パナソニックは、2020年7月24日から開催される東京オリンピック/パラリンピックが、開催まで約1年前となったことにあわせて、関連した取り組みについて説明した。

  • パナソニックは五輪の公式パートナーとなっている

オリンピック活かした事業創出、累計販売は2,000億円超へ

なお2020年では、同社はかねてから2020年における社会課題を想定した「5スマート+ネクスト3」を提案している。これまでに40社を超えるパートナー企業との協業により、フィールド実証を重ね、暑さ対策の「グリーンエアコン」、JTBやヤマト運輸との協業による「手ぶら観光」などのほか、先進セキュリティシステムや自律走行電動車いす、多言語翻訳システム、大規模イベント向け機器の納入などの成果があるとした。

  • パナソニックの5スマートとネクスト3

パナソニック 執行役員 東京オリンピック・パラリンピック推進本部長の井戸正弘氏

パナソニック 執行役員 東京オリンピック・パラリンピック推進本部長の井戸正弘氏は、「40社以上との協業は、我々にとっても強い力を得るものになった。それは大きな成果である」と前置きし、「オリンピックは、社会貢献だけでなく、ビジネス創出のチャンスである。競技場や選手村などの直接需要や、2020年を契機とした周辺施設の間接需要を順調に受注しており、累計関連販売は当初目標の1,500億円を上回り、2,000億円を超える見通しである。また、2020年を契機に創出する新規ビジネスは、2022年までに累計700億円超に拡大する見込みだ」などとした。

2020年までの見通しでは、競技場への大型映像システム、音響システム、選手村の家電の導入、大会に関わるセキュリティインフラなどの「直接需要」では約340億円超。商業施設やマンションなどの都市開発、ホテルの新規建設などの「関連需要」で1360億円超。暑さ対策や多言語翻訳、電動車いすなどの「新規ビジネス」で240億円超を見込んでいる。

  • 関連販売は、当初目標の1,500億円を上回り、2,000億円を超える見通し

同氏は「当初計画に比べて、直接需要はほぼ目論見通りであったが、関連需要ではホテルの建設などが想定を大きく上回り、予想よりも伸びている。その点では見誤ったともいえる。だが、ホテルの客室数は380%増と大きく増えているにも関わらず、まだホテルの数が足りない」などとした。

東京の2020年に向けたパナソニックの取り組みを総括

パナソニックは、オリンピックのワールドワイド公式パートナーとして、1988年のカルガリー冬季大会から、30年以上に渡ってオリンピックをサポートしている。2014年からはパラリンピックについてもワールドワイド公式パートナーとして契約。2016年のリオデジャネイロオリンピックや、2018年の平昌冬季オリンピック大会では、開会式および閉会式の運営をサポートし、最先端のプロジェクションマッピング技術などを活用して、大会を盛り上げた。

東京オリンピック/パラリンピックに向けては、2014年4月に、東京オリンピック推進本部(現・東京オリンピック・パラリンピック推進本部)を設置し、大会運営に貢献する技術やサービスの開発を行ってきた。

井戸氏は「過去5年間に渡り、2020年に想定される社会課題からの逆算によって、新たな顧客やパートナーとの連携のほか、新たなビジネスモデルを創出に取り組んできた」とする。

実際に「5スマート」として、

  • 電動アシストによるエコで渋滞フリーを実現する「スマートトランスフォーメーション」
  • 社会インフラやエネルギー需給が支える快適な暮らしを目指す「スマートコミュニティ」
  • 言語の壁を取り除く「スマートコミュニケーション」
  • 観戦や移動、買い物をキャッシュレスで実現する「スマートペイメント」
  • 安全、おもてなしを両立したセキュリティを提供する「スマートセキュリティ」

に取り組んだほか、「ネクスト3」として、

  • 誰もが快適に暮らせる社会を実現する「アクセシビリティ」
  • 健康年齢の引き上げに貢献する「ウェルネス」
  • 競技力強化と新たな観戦体験を提供する「スポーツ」

に取り組んできたとしている。

「1964年の東京オリンピックは、交通やビルなどを建設するハードウェア中心の発展途上国型の大会であったが、2020年の東京オリンピックでは、ソフトとサービスによる成熟国家型の大会になり、全世界から注目を集めている。交通利便性、アクセシビリティ、環境配慮、コミュニケーション、決済、安全、防災といった、2020年の日本、東京の社会課題を解決することを目指してきた。将来の目指す姿の実現に貢献する『おもてなしソリューション』に取り組む」(井戸氏)

具体的な取り組みとして、暑さ対策としては、直径10μm以下の濡れにくいシルキーフィインミストを活用した常設型のグリーンエアコンや、仮設にも対応するグリーンエアコンFlexを開発した。東京オリンピックの際には、マラソンコースにもグリーンエアコンFlexを設置する予定だという。

