米国の航空宇宙メーカー、シエラ・ネヴァダ(Sierra Nevada Corporation)は2019年8月14日、小型の無人スペースシャトル「ドリーム・チェイサー」の初飛行を、2021年に実施すると発表した。

NASAとの契約に基づき、国際宇宙ステーション(ISS)への物資の補給と、回収を担う。打ち上げにはユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の「ヴァルカン」ロケットを使う。

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    ドリーム・チェイサー・カーゴ・システムの想像図 (C) SNC

ドリームチェイサー

ドリームチェイサーは、シエラ・ネヴァダが開発している無人補給船で、スペースシャトルのような翼をもち、地球と宇宙を往復飛行でき、さらに15回以上の再使用ができる能力ももった小型シャトルである。実際の製造はロッキード・マーティンが担当しており、同社内にある特別開発チーム「スカンク・ワークス」の技術が活用されている。

全長は約9m、翼の長さは約7mで、スペースシャトルの4分の1ほどという小ささ。翼は空母艦載機のように折りたたむことができ、既存のロケットのフェアリングの中に収められて打ち上げられる。帰還時には翼を広げ、スペースシャトルが着陸していたケネディ宇宙センターのシャトル着陸施設(滑走路)に着陸する。

現在開発が進んでいるのは、「ドリーム・チェイサー・カーゴ・システム」と呼ばれる無人の補給船版である。同機は本体となるシャトル型の機体のほか、その後部には「カーゴ・モジュール」をもち、両者をあわせ、与圧物資を約5000kg、非与圧物資を約500kgの、計約5500kgの物資をISSへ運ぶことができる。また、そのシャトル型の機体をいかして、約1750kgの物資をISSから地球に持ち帰ることもできる。

とくに、ドリームチェイサーは翼を使って大気圏内を滑空飛行し、滑走路に着陸することができるため、搭載物にかかる加速度が小さくでき、壊れやすい物資なども安全に持ち帰ることができる。さらに着陸後、すぐに持ち帰った物資を取り出せるという特長ももつ。ISSからの物資回収はスペースXの「ドラゴン」補給船でもおこなえるが、ドラゴンはカプセル型であり加速度が大きく、また海に着水するため、ドリームチェイサーのこうした特長は唯一無二のものである。

なお、カーゴ・モジュールは使い捨てで、帰還時にはISSで発生したゴミなどを搭載し、シャトルとの分離後、地球の大気圏に再突入。ゴミとともに燃え尽き、処分される。

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    ドリームチェイサーの想像図 (C) SNC

シエラ・ネヴァダは2016年に、NASAによるISSへの物資輸送を民間に委託する計画「商業輸送サービス2 (Commercial Resupply Services-2)」の実施業者の一社として選ばれており、2019年以降から2024年にかけて、ドリームチェイサーを使い最低6回の補給ミッションをおこなうことが決まっている。

一方、シエラ・ネヴァダはロケットをもっていないため、打ち上げは他社に発注する必要があった。同社では、ドリームチェイサーはさまざまなロケットに搭載できる高い互換性があるとし、欧州や日本のロケットも候補に挙がっていたが、最終的にULAの「ヴァルカン(Vulcan)」ロケットを選択した。

ヴァルカンはULAが開発中のロケットで、現在運用中のアトラスVとデルタIVの後継機となる。初打ち上げは2021年の予定で、その2回目の飛行に、ドリームチェイサーを搭載するという。また、NASAとの契約で定められている計6回の補給ミッションの打ち上げすべてを、ヴァルカンが担うという。

ヴァルカンを選んだ理由について、シエラ・ネヴァダのFatih Ozmen CEOは「ドリームチェイサー計画における強力な協力関係があったこと、そしてアトラスVやデルタIVが、高い打ち上げ成功率やオンタイム打ち上げ率をもつなど、実績が豊富なこと」を挙げている。

「これにより、米国のスペースプレーンを米国のロケットで打ち上げ、最高のイノベーションと探検を実現します」(Ozmen氏)。

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    ドリームチェイサーを搭載したヴァルカン・ロケットの想像図 (C) SNC/ULA

ドリームチェイサーの歴史と今後

ドリームチェイサーの源流は、1960年代のソ連で開発されていた実験機「BOR」にまでさかのぼることができる。

1986年になり、米国航空宇宙局(NASA)において、このBORと、NASAなどがかねてより研究していた、胴体そのものが揚力を生む「リフティング・ボディ」機との融合が図られ、宇宙ステーションからの脱出艇「HL-20」の開発がおこなわれた。しかし、1990年に資金難により中止。以来、その存在は長らく忘れ去られていた。

2005年になり、スペールデヴ(SpaceDev)というベンチャー企業が、HL-20の研究成果や試験機などを受け継ぎ、ドリームチェイサーとしてよみがえることになった。その後2008年に、同社はシエラ・ネヴァダに買収され、現在に至っている。

このような経緯から、ドリームチェイサーはもともと有人宇宙船として開発されており、シエラ・ネヴァダも当初はISSへの宇宙飛行士の輸送用としてNASAに売り込んだ。一時は、NASAによる民間宇宙船の開発を支援する計画に選ばれ、資金提供を受けるなどして開発が進んだものの、最終的にNASAはドリームチェイサーを除外した(選ばれたのはスペースXのクルー・ドラゴンと、ボーイングのCST-100「スターライナー」)。

それを受け、シエラ・ネヴァダは無人の補給船版となるドリーム・チェイサー・カーゴ・システムを開発することを決定。その結果、2016年にNASAとのCRS-2契約締結に至った。

一方で開発はやや遅れており、たとえば2013年には、ヘリコプターを使った滑空試験飛行において着陸に失敗。その後も設計が二転三転するなどし、当初は2019年の打ち上げ予定だったが、現在では2021年までずれている。

なお、同社では有人版の開発も続けており、補給船版の実績や、今後の需要の変化などによっては、いずれ人を乗せて飛ぶ可能性もある。

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    2017年におこなわれたドリームチェイサーの滑空試験の様子 (C) SNC

出典

SNC Selects ULA for Dream Chaser Spacecraft Launches
SNC Selects ULA for Dream Chaser Spacecraft Launches
Dream Chaser Spacecraft - America's Spaceplane | Sierra Nevada Corporation
SNC DREAM CHASER SPACECRAFT 2019

著者プロフィール

鳥嶋真也(とりしま・しんや)
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。

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