健康面に不安がある4歳年上の夫と娘と、3人家族の46歳の会社員女性。かわいい一人娘が巣立つまでの費用と老後資金は大丈夫なのか……? 老後のことで娘に迷惑はかけたくないし……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◆一人娘に迷惑をかけずに暮らしたいが、老後資金は大丈夫……?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、健康面に不安がある年上の夫と娘と、3人家族の46歳の会社員女性。かわいい一人娘が巣立つまでの費用と老後資金は大丈夫なのか……? 老後のことで娘に迷惑はかけたくないし……。

ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

◇相談者
氷河期世代さん(仮名)
女性/会社員/46歳
関西/持ち家(一戸建て)

◇家族構成
夫(会社員・50歳)、長女(13歳/中学1年生)

◇相談内容  
一人娘を独立させるまでの費用と老後の生活費をどれぐらい用意しておいたらいいのか? 漠然と不安です。夫は健康面で不安があるため(3年前に手術)早期定年を希望しています。

子どもの教育費に分不相応にお金をかけている自覚があります。子どもは中学から私立ですが、学業特待生のため基本的に学費はかかりません(高校も成績次第で特待生の予定)。その代わり短期留学を4回予定しています。今年の学校関係費と1回分の留学費は支払い済み。大学は国公立を目指しています。

夫は65歳定年(60歳で早期定年希望)退職金は確定拠出年金のみ。合計額は今のところ不明。

私は、60歳定年(会社の存続が微妙)退職金は中退共のほか多少は出そうです。投資というほどではないですが、つみたてNISA2万円/月と外貨1000円/月。老後資金として積立保険が3万円/月(現在400万円程度)。学生時代と転職などで夫婦とも数年年金未納期間ありです。

夫の両親はすでに他界、私の両親は持ち家ローンなしで健在ですが相続などの予定はなく、国民年金のため介護費用面の心配があります。

それぞれ厚生年金なのですが、遺族年金などがどうなるのか? 支給されるのか?などの不安があります。娘に迷惑をかけないよう老後の身の振り方も検討せねばと思っています。

共働きで一人娘ということもあり、幼少期から保育料をはじめ各種教育費などに多額をかけて参りました。中学に入学したため、ほとんどのおけいこや塾をやめたことで教育関係費はずいぶん減って、昨年住宅ローンが終わったので、ようやく投資や貯金など老後を心配する余裕ができてきました。

年2~3回の国内旅行は、娘がついてきてくれなくなっても夫婦で出かけたいと思っています。

◇家計収支データ
相談者「氷河期世代」さんから寄せられた感想

◇家計収支データ補足
(1)収支の差額について
夫の給与振込口座をメインバンクとし、本人の手取りを全て入金。そこから毎月30万円を出金、各名目貯金に預け替えたり、各種費用に割り振りしている。残額はそのまま給与振込口座に残している。

各種公共料金はカード払い。通信費などもカードですべてこの口座から引き落とし。カードでの買い物とこれらの引き落としを含め月5~10万円ぐらい。

年末に全ての口座残高を確認し、メインバンクには200万円を残して残額をリフォーム費用と学費の口座に預け替えている。

月ごとの支出には記載していないが、ペットの飼育費用として年5万円計上し、年に1度出金して現金で管理している。病院代、ワクチン代、フード代等。

(2)住宅費について
住宅ローンは完済済みで、住居費は固定資産税を月割りした金額。築年数は15年。外壁と屋根と太陽光設置、給湯器取り替えなどの改修1回目は終わっている。

リフォームは、10年以内に水回り含む内装800万円程度を予定。その後外壁塗装をもう1度する予定。太陽光発電からの収入は年間10~12万円。

火災保険はローン契約時に2033年まで一括で払い済み。家財は3年契約。

(3)車両費について
車両費は保険とガソリン代の月割り。車は8年程度で250万円前後の新車に買い替え、75歳で免許返納予定です。自動車保険は3年契約。点検と次回車検費用はすでに支払い済み。

(4)加入保険について
[夫]
・生活習慣病保険(手術7万円、入院日額1万円※(生活習慣病のみ)その他7000円)=毎月の保険料3591円(終身)
・積立利率変動型保証期間自由設計保険(死亡400万円)=毎月の保険料8052円(終身)
・収入保障保険(10万円/月(60歳まで)または1000万円)=毎月の保険料0円 ※3年前の病気以降払込免除

