「JUST LIKE THIS 2019」の様子。(撮影:平野タカシ)

SPYAIRの野外ワンマンライブ「JUST LIKE THIS 2019」が、昨日7月27日に山梨・富士急ハイランドコニファーフォレストにて行われた。

富士急ハイランドでの開催も5回目を迎え、すっかり夏の恒例ライブとして定着した「JUST LIKE THIS」。昨年に続き台風の影響も心配されたが、今年はときに雲間から日差しが差し込む天候に恵まれた。雨が一時的に上がった頃、豪雨の中で行われた「JUST LIKE THIS 2018」の映像がスクリーンに流れ始める。続いてスポーツをテーマにした今年の「JUST LIKE THIS」を盛り上げるべく、チアリーダーやフリースタイルバスケットボールのプレイヤーたちがステージへ。さらにメンバーがスポーツウェアふうの衣装で現れ、最後にトーチを持ち、オレンジのマントを肩にかけたIKE(Vo)がメインステージにせり上がりで登場。そして特効の爆音と共に、オープニングナンバーの「B-THE ONE」が始まった。曲のクライマックスではIKEがセンターステージのリフターで上昇ながらトーチを高く掲げた。

MOMIKEN(B)の弾く強烈なビートが観客をジャンプさせる「0 GAME」、UZ(G, Programming)のドライブ感たっぷりのギターが炸裂する「OVER」と攻撃的なロックチューンを届けたのち、IKEが観客に挨拶。彼は「(晴れるまで)もうちょっとですかね?」と空を見上げ、「皆さん楽しむ準備はできてますか?」と呼びかけ、観客を鼓舞するように「アイム・ア・ビリーバー」を情熱的に歌い上げた。続く「COME IN SUMMER」では、KENTA(Dr)が叩く軽やかなリズムに乗ってパレオ姿のセクシーな女性ダンサーたちが踊り、会場に漂う夏の空気を強めていく。さらに「C!RCUS」では色とりどりの巨大バルーンが客席エリアを飛び交い、「JUST LIKE THIS」ならではのド派手な演出の数々が観客を楽しませた。さらにIKEの「まだ全然声が出てない気がしますけど? Are you ready?」というシャウトを機に、ヘビーなギターリフが高らかに響き「THIS IS HOW WE ROCK」へ。メンバーはそのまま「イマジネーション」「スクランブル」をエネルギッシュにパフォーマンスし、大きなシンガロングを巻き起こした。

中盤のブロックでは「JUST LIKE THIS」恒例のアコースティックコーナーが設けられ、この日はKENTAが最近習っているというピアノの腕前を初披露することに。ステージに運び込まれたシンセサイザーを前に「俺、今、35年間のうちで一番緊張してる。緊張しすぎて『スクランブル』のとき手が震えてた」と告白すると、MOMIKENが「みんなが感動した『スクランブル』を返して!」とツッコミを入れ、UZは「めちゃくちゃいいピアノを弾いてくれると思うので」とKENTAのハードルを上げる。そして始まったのは「サクラミツツキ」。KENTAの弾く、ときにダイナミックでときに繊細な鍵盤の音色が情感たっぷりの楽曲を彩った。

KENTAの初挑戦が無事終わったあと、4人はセンターステージに移動。KENTAが口火を切る形で「ファンの方の中には『JUST LIKE THIS』が終わったらライブなくね?と思ってる人がいると思います」と今後のバンドについて語り出した。彼は「最初に言っておきたいのは……この『JUST LIKE THIS』は来年もやります」「来年僕らデビュー10周年、結成15周年でメモリアルな1年なんです。ずっと走り続けてきた中でインプットが足りないなと思って。インプット期間をいただきたいなと思い、このあと、ライブを入れていません。でも個人の活動はやっておりますので、修行のような感じでデビュー10周年、結成15周年を迎えたいなと思ってます。解散するとか辞めるとかはないです。1年くらい外には出ませんけど、自分たちの力を付けていきたいなと思っています」と今後のSPYAIRの活動を明かした。これを受けてUZは改めてバンドとして目指している場所が東京ドームであることを宣言し、「メモリアルな年から、もう一度力を付けて“新世界”に行こうと思ってます。SPYAIRのことを思って常に活動していきます」と真摯に語った。IKEも「技術以上に人間力を磨かないとSPYAIRをずっと続けていくことはできないと思うので」と語り、「JUST LIKE THIS」などを含めファンとのつながりを大切にしていきたいと誓った。観客がメンバーの言葉に聞き入る中、最後に話を向けられたMOMIKENは楽しい空気を呼び戻すように「最高だー! 富士急!」と叫んでトークを締めた。そして4人は“SPYAIRのアコースティックカバーユニット”であるキャンプファイヤーとして、SPYAIRが過去にライブでほとんど演奏していないというレア曲「MOVIN' ON」をセッション。力強く息の合ったアンサンブルで観客を惹き付けた。

