【漢字トリビア】「呼」の成り立ち物語
「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「呼ぶ」。「呼吸」「呼応する」の「呼(コ)」です。
(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2019年8月17日(土)放送より)



「呼ぶ」という字は、「口」という字の右側に音を表す「乎(コ)」という字を書きます。
実はもともと「呼ぶ」という字は、「口」という字を書かずにこの「乎(コ)」だけを書いていました。
ちなみに口のない「乎(コ)」は、人名用漢字となっています。

この「乎(コ)」という字の訓読みは「乎(か・や・かな)」。
気持ちを強調する助詞として、漢文の文末に使われます。
疑問や反語、「ああ」という詠嘆や、語気の具合で自然に出てくる声や息を表しています。

その「乎(コ)」に「口」を添えた「呼ぶ」という字は、「息を吐く」という意味のほかに、相手に対する呼びかけ、「呼ぶ、叫ぶ」という意味をもつようになりました。

「鳴子板」は、高知県発祥の「よさこい祭り」で使われる小さな打楽器。
朱色のしゃもじ型の台に黒と黄色のバチがついているのが一般的です。
もとは棒状の木や竹筒、鈴などをつけた木の板が鳴子。
それを縄にぶら下げ、田畑の上にはりめぐらせて音を鳴らし、穀物を狙う野鳥を追い払う道具でした。

独自の解釈で漢字のなりたちをひもとく白川静博士は、「呼」の口へんをとった「乎(コ)」の形をこの「鳴子板」に見立て、
鳥を追うだけでなく、神を呼ぶときにも使ったとしています。
いにしえの人たちが呼びたいと願ったのは、田畑を潤し、命を育くむ神さまたち。
彼らの祈りを託した鳴子板の響きに呼応して、実りの秋がやってきます。

今日の漢字は「呼ぶ」、「呼吸」「呼応する」の「呼(コ)」。

もとは「口」という字の右側の「乎(コ)」という文字だけを使い、
語気の具合で自然に出てくる声や息を示しています。
そこから「息を吐く」「呼ぶ、叫ぶ」という意味をもつようになりました。
また、神様を呼ぶ、という行為の表れだという説もあります。

めまぐるしい現代社会を生きる私たちの呼吸は速くて浅く、様々な刺激や圧力によって、息を止めたり殺したり。
物騒な表現ではありますが、呼吸の乱れは心身の不調に直結するのです。
自律神経研究の第一人者、小林弘幸氏によれば、空を見上げて深呼吸するだけで、心身が安定するといいます。

細かいことは気にせず手足をゆるめて、深く息を吸い、ゆっくりと長く吐く。
気づけば、心は落ち着きを取り戻し、脳もすっきり、気持ちも前向きに。
呼吸とは、幸運の神さまを呼びこむことなのかもしれません。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……。
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献 
『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)
『新選漢和辞典 第八版』(小林信明/小学館)
『まんがでわかる自律神経の整え方』(小林弘幸/イースト・プレス)

8月24日(土)の放送では「疑」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。


<番組概要>
番組名:感じて、漢字の世界
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜8:20~8:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)
パーソナリティ:山根基世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/kanji/