていたと思うんです。ただ、akane先生は甘くなかった(笑)。いきなり見破られましたから。

──番組でも「長月は顔でごまかしている」とakane先生から鋭く指摘されていました。

長月 あの瞬間、私の19年が音を立てて崩れていきました(笑)。実力がないんだから、踊れない。踊れないんだから、顔でごまかすしかない。そう考えていたんですけどね……。

池松 でも、みんな初日から見透かされていたよね。すごい方が来たなって驚いたもん。

長月 「長月は詰めが甘い」とか、言うことが全部当たっているんです。もう返す言葉もございません(苦笑)。

──長月さん以外のメンバーは、どこで苦労しました?

池松 ラストアイドルファミリーって、それぞれが自分が所属するユニットを持っているんです。たとえば私はGood Tearsですし。それで今まではユニット同士でバトルしてきたけど、今回は個人戦になったんですね。やっぱりそこでいろいろ考えちゃいましたよ。同じGood Tearsのメンバーですら、ライバルになるわけですから。

──そういうものですか。「みんなで力を合わせて頑張ろう!」と全員で団結しているのかと思っていました。

池松 そういう面もありますけど、A・B・Cとランク付けもされますしね(※番組内で開催したダンス審査でメンバーをA・B・C3つのランクに振り分けた)。それに同じユニットからCのメンバーが出ると、いろいろ考えちゃいます。Cグループは2期アンダーの子ばかりで、その中で頑張っている姿を見ると……本当に複雑な気持ちでした。

──できないメンバーが苦労するのはわかるんです。でも、池松さんはダンスが得意ですよね。それでも大変だった?

池松 めちゃくちゃ大変でした。なぜかと言うと、やっていることがアイドルのダンスじゃないからです。私はアイドルになる前、ダンス漬けの毎日を送っていたんですね。3歳からずっとダンサーとして踊っていましたし。だから身体もムキムキで肩幅も広かったんですけど、アイドルの衣装って華奢な体形じゃないと似合わないんですよ。それでアイドルになるとき、筋肉を落としたんです。身体がアイドル仕様になっているところに、もう一度ダンサー時代の動きを求められるというのはつらかったですね。

阿部 そういう悩みもあるのか……。

池松 アイドルの子って普段から食事制限したりして、それぞれがアイドルとしての理想の体型に近づこうとしているんですよ。だけどakane先生の求める振りって、その方向と矛盾が生じるんです。だから途中で倒れるメンバーが出たり、2曲連続では踊れないということになって……。今回は最初のレッスンのとき、筋トレや体幹トレーニングをやったんですね。メニューの中には腕立て伏せがあったんですけど、そのときに「……うっ!」と思いました。私、アイドルになってからは腕立てを一切しないようにしていたんです。筋肉はNGだと考えていましたから。なのに、とうとう一線を越えてしまうのかって(笑)。

奥村 『青春トレイン』は振りが難しいとかいう以前に、体力面でついていけないんですよね。それにakane先生の振りって身体全部を使うから、柔軟性も求められるんです。だけど私は身体がすごく硬いのが悩みで……。だから、まずは身体作りから始めなくちゃいけない感じでした。気持ち的には「もっと練習したい!」と思っていても、体力がなくて踊ることができない。身体が硬くて思うように動かない。そんな自分がすごく悔しかったです。だから必死で柔軟しましたね。

──慌てて柔軟運動したところで、そんな急激に身体が柔らかくなるものなんですか?

奥村 そこは私も疑問だったから質問したんです。そうしたら、やっぱりすぐには無理だって言われました。普通は2~3年かけて柔らかくするものらしいんですよ。だけど頑張れば少しは柔らかくそうなので、その「少し」を求めて毎日お風呂上りにストレッチした感じです。

町田 私はラストアイドルに入る前からダンスは習っていたんですけど、自分の実力に合ったクラス別に分かれていたから、そこまで苦労することはなかったんです。でも、akane先生の振り付けは情報量が多すぎて……。

長月 情報量(笑)。でも、たしかに多いよね。

町田 とにかく覚えることが多い! 「その日に習ったことを、その日のうちにマスターする」という基本的なことすら、ほとんどできなかったです。

──いきなりすごい情報量を与えられて混乱しちゃいましたか?

町田 あたふたしちゃいました。それと私ってダンスを覚えるとき、とりあえず身体を動かしてみるタイプではなく、じっくり動画を観ながら覚えるんですよ。見本がないと動き方がわからないほうなので。だからakane先生に「ここからは自主練!」とか言われたとき、すごく困りました。まずは見本がないと話にならないから、周りのメンバーが踊っているのをじっと観察するんですけど、その間は棒立ち状態。akane先生から見たら、単にやる気がない人みたいに思われるんじゃないかという不安がありました。でも……私自身はakane先生のことが大好きです(照)。

阿部 それとakane先生のダンスって、観ているよりも実際に踊るほうが何倍もキツいんです。私もバブリーダンスの動画を観て「すごいな~」とか思っていたんですけど、今考えると、そのすごさが全然わかっていなかった。akane先生に教わるようになってから、(大阪府立)登美丘高校の生徒さんがどれくらい大変なことをしているのか、それが実感できるようになりました。

奥村 あれは本当にすごすぎる……。

阿部 『青春トレイン』を初披露したのは8月10日の神宮花火大会だったんですけど、その前にレッスン場で何十回と踊ってきたんですね。先生から「もう一回踊るよ」って言われるたびに、気持ちが沈んでいくんですよ。

池松 めっちゃわかる! 「はぁ……。今からキツいのが待っているのか……」って思うよね(笑)。

阿部 曲の途中で心が折れたら、もう終わり。死にそうになっても、気力だけは奮い立たせないと負けると思っています。何に負けるかは私もわかりませんけど(笑)。覚悟が必要なんですよ。中途半端な気持ちでは絶対に踊れないです。

──悲壮感すら漂いますね。神宮花火大会のリハ中もメンバーが倒れたようですが。

阿部 神宮花火大会で初お披露目したあと、サマーソニックでもパフォーマンスしたんです。そのときのほうが倒れたメンバーは多かったですね。たぶんそれまでの疲れが溜まっていたんだと思うんですけど。

──野戦病院みたいな光景じゃないですか。テレビで観ていてもいたたまれないくらいなのに、仲間たちが隣でバタバタ倒れていくことをどう感じているんですか?

