乳がんはここ数十年で急速に増加しており、日本人女性の11人に1人がかかる病気といわれています。

◆日本人女性の11人に1人(※1)が罹患する乳がん
ここ数十年で日本人女性に急速に増加している乳がん。私の周りにも何人もいらっしゃいますし、とても他人ごとではありません。若い女性の方にも、ぜひ身近な病気である乳がんについて、理解を深めていただければと思います。

◆早期がんと進行がんの違い
最近「進行性乳がん」という言葉をよく聞きますが、これはどういう意味でしょうか。

消化器のがん、例えば胃がんなどでは「早期がん」と「進行がん」ははっきりとした医学的な定義があります。簡単にいえば、胃の表面である粘膜下層までにとどまっているものは「早期がん」。胃の深い部分である筋層まで達しているものを「進行がん」と呼びます。

ただ、一般にはこの言葉はもうちょっと漠然とした意味で使われているようです。

例えばコトバンクによれば、『がんは一般に、早期(そうき)がん、進行(しんこう)がん、末期(まっき)がんの3段階に大別されます』となっています。なんとなく早期→進行→末期のイメージでしょうか。

しかしイメージではかえってわかりにくくなったり、誤解を招くことも多いので、医療関係者は通常がんの進行具合を「病期(ステージ)」という分類で表します。

◆乳がんの病期・ステージ分類
がんは、大きさ、脇の下のリンパ節への転移の有無、離れた他の臓器への転移の有無によってステージが決まります。がんのステージは数が大きいほど進行していることを意味します。下記、著者が大まかにまとめたものです。

乳がんでは、一般的にステージ0~I期と、一応II期までを早期乳がん、さらにステージIII期のことを局所進行乳がん(locally advanced breast cancer)といいます。

英語では進行性乳がんはadvanced breast cancerの頭文字を取って、ABCとも略されます。advanced breast cancerはがんが乳房以外のからだの他の部分に広がっていることを指します(ただし、脇の下のリンパ節だけへの転移は含まない)※2。ですので、ステージでいうとIII~IVになります。

■ステージ0期
・非浸潤がん。がん細胞がごく小さい一部にとどまる。周りに浸潤せず、 しこりも触れない極めて早期のがん

■ステージI期
・しこりが小さく(2cm以下)で、脇の下のリンパ節に転移していない

■ステージII期
・しこりが小さくても(2cm以下)でも脇の下のリンパ節に転移がある
・しこりが中くらい(2~5cm)(脇の下のリンパ節への転移はあることもないことも)
・しこりが大きく(5cm以上)で脇の下のリンパ節に転移がない

■ステージIII期
・しこりが大きく(5cm以上)で脇の下のリンパ節に転移がある
・しこりが大きくなくても(5cm以下)脇の下のリンパ節にたくさん転移している、それより広範囲、鎖骨や胸骨のリンパ節にまで転移している
・皮膚にしこりが飛び出したり、崩れたりむくんでいたりする

■ステージIV期
・がんが他の臓器(骨、肺、 肝臓、脳)まで転移している乳がんの治療には手術、放射線治療、薬物療法があり、病状に応じて組み合わせて行います。また、状態によっては手術を行わないこともあります。

◆乳がんになりやすい要因……限界はあるものの検診も重要
乳がんが増加している理由は女性の社会進出などいろいろといわれています。乳がんになりやすい主な原因として挙げられるのが、年齢・遺伝・エストロゲン・肥満の影響です。

また、乳がん検診でも確実に全ての乳がんが早期で発見できるとは限りません。検診には限界があり、万能ではありません。それでもやはり早期発見、早期治療の可能性を少しでも増やせるよう、検診を受けることは重要です。

誰もがかかる可能性のある乳がんについて正しく知り、定期的にセルフチェックをしたり乳がん検診を受けたりするようにしましょう。

※1……国立がん研究センターがん対策情報センター がんに罹患する確率~累積罹患リスク(2014年データに基づく)
※2……cancer research UK(英語サイト)

■参考文献
日本乳癌学会編「臨床・病理 乳癌取扱い規約」(金原出版)
日本乳癌学会「乳がん診療ガイドライン」

文=山田 恵子(医師)