大日本印刷(DNP)は8月27日、タブレット端末上で瞬時に移調できるという電子楽譜活用アプリの提供や、オンデマンド印刷による紙の楽譜の販売など、統合的なサービスを提供する次世代型の楽譜流通販売事業を2019年8月に開始すると発表した。楽譜を所有する国内外の出版社や所蔵機関と楽譜を利用する演奏者の双方にサービスを提供し、楽譜の印刷・販売、アプリ関連のサービス提供も含め、2022年までに6億円の売上を目指す。

  • 次世代型楽譜流通事業のスキーム

現在、演奏者が自身の楽器に合わせた移調・読み替えなどを行う場合やページがめくり難い部分については、紙楽譜に対して手作業で修正を加える必要があるという。

こうした課題に対して同社は、演奏者が移調などの作業を容易に行えるデジタル楽譜の流通チャネルを構築するとしている。

具体的には、演奏者のニーズに応じて楽譜を調整できるというアプリ「MuseCloud(ミューズクラウド)」の提供、オンデマンド印刷にも対応する紙と電子のハイブリッドな楽譜の提供、電子楽譜の流通チャネル構築の3点。

  • MuseCloudの楽譜画面イメージ

  • 移調のイメージ

MuseCloudは、電子楽譜のファイルフォーマット規格であるMusicXML形式に対応しており、電子楽譜を演奏者のニーズに応じてカスタマイズ可能とのこと。

トランペットやサックスなどの管楽器では演奏上の都合から、楽曲の形を変えずに音域を読み替えて、原曲からの移調を行うことがあるという。

同アプリは、電子化した楽譜の調性を予め読み込み、アプリに組み込んだアルゴリズムによって容易に移調できるとしている。

またオーケストラなどの楽譜(総譜)には、譜面上に多様な楽器が記載されているが、アプリ上で利用者自身が担当する楽器を選択すると、そのパートのみ(パート譜)を表示する。 総譜での全体把握とパート譜での自らの位置付けが容易になり、楽曲のより深い理解につなげられるという。

さらに、MusicXML形式とPDFの電子楽譜を1つのアプリ内で管理して、容易に利用できるとしている。

今後、アプリ内に格納した楽譜への書き込みを可能にする機能を追加開発していくという。

なお同アプリは無料であり、iOS 12.0以降のiPadのみに対応する。

ハイブリッドな楽譜に関しては、紙楽譜への要望に応じて、オンデマンド印刷による1冊からの楽譜提供が可能としている。蛇腹折りの楽譜形態にも対応し、紙と電子の両方の楽譜を提供するという。

流通チャネルについて同社は、楽譜浄書から印刷、電子化、販売まで一貫して行うトータルサービスを提供することで、次世代型の電子楽譜流通チャネルを創出するとしている。

「DNP楽譜配信・活用サービス MuseCloud」で電子楽譜を制作・管理し、ピクシブが運用する創作物の総合マーケットサイトである「BOOTH」の楽譜販売ページで販売するという。購入した電子楽譜は、MuseCloudで利用できる。

また、紙の本や電子書籍を販売するDNPのハイブリッド型総合書店である「honto」でも、2019年冬から販売開始予定とのこと。