※最低あと2年は見直すことができない。持病があっても今より良い保険があれば見直しを検討したい。

[本人]
・新終身医療保険(手術6万円、入院日額6000円、通院5000円)=毎月の保険料9690円(払込60才まで、期間は終身)
・終身保険(死亡1000万円)=毎月の保険料7060円(払込60才まで、期間終身)

※医療保険は術後5年を機に見直した。当分は見直す予定なし。終身保険は若い時の契約で、およそ340万円の支払いで1000万円の契約のため残している。

[娘]
・生命共済(こども1型)=毎月の保険料1000円 

(5)貯蓄の内訳について
大学費用一部325万円(定期預金0.01%)以外はすべて普通預金。入出金の都合上、夫の給与振込口座以外はほぼ妻の名義。給与振込口座でカードや公共料金の引き落としもまとめている。

ここへ記載のほか、各個人名義で普通預金があるが、あくまでも各自の独身時代からのものなので家庭の貯蓄とは切り離して管理している

(6)ボーナスについて
ボーナスの手取り額が確定したら家族会議をし、まず小遣いを決め、その後どの貯蓄にいくらずつ振り分けるか検討する。

(7)教育費について
中高一貫の私立。すでに英語はできるので、長期での留学希望はない。大学も自宅通学の予定。児童手当は、子どもの口座に入金。子どものお祝い・お年玉などと合わせ100万円程度貯まっている。

(8)家族の小遣いについて
夫3万3000円(昼食含む)、妻3万3000円(昼食・被服含む)、娘5000円(内3000円は貯蓄している)

(9)勤め先について
夫は会社員。確定拠出年金は216万2221円。妻の勤務先は零細企業なので、退職金額は前例により200万~1000万円と幅があり(年数によらない)不明。会社からの退職金以外に、中退共が60歳まで勤めたら300万円ほど出るらしい。

会社が存続したら、学費が終わる55歳で退職し、55歳から65歳までぐらいは自宅近くでパートをしようと考えている。あえて資格やキャリアなどは生かさず全く違う職種をと、医療事務の資格を取得してクリニックで働けたらと思い、現在資料を集めているところ。

(10)年金について
昨年届いたねんきん定期便によると、夫:287カ月年額116万4479万円。妻:281カ月年額92万2978円。夫婦とも受給開始年齢が68歳や70歳になるのを心配している。

(11)投資について
もともと、定年後受け取る年金までのつなぎ資金にと、知り合いのすすめで15年ほど前に契約。投資という感覚はなかった。

・夫名義/積立利率変動型生存補償保険1万5000円、払込55歳、期間60歳、206万4160円
・私名義/積立利率変動型生存補償保険1万5000円、払込55歳、期間65歳、204万8818円

つみたてNISA毎月2万円:日経225インデックスファンド(評価金額6万1856円)、S&P500インデックスファンド(評価金額9万5555円)
※限度額まであと1万3000円増やそうかと検討中。

米ドル積立毎月1000円:5999円(小遣いから私的に勉強として始めた。いずれ娘にさせるつもりでいる)

(12)家族について
両親は近くにいて築40年ほどの一戸建てに住んでいる。同じ都市に兄弟もいるため本格的な介護になったら相談する予定だが、母から葬式費用に500万円は用意していると聞いている。

夫は数年前に手術をし、2~3カ月に1度通院している。5年以内に再発したら次は難しいだろうと思っている。

◇FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:夫55歳まで毎年530万円強の貯蓄が可能。十分な老後資金です
アドバイス2:夫は今すぐ会社を辞めても、老後資金には困りません
アドバイス3:つみたてNISAは日経平均インデックスをやめ、全額をS&P500に投資してみては?

◆アドバイス1:夫55歳まで毎年530万円強の貯蓄が可能。十分な老後資金です
夫に健康面の不安があり、老後資金が心配とのことですね。しかし、就職氷河期さんはすでに十分な老後資金が確保できていますから大丈夫です。

まずこれから貯まっていくお金を計算してみましょう。

月々の収入と支出の差は34万9000円。34万円×12カ月=408万円。年間ボーナスの半分を貯蓄したとして125万円。合計すると1年間で533万円も貯蓄できます。夫が55歳になるまであと5年間働いたとして、2665万円貯まる計算です。

これに今すでにある貯蓄1200万円、投資427万円を足せば、夫の55歳時点で4292万円あることになります。

次に、夫が55歳になるまでに発生する費用をまとめてみましょう。250万円の車の買い替えが、今後おそらく3回で合計750万円。

子どもの教育費は、中高はあまりかからず、大学は国公立を目指しているということですから、総額で500万円を見積もります。それとリフォーム費用の800万円を合わせて合計2050万円。

