東証の適時開示情報を基に経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)について、ストライク(M&A Online)が集計したところ、2019年6月のIT・ソフトウェア業界のM&Aは前年同期より2件多い6件だった。

15年(12件)から3年連続で減少していたが、6月としては前年同月比で4年ぶりに増加した。ただ買収額を公表した企業が少なかったため取引金額の合計は2800万円にとどまり、6月としては2番目に少なかった。同業界では、後継者やエンジニア不足を背景とした再編やM&Aの動きが今後も進みそうだ。

  • IT・ソフトウェア業界の2019年6月のM&A(件数)

異業種企業による買収が2件

6月のM&Aで取引金額を公表したのはインターネット関連のコンテンツ事業を手掛けるfonfunだけだった。受託ソフトウェア開発子会社のアドバンティブ(熊本県益城町)の全株式を、ITコンサルティング会社のAHD(熊本市)に譲渡することを決めた。譲渡価額は2800万円。

fonfunは携帯電話・スマートフォン向けのコンテンツ提供を事業の柱とする。2015年にアドバンティブを設立し、 ソフトウエアの受託開発に乗り出したが、アドバンティブの取締役らが5月に設立したAHDからアドバンティブの株式取得の打診があったため、譲渡を決めた。

6月のM&Aの6件のうち、2件が異業種企業(サービス、電気機器)による買収だった。アジャイルメディア・ネットワークによるWebサービスのクリエ・ジャパン(東京都渋谷区)の子会社化と、アクセルによるソフト開発のbitcraft(東京都渋谷区)の子会社化があった。

アジャイルメディア・ネットワークは企業やブランドのファンの育成・活性化を支援する事業を手がけており、Webサービスのクリエ・ジャパンの全株式を取得し子会社化することを決めた。クリエ・ジャパンの技術を取り込むことで、業容拡大につなげる。

クリエ・ジャパンは購買情報、属性情報、契約内容、口コミ情報などのユーザーデータに基づきサーバー上で動画を組み合わせ、一人ひとりに合わせたマーケティングを実現する「PRISM」を提供している。

もう1社は描画表示、音源用LSIのファブレスメーカーのアクセル。ソフトウェア開発のbitcraftの全株式を取得し子会社化することを決めた。bitcraftは構成メンバー全員が日本語を母国語としない人材で構成されており、高いソフトウェア開発力を持つという。アクセルの子会社でミドルウェアやAI(人工知能)などを手がけるax(東京都千代田区)がbitcraftを傘下に収め、axの成長を加速させる。

このほか、ミクシィによるスマホフォトプリント事業のスフィダンテ(東京都渋谷区)の子会社化、イーエムシステムズによる電子カルテシステム販売のポップ・クリエイション(福岡県筑紫野市)の子会社化、INESTのよる休眠中の情報処理サービス会社のEPARKマネーライフ(東京都豊島区)のトリプルヘッド(東京都港区)への譲渡があった。