村上春樹「90歳まで頑張ります」公開収録イベント「村上JAM」で語る
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMの特別番組「村上RADIO」。第7弾となる今回は、村上さんの作家活動40周年を記念して6月26日(水)に開催された公開収録イベント「HARUKI MURAKAMI 40th Anniversary村上JAM ~村上RADIO SPECIAL NIGHT~」(以下、「村上JAM」)の模様を凝縮して、8月25日(日)、9月1日(日)の2週にわたってオンエア。

音楽監督・大西順子さんの村上JAMバンドをはじめ、ジャズ・クラリネット奏者の北村英治さん、渡辺貞夫クインテットが演奏した数々の名曲のほか、村上さん本人と俳優・高橋一生さんの朗読、京都大学iPS細胞研究所所長・山中伸弥さんと村上さんとのサプライズ・トークなどの模様をお届けします。

本記事では8月25日(日)の放送から、北村さん、高橋さん、パーソナリティ・坂本美雨とのトークの模様をご紹介します。

村上春樹さん



美雨:村上JAM、今夜は一夜限りのジャムセッションをお送りしています。総合プロデュースは村上春樹さん。音楽監督は大西順子さんです。次にお迎えする方は……。

村上:クラリネットの北村英治さんです。

北村:呼んでいただいてありがとうございます。

村上:僕は学生時代、1970年ごろに水道橋の「スウィング」っていうジャズ喫茶で2年くらいアルバイトをしていたんですよ。今はもうないんですけど、モダンジャズをかけなくて、ニューオリンズジャズとスウィングジャズと、いわゆる中間派しかかけないっていう、すごい偏屈な店でした。

僕はそこでアルバイトしているとき、いろんな古いクラリネットの人が好きになって、そのなかでも北村さんのクラリネットがすごく好きでした。仕事場に行くと、開店して最初のレコードをかけるんです。そのときの僕は、テディ・ミーツ・エイジ・トリオの「IT'S BEEN A LONG TIME」が好きで、いつもかけてたんです。

美雨:北村さんが大西さんと共演されるのは?

北村:初めてですね。前に、なにかのセッションでチラっと一緒になったことがあるんですけど。これは本当に村上さんのおかげです。こうやって一緒にやらせてもらえるというのは。こんな素敵なピアニスト、ちょっとおりませんもんね。

村上:でも、ジャムセッションって、いつもはない組み合わせというのがすごく魅力なんですよね。

北村:それでね、一緒にやると何十年も一緒にやったような感じで伴奏してくれるんです。ほんと、年寄りを大事にするんでしょうね、大西さん(笑)。

美雨:今日演奏する曲は、北村さんが選んでくださったとお聞きしました。

北村:やはりね、クラリネットでは「Memories of you」。これは絶対演奏したい曲の1つです。

村上:ベニー・グッドマンの有名な曲ですね。

北村:それから、スウィングを代表するような曲で「Shine」。これはデキシーでもよく演奏されている曲ですが、今日はその2曲を演奏させていただこうかなと思うんですけれども。

村上:素晴らしいですね。

<演奏>
「Memories of you」北村英治さん、大西順子さん
「Shine」北村英治さん、大西順子さん、井上陽介さん、石若駿さん

北村英治さん



村上:北村さんが影響を受けたというか、好きなクラリネット奏者って誰なんですか。

北村:クラリネット吹きは、やっぱりみんなベニー・グッドマンが好き。人間として付き合うのは嫌だけど(笑)、聴いてみて、あんな素晴らしいクラリネット奏者はいないと思う。あとバディ・デフランコもいいですね。すごい仲良くしてくださってね、ツアーにいろいろ連れてってもらったり、オーストラリア・ツアーなんかもバディさんと一緒にやらせていただいたり。

村上:2クラリネットでやったんですか?

北村:そうなんです。楽しかったです。

村上:バディ・デフランコいいですよね。僕もコレクションしてるんです、ずっと。

北村:もうたまらないですね、あの人。人間がまたすごくいいんですよ。ベニー・グッドマンって嫌われるところがあるんですけど、バディを悪く言う人は誰もいないです。ベニー・グッドマンは、みんなにさんざんズタボロに言われるでしょ?

