「【シゴトを知ろう】ショコラティエ編」では、パティスリー「ベル・エ・サンジュ」の渡辺元嗣さんにお話を伺いました。高校時代に抱いた憧れを形にすべく、フランスに渡って修行を積んだ渡辺さん。帰国してからも、「きれいな仕事」を目指しておいしいお菓子づくりに励む姿が印象的でした。番外編では渡辺さんが語った業界の常識や舞台裏にクローズアップしていきます。

■まずは、パティシエとして経験を積む

―― 業界内にはどんな性格の方が多いですか?

一言で言うと、変わっている人が多いですね(笑)。みなさんこだわりが強い部分はあって、そのポイントも人やお店によって違います。一方で、そうしたこだわりの積み重ねこそが、売れる商品を生み出すという面もあります。

あとは、とにかくみんな負けず嫌い。「自分が一番」という誇りを持って仕事をしている人が多いと思います。

 
―― 業界内ではどんなキャリアパスがありますか?

ショコラティエになる前に、まずパティシエとして経験を積むことになると思います。チョコレート専門店にずっと務めるという場合を除いて、ケーキなど他の洋菓子にノータッチというパターンはあまりないですから。

まずは製菓の専門学校に行く人がほとんどだと思います。お菓子づくりの基礎の部分に触れられる他、夏休みやクリスマスの実習など、現場に入ってその雰囲気を感じ取ることもできます。そういう「クッション」を経て現場で働くほうが、いきなり現場に入ってミスマッチを起こすよりは良いと思います。

■「お客さん目線」を大切に、喜んでもらえる商品を

―― 業界内で働くにあたって、特に意識したり、制限されることはありますか?

やはりどうしても体力勝負になってしまうところはあると思います。大手ホテルなどに就職すれば、しっかり労働時間が決められているところが多いですが、製菓業界は必ずしも待遇の良いところばかりではありません。「疲れたら、しっかり寝る」ということが大切だと思います。

―― 質の高いお菓子づくりのために、意識して行っていることはありますか?

他のパティスリーで、お菓子を食べます。お客さん目線になって初めて分かることもあります。例えば、チョコレートがたくさん乗った大きなケーキなど、食べる方になってみると、完食するのはちょっとつらいですよね。そこから、どんな商品なら喜んでもらえるかが分かってくる。他の誰かがつくったものだと、作り手側とは違った捉え方ができるんです。

それと、風景や街なかにある物をお菓子に置き換えて考えてみるのも方法の一つです。「この形はチョコレートで表現できる」「飴でならつくれる」と考えて、コンクールなどの作品づくりに生かしています。

■チョコレートの味は、気遣いの積み重ねで決まる

―― 業務をされてから、一番驚かれたことは何ですか?

チョコレートの世界は繊細で奥が深いということです。前の職場でボンボンショコラをつくったときのことです。生チョコ部分は同じ材料と同じレシピを使って複数人でつくったのですが、先輩のつくった生チョコと私のものはまったく違いました。

その差は、どれだけ気をつかってつくったかということで生まれていました。たとえば、チョコレートの温度が体温で上がってしまわないように、混ぜるボウルを必要以上に触らないことなど。普通なら気にしないことですが、一つひとつの気遣いの積み重ねが味につながる。それがチョコレートなんです。


―― ショコラティエになったから気づけたこと、成長した部分はありますか?

最初は言われるがままチョコレートをつくっていましたが、少しずつ自分のエッセンスを入れて工夫することで、前の先輩よりきれいな仕事をできるようになりました。ごまかしが利かないチョコレートだからこそ、その成長があったんだと思います。

「一生勉強、一生修行」だという作り手もいますが、その通りだと思います。突き詰めればキリがないですが、そのときのベストを毎日どうつくるかが大切です。それに気づけたことは財産だと思います。
 


目に見えないところの気遣いを重ね、おいしいチョコレートをつくりだすショコラティエ。その仕事に、誰もが誇りを持っているそうです。一方で、お客さんに喜んでもらえる商品づくりには「お客さん目線」が大事だと語った渡辺さん。「一生勉強、一生修行」という気持ちで日々自分をアップデートしていく姿は、まさにプロフェッショナルです。ショコラティエに興味を持っている人は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
 
 
【profile】ベル・エ・サンジュ オーナーパティシエ 渡辺元嗣