先ほど計算した老後資金の4292万円から2050万円を引くと、2242万円が老後資金として残りますね。

その他に、夫の確定拠出年金があと5年後には300万円ほどになっているとします。妻が退職金として中退共から300万円、会社から400万円をそれぞれ受け取るとすると1000万円。これらを上乗せすると老後資金は3242万円になります。

◆アドバイス2:夫は今すぐ会社を辞めても、老後資金には困りません
夫に健康面の不安があるとのお話ですね。60歳あるいは65歳までがんばらずに、今すぐに会社を辞めても経済的には大丈夫だと思います。

仮に夫が55歳で会社を辞めて、アルバイトをすることを考えてみましょう。夫がアルバイトで年間100万円、妻が今のまま年間400万円の収入とすると、夫婦二人で年間500万円の収入です。

今の生活費は年間で253万円。旅行に行く費用を足して年間300万円使うとしても、年間収支が200万円のプラスです。氷河期世代さんが55歳で退職するまでの4年間で、さらに800万円の貯蓄が上乗せされます。

妻も55歳で会社を辞めてパートをするとして、夫とふたりで年間200万円程度の収入を得られるとします。年間支出が300万円ですから、家計収支が年間100万円のマイナスになります。つまり氷河期世代さんが55歳、夫が59歳の時点から、夫が65歳で年金をもらうまでの6年間で、600万円の持ち出しです。

一方で、55歳払込の生存保障保険がありますから、ここに410万円の収入がプラスされます。それを考えると65歳までの間に200万円ほどしか減らない計算になります。

年金については、今現在210万円とのことですが、最終的に230万円程度もらえるはずです。

年間支出が300万円ですから、年金収入だけと比べると年間70万円のマイナス。これだけある貯蓄から毎年70万円マイナスされても、20年間で1400万円、30年間で2100万円。3000万円以上ある貯蓄を考えれば、余裕で足りてしまいます。

あくまでも仮の話ですが、夫に万が一のことがあっても経済的には大丈夫です。

氷河期世代さんが今のペースで働き続ければ、収入400万円−支出300万円で年間100万円くらいの貯蓄ができるでしょう。60歳になるまで貯蓄を取り崩すことなく、14年間で1400万円の貯蓄ができます。今ある貯蓄・投資と足して3000万円。ご自身の退職金が700万円。

支出面では、教育費とリフォーム代の1300万円、車の購入費はひとりになったら少し小さな車にするとして、合わせて1700万円~1800万円くらい。収支は2000万円ほどのプラスになります。夫が加入している保険もありますから、さらに大丈夫といえるでしょう。

先ほどの計算ではあと5年で会社を退職と考えましたが、しばらくはアルバイトをしてくれると考えれば、いますぐ辞めても大丈夫。健康面を優先して働き方をシフトダウンしても、これまでお話ししたとおり老後資金には全く困りません。

◆アドバイス3:つみたてNISAは日経平均インデックスをやめ、全額をS&P500に投資してみては?
始めたばかりのつみたてNISAは日経平均株価のインデックスファンドに投資しているとのことですが、これは全額S&P500(米国株の日経平均のようなもの)に投資することをおすすめします。

日本の株に投資するということは、日本の景気に投資するということです。私たちは日本で働き、円で生活していますから、景気がよくなればお給料が上がります。日本の景気に何かあった時の、日本がダメになった時のリスクヘッジとして投資するのであれば、全額米国株でいいと思います。

特に氷河期世代さんの家計では、これだけたくさんの資産を日本での預貯金で持っているのですから、つみたてNISAくらいはすべて米国株に投資しても構いません。勉強のために外貨投資も始めたとのことですから、外貨投資にあわせて米国株をウォッチしてみてはいかがでしょう。

◆相談者「氷河期世代」さんから寄せられた感想
ありがとうございます。不遇の世代なので、ずっと不安が付きまとってきていましたが、今回早期退職しても何とかなりそうだということがわかり、安心いたしました。

貯蓄があるといっても、学費や家のメンテナンスで消えていくものなので、老後どうなるんだろう? 年金の支給年齢がさらに上がったらやっていけるのだろうか?と思っていたのですが。娘に迷惑をかけず、両親の面倒も何とか見て、自分たちの老後も平穏に暮らせるように、いましばらくがんばろうと思います。

早速、日経平均をやめ、全額をS&P500に変更しに行ってきます。

教えてくれたのは……深野 康彦さん

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

取材・文:長島美樹

文=あるじゃん 編集部