中学校や高校での部活動。大会を目指したり、仲間と協力し合ったりと貴重な経験になりうる一方、あまりに厳しすぎる練習やいじめ・嫌がらせなどで心身に悪影響を及ぼす「ブラック部活」の問題も……。

◆部活がしんどい・やめたい……子どもが本音を語らない理由
学校における「部活動」は、子どもの心身を成長させる有意義な課外活動として肯定的に受け止められることが多いと思います。

一方で子どもを疲弊させ、心を傷つけるような行きすぎた部活動は「ブラック部活」と呼ばれ、近年では教師の働き方改革上の問題としても、部活動のあり方が議論されるようになりました。

学習指導要領『生きる力』(文部科学省)の第1章総則 第4の2-(13)に「生徒の自主的,自発的な参加により行われる部活動」とあるように、部活は学校教育活動の一環として位置づけられているものの、参加を強制できるものではありません。

しかし親、教師までもが「部活の所属は必須」と考えている例が、特に中学校においてはあるようです。そのため、「部活はつらくてもやめられない」と思い込んでいる子も少なくありません。

また、子どもが本音では「部活がしんどい」と思っていても、その気持ちを意識できないことがあります。

なぜなら、子ども自身が「一度始めたことを途中でやめるのは、負けだ」「みんなが頑張っているのに、自分だけやめることはできない」といった信念を持っていると、本音に気づくことを回避してしまうことがあるからです。

また人間関係のしがらみに悩んだり、いじめや嫌がらせのターゲットにされている場合にも、「しんどい」という気持ちを自覚しにくいことがあります。

そう思うことで友達と距離ができ、孤立することを恐れる子もいますし、いじめや嫌がらせの被害を自覚することによって自尊心が傷つくことを恐れる子もます。こうしてやはり、自分の本音に気づくことを回避してしまうことがあるのです。

しかし、本音に気づかずに過酷な環境に耐え続けてしまうと、そのストレスから心身の病を発症するリスクが高くなります。

子どもは自分の健康の状態を俯瞰的にとらえ、生活や人間関係を調整していく能力が未熟です。そのため、いちばん身近にいる大人が子どもの変化に気づき、状態を確認していくことがとても大切になるのです。

◆ブラック部活?「心・身体・行動」変化のチェックポイント
では、部活によるストレスから疲弊する子に生じやすい症状には、どのようなものがあるのでしょう。「心・身体・行動」の3つの領域に、以下のような変化が現れていないかを注意してみてください。

■心の変化
・自室などでふさぎ込み、憂うつそうにしている
・急に泣き出したり、怒り出したりする
・「自分なんて」など、自分に価値がないようなことをよく言う
・好きだったことにも、興味を失っているように見える
・あせって、空回りしているように見える
・朝がとてもつらそうで、家を出るときに元気がない

■身体の変化
・寝付けない、夜間・早朝に目が覚めるなど、睡眠に変化が表れている
・食欲がない、あるいはやたらと食べ過ぎている
・以前よりあきらかにやせた、あるいは太った
・疲れているようで、だるそうにしている
・頭痛や胃腸の不調などの体調不良をよく訴える
・顔色がよくない

■行動の変化
・部活、あるいは学校や塾を休むことが増えてきた
・部活動や部員の話をしたがらない
・宿題や予習・復習に取り組めなくなった
・成績やテストの点数が明らかに落ちている
・明らかにゲームやスマホ、食べ物などに依存的になっている
・忘れ物やうっかりミスが多くなった

これらは、ストレスによって「心・身体・行動」に生じる反応の一例です。最近、多くの項目に当てはまっているように感じたら、部活が子どもの大きなストレスになっていないか、じっくり話を聞いてみることも大切です。

◆子どもが本音を打ち明けやすくなる話の聞き方
では、子どもの状態を確認する際には、どのような話の聞き方をするとよいのでしょう。ポイントは、なるべく具体的に尋ねるということです。

たとえば「最近、部活どう?」「部活、大変じゃない?」などと漠然とした質問をしても、子どもの答えも「別に」「大丈夫」といった漠然とした内容で終わってしまうでしょう。

そばに寄り添いながら、「以前に比べると、すごく元気がないように見えるよ。部活がストレスになっていないかな。よかったら話してくれない?」というように、ゆっくりと語り掛けてみましょう。

子どもは、この時点ではまだ自分の気持ちがわからず、口を開くまでに時間がかかるかもしれません。しかし「親に本音を話してもいいんだ」という安心感を得られれば、抑圧してきた自分の気持ちを打ち明けやすくなるでしょう。

ただし、話したくないように見える場合には、無理に聞き出さないことが大切です。

「部活を負担に思うなら、無理をしなくてもいいんだよ。健康でいることが、いちばん大事だからね。考えがまとまらなくても、モヤモヤした思いをそのまま話してくれればいい。一緒に考えていこうね」というように、いつでも話を受け止めることを伝えておきましょう。

そして、気持ちを打ち明けてくれた時には、しっかりと受け止めましょう。言葉にならない思いで混乱し、泣き出したり、訳の分からないことを言ったりするかもしれません。そうした様子にもうろたえず、しっかりと受け止めることです。

こうして思いを存分に吐き出すことができたら、「こういう気持ちなのかな?」「こう考えているのかな?」というようにフィードバックし、本人がいちばん納得できる感情や考えを一緒に見つけていくことが大切です。

このときに、親の気持ちに余裕がなかったり、親自身の固定観念が強かったりすると、一定の解釈に誘導してしまうことがあるので注意しましょう。

たとえば「よくあることだよ」「そのくらい乗り越えなきゃ」といったことが口を突きそうになった時には、要注意です。このようにある価値観を押し付けられると、子どもは自分にいちばん適した気持ちを表出できないと思ってしまいます。

したがって、親自身の事情や価値観は脇に置き、目の前の子の立場に立って話を聞くことが重要です。

◆心身の健康を見守り、場合によっては学校とも交渉を
十分に話をした上で、子どもが「話して楽になった。自分で調整していけそうだから、もう少し頑張りたい」と言う場合には、その思いを尊重し、少し見守ってもいいでしょう。

ただし、つらい時にはいつでも話してほしいことを伝え、頑張り過ぎないことや一人で抱えないこと、親から教師に相談できることなどを助言します。

そして、引き続き「心・身体・行動」の変化を観察し続けます。改善しないようなら、健康を優先させるためにも部活動を休ませ、顧問や担任の教師に相談しましょう。

子どもが「休みたい」「やめたい」という気持ちであれば、休部や退部という方法を選択するのもよい方法であること、参加しやすい形で部活を続ける方法、部員間の人間関係の調整ができることなど、選択肢は複数あることを示してあげましょう。

いずれにしても、部活動によって学業や健康に支障が出るような状態であれば、子どもが疲弊しないようにしっかりと健康を守ること。そして、子どもの意思を尊重しつつ、本人にとって今、何が必要なのか、慎重かつ総合的な視点から考えていく必要があります。

文=大美賀 直子(公認心理師・産業カウンセラー)