チアリーダーやブレイクダンサーたちによるパフォーマンスをフィーチャーしたハーフタイムショーを挟み、「PRIDE OF LIONS」で後半戦へ。ハードロック調なアプローチを聴かせる「Just Do It」「We'll Never Die」や、KENTAがダンサブルな四つ打ちのビートを刻む「Brand New Days」が会場を激しく揺らした。そして、暗くなり始めた頃、雨が降り出しヒヤリとした空気が漂う。そんなシチュエーションの中で披露された「感情ディスコード」では、UZとMOMIKENが花道を歩きながらプレイし、IKEが濡れながらサブステージで力を振り絞るように絶唱して観客を圧倒した。その後、メインステージに戻ったIKEは、UZがつま弾くギターをバックに、「みんなとライブができる限り、ライブをしていきたいと思ってます。幾度となくこのステージのプレッシャーが嫌で嫌で何度も降りようとしました。でも、歌わない自分がみっともなくて、歌うしかないんだなと思って」と葛藤を吐露。そして、苦悩の日々を振り返り、「それでも約束します。ステージに這いつくばってでも立ちます」と口にしてから優しい声で「Little Summer」を届けた。

周りへの感謝の思いを込めた歌詞が印象的に響いた「JUST LIKE THIS」を経て、IKE、UZ、MOMIKENがトロッコに乗り込む。背中合わせになった3人は「I want a place」と「サムライハート(Some Like It Hot!!)」を連続でパフォーマンス。メインステージではKENTAがパワフルなドラムで3人を支えつつ1万5000人の観客を揺らした。その後、UZの柔らかなギターの音色に乗せて再びIKEが口を開いた。彼は「最高の1日です。すごく忘れっぽいんだけど、今日は絶対忘れないね。一生懸命生きてよかった。バンドやってきてよかったです。生まれてきてよかったです」と感慨深そうに語り、「たくさんの人のおかげでこのステージができあがりました。メンバーのおかげでSPYAIRの歌を歌えています。晴れるって信じてたけど……来年こそ一緒に晴らしましょう! この大切なバンド、僕の大好きなファミリーをこれからも守って、未来につなげていこうと思います」とファンと約束を交わした。

1万5000人の大合唱とクラップが温かな空気を作り出した「Goldship」で本編は終了。観客の美しいコーラスに導かれるようにステージに戻ってきた4人は、「まだ終われない!」とばかりに「現状ディストラクション」を爆音で叩き込んだ。最後の曲が始まる前に、スクリーンで2020年夏の「JUST LIKE THIS 2020」、秋冬の全国ホールツアー、2021年春のZeppツアーの開催がアナウンスされ、驚きと歓喜の声が会場にこだました。ファンを安心させるニュースの数々に会場が沸く中、IKEは「10周年でまた会おうぜ!」と叫ぶ。その言葉を合図に「SINGING」がスタート。クライマックスではこの日一番のファンの歌声がSPYAIRの4人と富士急を包み込む。そして「JUST LIKE THIS」恒例の花火が盛大に上がり、富士急で5回目の「JUST LIKE THIS」はフィナーレへ。最後に1人でステージに残ったIKEはオフマイクで「どうもありがとう!」と叫んでステージをあとにした。

なおライブでアナウンスされた通り、SPYAIRは“インプット期間”を経て2020年夏の「JUST LIKE THIS」から再び動き出す。

SPYAIR「JUST LIKE THIS 2019」2019年7月27日 富士急ハイランドコニファーフォレスト セットリスト

01. B-THE ONE
02. 0 GAME
03. OVER
04. アイム・ア・ビリーバー
05. COME IN SUMMER
06. C!RCUS
07. THIS IS HOW WE ROCK
08. イマジネーション
09. スクランブル
10. サクラミツツキ(Acoustic Ver.)
11. MOVIN' ON(Acoustic Ver.)
12. PRIDE OF LIONS
13. Just Do It
14. We'll Never Die
15. Brand New Days
16. ROCKIN' OUT
17. 感情ディスコード
18. Little Summer
19. JUST LIKE THIS
20. I want a place
21. サムライハート(Some Like It Hot!!)
22. Goldship
<アンコール>
23. 現状ディストラクション
24. SINGING