こんにちは!日本科学未来館 科学コミュニケーターの梶井です。

以前の記事では、7月と8月に開催する夏休み特別イベント「オープンラボ夏休みスペシャル!」の概要を紹介しました。
(記事はこちら → https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20190702post-865.html)

普段入ることのできない未来館「研究エリア」という場所で、本物の研究現場や先端研究に触れ、研究者とお話しするという普段なかなか体験できないことができるこのイベント。 本記事では、7月にどういったことを体験できるのか、イベントを実施する研究プロジェクトはどういう研究室なのかをお伝えします!

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※ 定員などの内容詳細は以下のイベントページからご確認ください。
https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1907261024447.html

7月は、(1)ツアー(2)実証実験の2本立て!

現在、研究プロジェクトと担当の科学コミュニケーターが内容を詰めている真っ最中です。せっかくなので、担当科学コミュニケーターに見どころをインタビューしてみようと思います。

担当者のみなさん、よろしくお願いします!


(1) 研究者の話を聞いて、解説付きのツアーに参加する!

梶井:
7月のツアーでは、「心理学」や「認知科学」を専門にした2つの研究プロジェクトを横断しながら、人間の「心」について研究者と考えを深めることができるらしいね。まず、それぞれのプロジェクトがどういった研究をしているのか教えてもらえる?

臼田 多感覚コミュニケーションプロジェクト(田中研)担当:
コミュニケーションをしている相手の気持ちを上手く読み取るために、私たちは視覚や聴覚など多くの感覚を活用しています。例えば、相手が怒っているか喜んでいるかわからない時、相手のどこに注目して判断しますか? 私は、梶井さんが相手のときは声で判断することが多いです。そういった判断形成に文化差や年齢の発達といった個人の経験がどう影響を与えるのかを田中研では調べています。

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写真: 田中研で実施している実験の様子。相手の感情を上手に読み取るためには?


深津 潜在情報プロジェクト(渡邊研)担当:
私たちの日々の行動は、「無意識」からの影響を大きく受けていると考えられています。例えば、スポーツで接戦になったり、誰かに応援されたりすると、ふだん以上の力が湧いてくることがありますよね。よく考えるととても不思議です。周りの環境に対して、私たちの無意識(潜在意識)がどのように反応しているのかを探っているのが、潜在情報プロジェクトなのです!

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写真: センサーを押すふたりの間にはたらく「無意識」を探る実験の様子。


梶井:
田中研は表情や声など私たちが比較的意識しやすいものを研究しているけれど、渡邊研は私たちが意識できない「無意識」を中心に研究しているんだね。「心」といっても研究内容はいろいろあるから、2つのプロジェクトを1度の機会で見られるのは、嬉しいね。「心」に対する考え方を広げられる良い機会! その他に参加者はどういう発見ができるかな?例えば、2人は研究者と話してどんな新しい発見があった?

臼田:
研究過程を知ることができて、心理学に対する印象が変わりました。1人分のデータだとわからないことが、何人ものデータになることで、人間としての傾向が見えてくるのが面白いなあと。あと、言葉や文化の違いで起こる行き違いが少なくなるような未来をつくることができると感じた一方で、「自分の気持ちがどこまで相手にわかるようになってしまうんだろう......」ということも気になるようになりました。あまり嬉しくないプレゼントをもらったときに「ありがとー!」と喜ばなくちゃいけないこと、ありますよね。そういうときもバレるようになっちゃうのかなあ(笑)

深津:
「無意識」という気付きにくいものだからこそ、意識的に注目することでまだまだわかることが多くあるのだなあということを知りました。そういった研究が進むことで、自分の無意識の世界に意識的に向き合うことができる気がしています。自分の中の見えない世界が見えるようになるみたい。すごくないですか?!

梶井:
面白い(笑) 研究者と話すとふだんはなかなか気づかない発見が結構あるよね。同じように、研究者にも参加者と話すことで得られる発見はあるはず。最後に、今回のツアーの見どころを一言で!

臼田・深津:
ツアーの中で、ミニ実験や研究者との対話を通して、人の心の不思議や、心理学がどういった学問なのかを感じることができるツアーです。今まで気にしなかった心の不思議に触れられること間違いなしです! 「心」の科学が発展した未来はどんな世界になっているのか、それを感じ取ってください!

梶井:
二人とも準備で忙しいところありがとう。ご参加をご希望される方は以下の2点にご注意ください!

