三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」の2020年度新製品が発表になりました。11月1日からの発売に先駆けた報道関係者向けの発表会にて、新モデルの進化ポイントが説明されました。

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    三菱電機のルームエアコン「霧ヶ峰」の2020年度新製品。左が「FZシリーズ」、右が「Zシリーズ」

「霧ヶ峰」といえば、独自の赤外線センサー「ムーブアイ」を技術の核に、高い省エネ性と快適性の両立に19年来取り組んできた、三菱電機のルームエアコンブランド。2018年度モデルからはAIを組み合わせた「ムーブアイ mirA.I.」という名のもと、室内の温度変化を予測して先読み運転をすることで、断熱性など住宅性能にとらわれない快適運転を実現しています。翌2019年度モデルでは、室内の温度・湿度から判断し、冷房・除湿・爽風から最適な運転モードを自動で選択する機能を追加しました。

今回発表された2020年度モデルでは、新たに高解像度センサーも組み合わせた新開発の「ムーブアイ mirA.I.+(ミライプラス)」を搭載。エアコンから吹き出す気流を高精度に検知し、居住空間に合わせた適切な調整によって快適性を向上させた2つのシリーズ(FZ・Z)計18機種を展開します。三菱電機によると、気流を検知して自動調整を行うエアコンは世界初とのことです。

気流制御に用いられている赤外線センサーは、「サーマルダイオード赤外線センサー」と呼ぶ高解像度・高感度なもの。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の委託で三菱電機が設計・製造した地球観測衛星、「だいち 2号」に搭載されている赤外線センサー技術を活用しています。

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    新開発の「サーマルダイオード赤外線センサー」。スペックは違うものの、地球観測衛星「だいち 2号」に搭載されている赤外線センサーと技術的にはまったく同じとのこと

センサーの画素数と感度は、それぞれ従来比の80倍(画素数)、2.5倍(感度)の性能を持ちます。気流をしっかりとらえ、エアコンから吹き出した温風・冷風が接する床面などの温度変化から、エアコンのAIが風の流れと強さを推測。エアコンからの風が、部屋の中で目標とする地点へどれくらい届いているか判定する仕組みです。ここでいう「目標」はおもに人間で、夏は冷風を、冬は足元に温風を届けます。

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    一般的な熱源判定(左)の画像と、霧ケ峰の新製品における画像(右)。従来比で80倍の解像度と2.5倍の感度による精細な画像。温度変化の揺らぎまで検知できます

さらに、この情報に基づいて、エアコンのAIが居住空間に合わせて気流を自動で調整。 家具や間取りの影響でエアコンの風が目標に届いていないことを検知すると、きめ細やかに風向を変えて最適な気流を送ります。学習機能により、以降は最適な気流を運転開始直後から送ることができます。

三菱電機が行った調査では、ユーザーのエアコンの設置環境は7割以上がL字型リビングやアイランドキッチンといった、複雑なLDKであることが判明。このうち40%以上の人が、気流(エアコンの風)を適切に届けるための「操作による調整」を断念しているそうです。そこで考え出されたのが、新モデルが搭載した気流の到達度を把握する技術です。

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    居住空間の多様化により、エアコンの設置環境は年々複雑な間取りに。全体の7割が、L字型リビングやアイランドキッチンなどの複雑な間取りにエアコンを設置しています

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    家具などに遮られて気流が届かない場合、複雑な間取りのLDKにエアコンを設置しているユーザーの4割以上が、「調整を諦めている」と回答

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    リビングにおけるエアコンの気流は、実際には外気の侵入などの影響を受け(右図)、本来のエアコン気流とは到達点が変わってしまう場合が多いのです

従来のセンサーでは、気流の到達点における温度変化は細かく検知することが難しかったそうですが、三菱電機が誇る高解像度・高感度な赤外線センサーを用いることで、その変化を細かく検知して揺らぎの状況から気流と判断できるのだそうです。人の動きや障害物の有無といったことまで判断し、風向きや強さによって気流を最適に制御し、快適さを向上させます。障害物などで風を直接届けられない場合には、壁などの反射を利用して気流を届ける制御も行います。

