里山を切り開き一からグラウンドを作った香取シニアの羽生惣亮監督。グラウンド脇に並ぶ室内練習場、勉強部屋、クールダウン用の水槽も全て手作りだ。行動力と柔軟な発想を持ち合わせた型にハマらない羽生惣亮監督に今後の展望などを聞いてみた。



■食べるだけではなく自ら作る食トレへ
『食トレ』というトレーニングが野球界で一般化しつつある現代。香取シニアでは次のステージである高校野球を見据え、子どもたちの食べることへの意識向上にも熱心に取り組んでいる。

「高校野球で活躍するためにも食事の面に力を入れることは重要ですね。身体を大きくする目的もありますが、やはり一番は怪我をしない身体を作ることです。土日の1日練習ではおにぎりを持参させ、1年時には10時、お昼、15時と3回に分けて最低2合のお米を食べさせています。2、3年生になれば最低3合。また、練習後のいわゆるゴールデンタイムという時間にはタンパク質の補給としてプロテインを摂取。それくらいしないとハードな高校野球に耐えられる肉体を作ることはできません」

また、子どもたちがより食事に関心を持てるよう、グラウンドの横に建設中の食堂では将来的に子どもたちに自炊をさせるのだという。

「学校の調理実習と同じように、家から具材を持ち寄ってカレーや野菜炒めなどご飯が進む簡単なメニューを子どもたちの手で作らせようと考えています。大人になった時に自炊ができることに越したことはないですし、自分たちの手で調理することで普段当たり前のようにご飯を作って頂いている親のありがたみも感じられると思います。また、『これは鉄分、これはタンパク質…』など、作ってもらうのではなく自分で調理することで栄養について学べることも多いと思います」
■他のスポーツで磨かれる感性もある
自分たちの手で料理する計画と共に、今年の冬から新たな取り組みがスタートする予定だ。それは野球ではなく『ゴルフ』。野球チームなのにゴルフ? と思うかもしれないが、里山が点在する香取シニアのグラウンド付近には多くのゴルフ場がある。

「ゴルフのツアープロをしている知り合いから『今ゴルフ場は人手不足で、バンカーの砂を補充したり、池のほとりの草を刈る人がいない』と相談を受けました。もしやってくれるのなら無料で1ホール回っていいよと言われたんです。子どもたちも参加していいとのことなので、オフトレーニングの一環として7番アイアン、砂袋、鎌を持ってゴルフをする計画があります。打った後はボールのところまでランニングをすることで自然と足腰も鍛えられないかなと(笑)」

チームのパフォーマンスコーチを務める豊田明弘トレーナーも「ゴルフは野球と同じで止まっている時間が長いスポーツです。その点では野球に共通しているところもあります。特にメンタルを鍛えられる面白い取り組みだと思います」と太鼓判を押す。

「あくまでスポーツのベースは野球で作りますが、アメリカのように季節によって色々なスポーツをしてもいいと考えています。1日野球漬けの日が当たり前ではなく、たまには1日全く野球をやらない練習があってもいいと思います。他スポーツに触れることで、子どもたちの感性が磨かれることもあるでしょうから」(羽生監督)

その他にも、LINEアプリを使った自主練習の動画チェック、専門医による肘の定期検診、身体をケアするためのトレーニング機器の設置など、子ども達のためになることは固定観念にとらわれず柔軟な発想で取りいれている。

切り開かれた里山から、新しい試みはこれからも続く。

(取材・写真:細川良介)