・ツアーの前に15分間の簡単な研究紹介トークがあります。こちらはどなたでもご参加可能です。
・ツアーは1日2回実施、定員は各回20人となっています。トーク開始10分前に整理券を配布します。


(2) 実証実験に参加する!

梶井:
イベント当日、3階の常設展フロアでは、僕たちの近くを自走するロボットを見ながら、研究者と話すことができるらしいね。これは一体、どういった研究なの?

伊達 自律移動ロボットの生活空間センシングプロジェクト(持丸研)担当:
ショッピングモールや駅のホームなど、人混みのなかでロボットが活躍するようになる──そんな未来には、自分で周りの状況(周囲の人や障害物の位置、音など)を認識して周りに合わせて動く「自律移動ロボット」が必要です。持丸研では、2016年から未来館の3階常設展示フロアで開発中の自律移動ロボットを走行させる実証実験を行っています。未来館での実験を基にした論文もすでに数本出ています。

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写真: 持丸研の実証実験中の様子。青く光っている自走ロボットの横には常に研究者がいます。


梶井:
渋谷のスクランブル交差点をスイスイと動くロボットってできるのかなあ......ところで、「ロボットの周りにいる実際の人間というデータ」として僕たちの存在が研究にとって重要なのはわかるけど、なんでデータ集めるだけで終わらずに、研究者ではない人たちと話しながら研究を進めているの?

伊達:
持丸研の研究者は、データと一緒に皆さんの意見も欲しがっています。将来、この技術を使うのは研究者ではない人が大多数なはずなので、未来館のような場で多様な人と話し合うことで、研究のアイデアにつながる意見をもらうことができるのです。例えば、「鉛筆の音やオモチャの音を聞き分けて、子どもが宿題をサボっていないかを見張ってくれるロボットが欲しい」という意見がありました。研究者にとってこの意見は、生活の中に埋もれているささいな音を拾うことの大切さに気付くきっかけになったようです。

梶井:
僕たちのような非研究者が積極的に関わりながら、研究者とともに最先端研究を作っていくということの面白さは、僕も未来館で働いてから知ったなあ。最後に、伊達さんが持丸研の研究たちと話して新しく気付いたところや、実証実験の見どころを一言で!

伊達:
「自分の研究が完成した時、きっとこんな未来になるんだろうなあ」というビジョンを研究者はもっていて、話しているとその景色を垣間見る瞬間があります。例えば、僕たちの空気を読んで勝手に動いてくれるロボットがいる未来の話をしたことがあります。私は、ロボットは目的に合わせた動きをするものだと思っていたのでとても驚きました。ぜひ、ロボットを見るだけでなく、研究者と話してお互いの視点を交換してください!

梶井:
みんなでこれからの世界について話し合いながら未来をつくっていくこと、すごく素敵な取り組みだと思う。伊達さん、ありがとう!ご参加される方は、以下の3点にご留意ください。

・どなたでもご参加可能です。
・8月23日(金)、24日(土)にも同じ内容のイベントを実施します。
・7月27日(土)、8月24日(土)には、ザワザワした場所で特定の音を聞き分けるロボットの研究を行っている研究者のトークイベントを開催します。



以上、7月のオープンラボ夏休みスペシャル見どころ紹介でした。

今回はあえて研究者ではなく、いつも研究者と話している側の人間を取り上げてみました。担当科学コミュニケーターは研究者と話しながらいろいろな発見をしています。きっと皆さんもそんな体験ができますよ!

ぜひ先端研究に触れ、研究者と話し、お互いの感動や未来像を共有し合いましょう!ご参加をお待ちしています!


【関連リンク】
・本イベントのイベントページ
https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1907261024447.html
・本イベント全体の紹介記事(科学コミュニケーターブログ)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/20190702post-865.html
・本イベント8月開催分の見どころ紹介記事(科学コミュニケーターブログ)
https://blog.miraikan.jst.go.jp/event/201908058.html
・本イベントの報告記事(科学コミュニケーターブログ)
→ 今年の秋に公開予定です。今しばらくお待ちください。
・日本科学未来館 研究エリアについて
https://www.miraikan.jst.go.jp/aboutus/facilities/


【おまけ】

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Author
執筆: 梶井宏樹(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
人と話す時間よりも分子と話す時間の方が長かった研究室時代に、夢が出来ました。「化学と人を繋ぐ!」こと。そんな時に科学コミュニケーターという生き方を知り、「一度社会に出て、現場を知った後にやろう」と決意。リスクコミュニケーションも大事ですが、楽しい化学コミュニケーションを目指しています。2016年4月より未来館へ。