東京医科歯科大学(TMDU)、金沢工業大学、リコーの研究グループは7月24日、非侵襲(身体を傷つけることなく)で生体の神経活動を可視化する脊髄磁界計測システム「脊磁計」を用いて、これまでの頚部に加えて、従来、計測が困難とされてきた腰部についての神経磁界計測に成功したことを発表した。

同成果は、東京医科歯科大学の川端茂徳 特任教授、金沢工業大学の足立善昭 教授らによるもの。詳細は国際臨床神経生理学会連合(IFCN)の機関誌「Clinical Neurophysiology」に掲載された

脊髄などの神経疾患においては、MRIによる画像診断に加えて、電気生理学的機能診断が必要なことが多くあるが、従来は脊髄をはじめ骨や軟部組織に囲まれた神経の電気活動を体表から測定することが難しく、障害部位の特定が困難、という課題があった。

今回研究グループは、先行して開発した脊髄の神経活動によって生じるわずかな磁界を計測し、身体を傷つけることなく脊髄の神経活動を可視化するシステム「脊磁計」について、新たなハードウェア、ソフトウェア、診断手法を開発することで、従来の頚部に加え、腰部ならびに手掌部や腕神経叢部といった末梢神経の神経磁界計測に成功したという。

  • 神経活動

    頚部の神経活動を可視化した様子(左)と腰部の神経活動を可視化した様子(右) (提供:リコー)

  • 神経活動

    左が手掌の末梢神経の活動の様子、右が腕神経叢の抹消神経活動の様子 (提供:リコー)

具体的には、脊髄の活動により生じる磁界の強さが地磁気の10億分の1、神経活動の伝播は最大秒速80m程度であることを踏まえ、金沢工業大学が高感度かつ高時間分解能のSQUID(Superconducting QUantum Interference Device:超伝導量子干渉素子)センサを開発し、微弱な信号であっても数十μs単位で計測することを可能とし、リコーがそうしてセンシングされた信号を処理し、脊髄の活動の情報と形態画像とを重ね合わせて表示するシステムを構築した。また、東京医科歯科大学は、脊磁計を用いた脊髄神経機能診断法の確立に向けた研究を担当したという。

なお、研究グループでは、MRIに加え、脊髄の機能を可視化することにより、脊髄疾患の障害部位の特定や定量的な評価などへの活用が期待されるとしており、脊磁計の実用化に向けて大きく前進した成果と説明している。