「マイナビオールスターゲーム2019」の生中継(テレビ朝日)で解説を担当した元広島の前田智徳氏にインタビュー。引退後、現役時代の寡黙なイメージからは想像もできなかった陽気な姿をテレビ番組などで見せているが、その素顔を探ってみた。また、今季のプロ野球をどう見ているのか、“カープ女子”も増加ている今の広島ファンの印象なども聞いてみた。

  • 前田智徳

    野球解説者として活躍している元広島の前田智徳氏 撮影:辰根東醐

――まず、解説者としていつも心がけていることを教えてください。

野球はすぐ展開が変わるので手短に。サッと受け答えをしないといけないと思っています。

――その一瞬に言葉を選んで対応しないといけないわけですよね。

そうですね。だからある程度予想して。このあとどういうパターンが多いか展開を予想してやるようにしていますが、急に変わりますから難しいですね。

――オールスターは“祭り”というイメージが強いですが、解説者としても心境は違いますか?

そうですね。選手も勝ち負けのプレッシャーなく臨めますが、我々も普段の解説とは緊張感が違います。

――現役のときは“侍”とも呼ばれ寡黙なイメージでしたが、解説者になられてからは饒舌な方なんだなと印象が変わりました。

こんなにしゃべるのが疲れるとは思いませんでしたね(笑)

  • 前田智徳

――実はもともとおしゃべりだったという話も聞きますが、どうなんでしょう?

緊張するとしゃべるんですけど、本当は横暴ですよ。九州男児なんで、「お前黙っとれー!」「静かにしろ!」って(笑)。

――そうおっしゃいながら、表情はすごく優しそうな笑顔ですし、到着されたときからずっとお話をされているような(笑)

言い訳をさせてもらうと、現役時代はメリハリをつけないといけないなと。集中しないといけないですからね。

――集中モードではないときは選手たちとどんな感じでしたか?

後輩をいじっていましたね。若いときは先輩が怖かったので、先輩には会わないようにしていました(笑)。

――引退後はいろいろな新しい面を見せられていますが、特に広島・宮島の「宮島清盛祭り」で平清盛役を務められたときは驚きました!

けっこうお気に入りだったんですけど(笑)。十何キロの鎧で3時間、次の日も両肩の筋肉痛がひどかったんですが、自分的には仕上がっていたかなと(笑)。一生に一度のオファーだと思って。うれしかったですね。あの格好をして宮島の商店街を練り歩けるというのはいいですよ! 「いざ出立!」と、腹から声を出して叫びました。

  • 前田智徳

――お似合いでした! ここでガラリと話が変わりますが、今シーズンのペナントレースをどう見ていらっしゃいますか?

2ケタ連敗するチームがこれだけ多いのは珍しいなと。勝負の世界は苦しいなと感じます。歯車が狂うと勝ちゲームを落としていく、信じられないような負けが起きるので、本当に怖いですね。あと、交流戦を見てもやはりパ・リーグが強いなと。セ・リーグではジャイアンツがここまで来るとは思わず、もっと接戦で進むと思っていました。広島が今シーズンは最初から自滅をしていましたね。連勝もしましたけど。でも4連覇っていうのは…3連覇したことも奇跡に近いですから、そこに臨んでいくということで、いろんなプレッシャーが当然あると思います。

――やはり丸(佳浩)選手の移籍も大きいように感じます。

丸もそうですけど、ジャイアンツは出場した若手がそれぞれの持ち場でいい動きをしているので、その差は大きいですよね。そこがプラスになるのかマイナスになるのかっていうので全然違うと思います。そういうときに結果が出るチーム、代わりの選手が頑張れるというのは強いです。

――広島の今後の鍵は?

今までが“神ってる”を継続している状態でしたから、みなさんのハードルも上がっていますし、苦しいところがあるんですよ。だからまず、ここで一度リセットを。僕も現役のときはそうでしたが、オールスター後は気持ちが入れ替わるんです。そして、本来、力がある選手がほとんど調子悪いので、少しでも調子を上げていってもらいたいです。それがすべてチームにとってプラスになっていきますから。特に攻撃陣ですね。

――ともに現役時代戦っていた緒方孝市監督の5年目。監督姿をどうご覧になっていますか?

僕はまだまだあきらめていないと思います。今シーズンは波があるんですけど、ということはまたもう一度連勝という可能性がある。ただ厳しい戦いになると思います。もうミスができないので。今シーズンはダイレクトにミスが勝敗に影響しているので、イージーなミスをすると厳しくなっていくと思います。

  • 前田智徳

――この5年くらいで“カープ女子”という言葉が定着し、女性ファンが増えました。雰囲気もすごく変わりましたが、この変化をどう感じていますか?

確かにマツダスタジアムも女性ファンの方が多いですよね。球場自体が昔とは違いますし、子供をつれていって家族で楽しむ場所としても最高だと思います。野球を楽しみながら子供も遊ばせられるという場所がマツダスタジアム。いまはマツダスタジアムが毎回満員に。あれによって7回以降の力を発揮させてくれていたと思います。追い風を…独特の逆転の雰囲気を作ってくれていたので、後半戦はそれに期待ですよね。もうちょっと早く、私が若いときもそういうのがあれば(笑)

―― 2018年は観客動員数がセパともに過去最高を記録しましたが、その一方で野球人口減少という問題も。前田さんは今の野球界における課題をどう考えていますか?

野球人口の減少は数字で見て感じるくらいで、あんまり直接的には感じないんですよね。自分の息子が少年野球をやっていたときも、本当に減っているのかなっていうくらい野球をやっている子が多くて。それでも少なくなっているということですから、なんとか野球界に興味を持ってもらえるようにしたいですね。名球会を含めて、野球界でそういう活動もやっているんですけど、まだまだやっていかなくてはいけないなと思っています。

――メジャーでは、以前お話を伺ったときに注目選手として挙げられていた大谷翔平選手が好調です。手術の影響で今季は打者専念で出場し、前半戦で本塁打14本を記録しましたね。

ある意味、彼のキャリアの中で一番、打者に専念していますよね。吸収力が早く、それでパワーと技術がありますから、もっと打つんじゃないですか。楽しみですね。ホームラン30本、期待しましょう!

――最後に今後の目標や夢を教えてください。

できたらゴルフの「マイナビABC」で一度プレイしてみたいなって(笑)。ま、それは置いといて、今後の目標はオリンピックですね。オリンピックで野球に携わっていきたい。稲葉(篤紀)さんのジャパンをしっかり陰ながら応援して、もちろん取材もしながら、その瞬間に立ち会えたらと思います。

  • 前田智徳
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