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    気流の到達点における細かな温度変化を検知し、周囲との温度差から強さを判断

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    「ムーブアイ mirA.I.+」によって温風を検知した実画像

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    例えば、キッチンカウンターと対面の天井にエアコンが設置された状態では、写真のように気流がキッチンに立つ人に当たらない場合があります

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    横から見た場合のイメージ映像

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    センサーが人を検知し、人がいる方向に気流を向けますが、温度変化から風が強すぎると判断

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    すると、気流を直接ではなく少し外れた方向へ向けて調整します

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    風を壁に反射させて、人へと間接的に気流を送ることで、風が強すぎずに快適な環境を実現

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    温度変化を検知して気流を自動制御する体験デモ。エアコンの目の前に座ると、気流は足元に向けて送られます

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    手前に障害物を置くと、そのままの気流では風が遮られると判断。気流が少し左斜めに変わり、左側の壁に当てて跳ね返った風が回り込むように足元へと到達

新モデルでは、エアコン本体に無線LAN機能も標準で搭載しました。スマホ向け専用アプリ「霧ヶ峰 REMOTE(リモート)」を用いて、「ムーブアイ mirA.I.+」のセンシングデータをネットワークのサーバー上でサーモグラフィー化し、外出先からも部屋の状況を熱画像として確認できる「サーモでみまもり」機能が使えます。以前から提供されている、外出先からの遠隔操作機能も可能です。

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    「霧ヶ峰 REMOTE(リモート)」の画面。外出先から室内の温度分布を確認できる「サーモでみまもり」機能

FZシリーズは、左右独立駆動プロペラファンを採用したモデル。Zシリーズは、クロスフローファン(ラインフローファン)を採用したモデルです。本体色は両シリーズともにピュアホワイトで、Zシリーズではブラウンもラインナップします。発売はそれぞれ11月1日、12月上旬を予定しています。メーカーによる市場想定価格(税別)は、以下のとおり。

■FZシリーズ
MSZ-FZ4020S-W(定格冷房能力4.0kW)33万8,000円前後
MSZ-FZ5620S-W(定格冷房能力5.6kW)35万8,000円前後
MSZ-FZ6320S-W(定格冷房能力6.3kW)37万8,000円前後
MSZ-FZ7120S-W(定格冷房能力7.1kW)39万8,000円前後
MSZ-FZ8020S-W(定格冷房能力8.0kW)42万8,000円前後
MSZ-FZ9020S-W(定格冷房能力9.0kW )45万8,000円前後

■Zシリーズ
MSZ-ZW2220-W,T(定格冷房能力2.2kW)22万8,000円前後
MSZ-ZW2520-W,T(定格冷房能力2.5kW)24万8,000円前後
MSZ-ZW2820-W,T(定格冷房能力2.8kW)26万8,000円前後
MSZ-ZW2820S-W,T(定格冷房能力2.8kW)26万8,000円前後
MSZ-ZW3620-W,T(定格冷房能力3.6kW)37万8,000円前後
MSZ-ZW3620S-W,T(定格冷房能力3.6kW)37万8,000円前後
MSZ-ZW4020S-W,T(定格冷房能力4.0kW)28万8,000円前後
MSZ-ZW5620S-W,T(定格冷房能力5.6kW)30万8,000円前後
MSZ-ZW6320S-W,T(定格冷房能力6.3kW)32万8,000円前後
MSZ-ZW7120S-W,T(定格冷房能力7.1kW)34万8,000円前後
MSZ-ZW8020S-W,T(定格冷房能力8.0kW)37万8,000円前後
MSZ-ZW9020S-W,T(定格冷房能力9.0kW)40万8,000円前後