JOAAとNTTコムウェアは8月22日、「BLOF営農支援サービス」の実証実験を2019年8月上旬から開始したと発表した。今回、有機栽培の中でも科学的データを基に高品質・高収量を実現する「BLOF理論(Bio Logical Farming)」の普及に向けて、高度な専門知識とスキルがなくてもBLOF理論を実践できるサービスの実用化を目指す。

日本の農業は自然災害や鳥獣被害の影響を受けやすく、低収益性、収益不安定、後継者不足などの課題を抱えており、持続可能な開発目標(SDGs)においても小規模食料生産者の生産性および所得の増加は国際的に解決すべき重要なターゲットの1つになっているという。一方、近年の健康志向、環境志向ブームで消費者から有機作物の需要が高まっており、有機農業への就農希望者や有機農業に取り組みたいと考える既存農家が増加している。

有機栽培の1つであるBLOF理論はアミノ酸、ミネラル、土壌の3つの分野に分けて科学的に営農することで高品質・高収量な農作物を安定して生産することを可能としている。

これにより、BLOF理論の実践に成功している農家は所得向上を実現しているが、同理論は高度な専門知識とスキルを要するため、有識者の十分なサポートなしでは実践が難しく、特に施肥設計工程では複雑な計算と調整が必要なことが課題になっていたと指摘。

BLOF営農支援サービスは、専門知識やスキルがなくてもBLOF理論を従来と比較して簡単に実施できるシステム。特に、複雑な計算と調整が必要な施肥設計、これまで個人で実施していた圃場管理についてシステムを活用して実施することで、農家やインストラクター)の負担を軽減するという。

農家は、簡単に施肥設計や圃場管理を実施でき、インストラクターからのアドバイスをシステム上で参照することを可能とし、インストラクターは指導対象農家の圃場情報や施肥設計結果をシステム上で参照することで、営農指導に役立てることができる。

主な機能は「施肥設計機能」「圃場管理機能」の2つ。施肥設計機能はBLOF理論の特に重要な工程の1つである施肥設計の工程において、作物生育に最適な土壌成分の圃場をつくるために、肥料の種類や量を計算し、施肥計画を策定する。また、インストラクターが指導対象農家の施肥設計結果を参照し、アドバイスを実施するほか、農家、インストラクター間で相互にコミュニケーションすることも可能としている。圃場管理機能は各圃場の基本情報(栽培作物、圃場特性、担当者情報など)や、収穫量を管理する機能だ。

実証実験は8月上旬~10月下旬までを予定し、実験協力者は沖縄県在住のBLOF理論を実践している農家10人、対象作物はトマト、ゴーヤ、マンゴー、パッションフルーツなどとなり、実験協力者であるBLOF農家とJOAAのインストラクターが同サービスを利用して作物の生産を行うことで、施肥設計機能および圃場管理機能の検証を行う。

  • 実証実験のイメージ

    実証実験のイメージ

主な検証内容は従来の手作業の施肥設計と比較し、サービスを活用した場合の作業時間、施肥設計の精度および画面操作性の検証や、サービスを活用した場合のインストラクターの指導時間および指導レベルの検証を実施する。

今後、農業協同組合や就農希望者、全国の農家を対象に2020年3月のサービス提供開始を目指し、サービス内容の検討ではデザインシンキングを活用して、実験協力者へのヒアリングおよび現場調査を行う。さらに、今回の開発では協力農家やインストラクターのニーズに対して柔軟に対応するため、繰り返し改善を行いつつ機能拡充を図るアジャイル開発手法を採用する。

将来的には、天候や衛星写真などのさまざまなデータを活用し、気候や地形に応じた施肥設計の最適化や高度化を実現するとともに、今回の実証の対象である「施肥設計」「圃場管理」に加えて、「販売・流通」「教育」などの農業工程を一貫してサポートするサービスの提供を目指す方針だ。