村上:悪口で1冊本ができますよね。

北村:もうすごいんですよ、それ話すと夜が明けちゃうくらい(笑)。

美雨:会ってみたいですけどね。

村上:もう亡くなりました(笑)。

美雨:北村さんは共演されたことがあるんですよね。

北村:はい。ベニー・グッドマンとも一緒にやらせてもらったことがあるんです。でも、ありがたいことに僕はまだ元気で吹いていられる、これはありがたいなと。

村上:失礼ですが、いまおいくつですか?

北村:満で90歳です。わりにのんびりしてるんで、長生きしてるのかなと思うんですけど。

村上:元気の秘訣とかあるんですか?

北村:いや、好きなことをしてね、それで嫌なやつと付き合わない(笑)。それが一番大事だと思います。

村上:それは素晴らしいことですね。僕も、90歳まで頑張ります。

北村:いや、ぜんぜん大丈夫ですよ(笑)。僕も、まだあと10年くらいは吹いてやると思って。考えてみると100になっちゃいますけどね、当分、吹いてやろうと思ってます。しゃべってると長くなっちゃいますね。お邪魔しました、どうも。ありがとうございました。

*  *  *

美雨:今日は音楽と言葉の融合もテーマです。次は、言葉の世界を楽しんでいただきたいと思います。村上春樹さんの作品、朗読してくださるのはこの方、俳優の高橋一生さんです。

高橋:高橋一生と申します。

美雨:なんか非現実的な光景になってきましたね。高橋一生さんは村上春樹さんの作品の大ファンだとお聞きしています。

高橋:そうです。今日お招きいただいて大変光栄に思っています。……こんばんは。

美雨:村上さんの作品の中で特に思い入れのある作品はありますか?

高橋:最近になってしまうんですけど、僕は最初「象の消滅」という短編集から読み始めたんですけど、「レキシントンの幽霊」だったり。最近、村上さんの最新長編「騎士団長殺し」についてエッセイを書かせていただいて、なんだか勝手に縁を感じてしまっています。今回、呼んでいただけて、うれしいです。

美雨:ご本人を前にしていかがですか。さて今回、高橋さんが朗読してくださる作品。まずは短編小説「螢」の一節、そして超短編集「夜のくもざる」から「夜のくもざる」です。

これは「村上RADIO」でラジオネームを募集したときに、朗読してほしい作品を、みなさんにリクエストしていただいたんです。本当にたくさんのリクエストがありまして、その中から選ばせていただきました。リスナーのみなさんが選んでくださった作品いうことですね。

<朗読>
・短編「螢」の一節
・超短編集「夜のくもざる」から表題作「夜のくもざる」


美雨:高橋一生さん、どうもありがとうございました。

村上:どうもありがとうございました。素敵でした。

高橋一生さん



*  *  *

村上:いかがでしたか。だんだん盛り上がってきて、ここで休憩になります。後半はさらにホットになりますよ。来週は第2部。アルトサックスプレーヤー渡辺貞夫さんの演奏があります。僕も短い物語を朗読します。そして最後はアーティスト全員によるセッションもあります。村上RADIO、村上JAMスペシャルナイト、来週も楽しんでください。

本記事で紹介できなかった内容は、以下の記事よりチェックできます!
▶▷村上春樹にノーベル賞・山中教授が“お願い”「ぜひ続編を…」

次週9月1日(日)放送の「村上RADIO~村上JAM SPECIAL Night②~」は、「村上JAM」第2部の模様をお届けします。どうぞお楽しみに!

<番組概要>
番組名:「村上RADIO~村上JAM SPECIAL Night①~」
放送日時:8月25日(日)19:00~19:55 ※FM山形・FM福岡20:00~20:55、FM沖縄21:00~21:55

番組名:「村上RADIO~村上JAM SPECIAL Night②~」
放送日時: 9月1日(日)19:00~19:55 ※FM北海道・FM仙台・FM山形20:00~20:55、FM山口22:00~22:55、FM沖縄 21:00~21:55

パーソナリティ: 村上春樹、坂本美雨
出演:大西順子(音楽監督)、北村英治、渡辺貞夫クインテット、山中伸弥、高橋一生、スガシカオ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/