長月 私、泣きながらマネージャーさんに「もうやめてください!」って頼んだことがあります。まず女ということで、男の人にはわからない体調の変化があるんですよ。さらにアイドルということで、普通の女性よりも身体が小さいメンバーが多いんですね。そんな中、炎天下で何十回も同じことを繰り返していると頭がボーっとしてきて何も考えられなくなるんです。メンバーがバタバタ倒れていくのを見て、誰だっていい気分がするわけありません。このことと関係あるかどうかはさておき、卒業者もたくさん出ちゃいましたしね。これ以上、メンバーが減るのは私だって耐えられないです。

池松 当たり前だけど、「もっといいものにしたい」という気持ちは全員が持っているんです。でも、その練習をするだけの体力が残っていないんですよ。ただ、これをやってよかったなと思うことも本当にたくさんありました。神宮のあと、ネットで評判を見たんですけど、「アイドルなのに、こんなすごいことやるんだ」という声が多かったんですよ。あの場にいたのはラストアイドルのファンじゃない方も多かったから、新鮮に映ったらしいんですよね。サマソニもアイドルファン以外の人にアピールするいい機会だったと思います。

──今回のダンス特訓を通じて、一番変わったと思うメンバーは?

阿部 ……う~ん、これは答えに悩むなぁ。

長月 私は即決! 一番変わったのは、ズバリ安田愛里です!

──それは髪を切ったからではなくて?

長月 その印象も若干あるかもしれませんけど(笑)。愛里ちゃんは最初にCグループにされたことで、すごくへこんでいたんです。「みーちゃん、愛里は無理だ。今回のやつは本当にダメ。頑張れないよ」みたいなことをずっと言っていて。私も「そんなこと言わないで。私もBからAに上がれるように頑張るからさ」って励ましたんですけどね。愛里ちゃんって大人なのにイヤイヤ期みたいになることがあるんです。何に対しても「イヤ! イヤ!」って感じで、一切言うことを聞かなくって……。だけど私は同じLaLuceの一員として、なんとかそこから抜け出してほしかった。団体行動のときも途中でくじけそうになっていたけど、なんとか本人が頑張り、最終的には監督にも認めてもらえましたしね。

──安田さん自身はダンスに苦手意識が強い?

長月 そうなんです。だけど私は、そんなふうに一切思っていなくて。ずっと近くで見ているから、本領発揮した愛里ちゃんは本当にすごいんだということを知っているんですよ。今回、愛里ちゃんはメンタルが大きく変わったなと思います。

奥村 安田さんは本当にすごい人だって私も思いました。私たち2期生アンダーとか2期生からすると、安田さんを含めた1期生さんって「練習しなくても、すぐダンスができちゃう人たち」という認識だったんです。ところが最初のオーディションで棒立ち状態のなっている安田さんを見て、自分の考えが甘かったことを知りました。

池松 どういうこと?

奥村 いつもキレキレで踊っている1期生さんたちだけど、その裏では血の滲むような努力をしてきたんだなって……。それを考えると、2期生アンダーの私はもっともっと努力しなくちゃいけないと思いましたし。

──そもそもA・B・Cとクラス分けしたのはどういう意味があったんですか?

長月 特に難易度が高いパートは、Aの子が踊ることになっているんです。イントロはAとBしか踊っていませんし。

池松 それとakane先生曰く、AやBのメンバーがCに教えるという意味もあったみたいです。実際、最後のほうはCのレベルもAにどんどん近づいていた気がするんですよ。

奥村 私、最初のクラス分けではCだったんです。だけどAの阿部さんから丁寧に教わったことで、最後は自分もAに上がることができました。阿部さんって決して口数は多くないんですけど、みんなが自然と「ついていきたい!」って思えるようなオーラがあるんですよね。私たちからすると、ピラミッドの頂点にいるような真のカリスマだなって思います。

阿部 そんな、やめてください(笑)。

──「成長がすごい」という意味で安田さんの名前が挙がりましたが、改めて「ダンスが上手い」と感じたメンバーはいますか?

町田 (前のめり気味に)池松さん! 池松さんは本当にすごいです! 単純に上手いというだけじゃなく、どうしたら自分が一番よく見えるか理解している気がするんですよ。表現力があると言えばいいのかな? 私も見習いたいなと思ったし、何度も見ていて感動しました。

長月 わかるな。「身体に表情がある」という感じだよね。同じ振り付けをしていても、身体に表情がある子とない子がいるんです。

町田 そうそう。だから池松さんはステージでも人の目を引くんですよね。

池松 うわ~、ホントにうれしいな。今聞いた言葉を大事にしながら生きていこうっと(笑)。

(後編「誰の真似でもない、ラスアイならではのものを作りたい」は本日9日(月)正午12時公開)



▽ラストアイドル 7thシングル「青春トレイン」(Virgin Music)
9月11日にリリースされるラストアイドル7枚目のシングル。センターを阿部菜々実が、Bメロのセンターを米田みいなが務める。