カレーの香りをかいで、ふと実家を思い出したり。すれ違った人の香水で、同じ香水の知人を思い出したり。そんな経験はありませんか。

  • お母さん…

ないですか?そうですか。

私はあります。

これは”プルースト効果”と呼ばれるもの。嗅覚の情報は、脳の中でも記憶を司る部分を含む「大脳辺縁系」に直接伝達されることから、五感の中で最も記憶と結びつきやすいんだそうな。

であれば、他の感覚を遮断して、香りに集中することができれば、人間の脳を騙し、”過去”にタイムスリップしたかのような、バーチャルリアリティな体験ができるかもしれない。

  • 言っている意味わかります?

今回は、様々な香りに関する研究を行っており、新たな製品開発への応用を積極的に進めているロート製薬さんにご協力いただき、いろいろな香りを再現したサンプルボトルを提供してもらうことができました。

使用するのは、科学的に合成した「男子校の体育館」と「10代女性の香り」を小さな小瓶につめたもの。

実験の参加者

筆者

実験内容

目隠しした状態で、上記2つの香りをかいだら「10代の頃の自分に戻るバーチャル体験ができるか」を検証。

筆者は中学生のときに剣道部。毎日のように汗くさい体育館で竹刀を振っていました。共学で、部活の同期には女の子も当然いました。ということで、香り的な条件は揃っているはず……。

  • こんな感じ

はたしてこの香りをかぐことで、あの夏、部活をがんばっていた自分に戻ることはできるのか?それでは早速いってみましょう!

実験の様子 その1

「男子校の体育館のにおい。嗅ぎたくない…。うっ、思ったよりもゴムっぽい香りがする。あ、上履きの香りかな。懐かしい。あと、ちょっと酸っぱいような、古い畳のような香りがする。

10代女性の香り。えー!すごく濃厚な、甘いにおいがする。男子校の体育館の100倍いい香りがしますね。

  • これな

スンスン…。

香りに慣れてくると、しっくりしてきましたね。あー、なんだか懐かしい感じがしてきました。バーチャルリアリティとまではいきませんが」

★検証結果★

バーチャルリアリティ体験はできなかったが、懐かしい感じがしてきた。

実験の様子 その2

今度は、香りをかぎながら、おにぎりを食べてみよう。「体育館で女子とおにぎりを食べている」バーチャル体験はできるだろうか。

「あ、うんうん…なんだろう…ああ…。

おにぎりの風味の向こう側に…上履きのゴムにおいと、甘い香りを交互に、かすかに感じる。

うんうん。

部活の休憩中を思い出しますね。部活中に食事をすると顧問に怒られるので、隠れてこっそりしていたんですよ。思い出すなあ」

★検証結果★

バーチャルリアリティ体験はできなかったが、顧問に怒られたことを思い出した。

脳をバーチャルに騙すことこそできませんでしたが、”上履きと床がこすれたような、酸っぱいような香り”が体育館のにおいなのだというところで、しっくりきました。同じ部活だった女の子のことが好きだったなあ……なんてことも思い出してしまいましたが、これも10代女性の香りの効能かもしれません。

ちなみに、実験でも使用した「若い女性特有の香り」は「ラクトンC10」・「ラクトンC11」という成分で、「SWEET臭」とも呼ばれるもの。ロート製薬さんの実証実験では、顕著な差がでるほど30代以降で減少したそうです。