  • 東京の街中では、暑さ対策のミスト噴霧が行われている場面をよく見るようになった

  • 実際に設置された「グリーンエアコンFlex」

また、無電柱化に伴い設置する地上機器を使ったストリートサイネージを設置し、道路空間の価値創造を実現。多言語での情報提供のほか、将来的には、電気自動車の充電、自動運転のミリ波を飛ばすことができるようになるという。

  • 無電柱化も新ビジネスに繋げる

  • 無電柱化に伴い設置する地上機器を使ったストリートサイネージ

観光ソリューションでは、観光客が荷物を持たないで国内旅行ができる「LUGGAGE-FREE TRAVEL」のサービスを開始していることを説明。2020年以降に4,000万人にまで増加すると見込まれる訪日外国人に向けたサービスとして定着させていく考えだ。

スマートセキュリティでは、全国に100万台が設置されている監視カメラのデジタル化や高精細化を促進させる一方で、画像認識技術を活用した映像監視システムや、顔認証を活用した空港、オフィス、遊園地などでの入退出ソリューションの提供を推進。ロボティクスモビリティでは、ロボット電動車いすによる自動運転での移動や、パワーアシストスーツの手荷物および貨物搭載の作業現場への導入、自律搬送ロボットであるHOSPIによる搬送、巡回、情報提供での活用事例を紹介。「HOSPIは、G20サミットでも活用され、18カ国語で情報提供を行った」という。

  • 監視映像の解析技術を利用したスマートセキュリティは、近年になって特に話題だろう

  • いわゆるパワードスーツ的なもので、五輪で負担の増える貨物現場をサポートする

また、スマートスタジアムの取り組みとして、パナソニックスタジアム吹田で実証実験を行っているデジタルチケッティングの取り組みについて説明。井戸氏は「単に入場の効率化や、キャッシュレス化などに効果があるだけでなく、ここで得られた個人IDデータや購買データを活用して、個人ごとに最適なメールを送信できるデジタルマーケティングにより、チームの成績に左右されずに、スタジアム来場者を増やすことができている」とした。

オリンピック後のビジネスへもつなげる

さらに、2020年以降も、将来における社会課題を明らかすることで、新たなビジネスを創出するという。

ここでは施設空間における価値向上に向けて、これまで培ってきたノウハウや創出したソリューションを徹底活用する一方、施主やデベロッパーといった都市開発における上位レイヤーと、プロジェクト初期段階から共同で事業構想を構築し、コンサル型営業や提案、実証を通じて協業ビジネスを拡大する方針だ。「大規模施設・まちづくり」をターゲットに、ハード、ソフト、サービスを開発・導入し、施設空間の価値向上を実現するという。

井戸氏は、「東京オリンピックが開催されることで、パナソニックは新たなビジネスを創出できたと考えている。また、これまでにはかった新たな協業を生み、これが今後も続くことになる。オリンピックで培った経験を、2030年に向けて生かしていきたい」と述べた。

施設空間での価値創造の具体的な事例として、オリンピック終了後の選手村を新たな街に活用する「HARUMI FLAG」では、日本で初めて水素タウンを実現した。全戸にエネファームを導入することで、街区、住戸のエネルギーを見える化し、最適なエネルギーマネジメントを行う。また、街全体に750台の監視カメラを導入。「単なる監視カメラの導入だけでなく、街全体の安心、安全を実現すセキュリティ、防災システムを構築できる」という。

  • 選手村を新たな街に活用する「HARUMI FLAG」で、水素タウンを実現する

また、HARUMI FLAGの販売センターでは、VRを活用したリアル感のある眺望演出が特徴のをモデルルームを用意している。この技術は、今後も都市開発や観光、エンタメ施設などでも応用するという。

そのほか、CREソリューションでは、自社の遊休土地を再開発したサスティナブルスマートタウンや、遊休不動産の再生を核に周辺エリアを巻き込んだリノベーション&マネジメントモデルに取り組んでいることを説明した。統合型リゾート(IR)事業では、大阪・夢州と大阪万博跡地のIRの実現に向けて、パナソニックの最先端技術を活用した支援を行っていくこと、スポーツを核とした周辺施設と相互作用での街全体の活性化による価値向上、スポーツ事業拡大に向けた商材やソリューションの提供などに取り組んでいく姿勢も強調した。

  • 大阪でのIR実現に向け、最先端技術を武器に取り組む

「幅広い商材、ソリューションを持っているのがパナソニックの強み。IRでは、ホスピタリティ、エンターテイメント、モビリティ、サスティナビリティ、セキュリティという5つのスマートIRソリューションから取り組む。また、スタジアムソリューションでは、スタジアムを常にフレッシュ化(Keep Fresh)することで、スポーツ施設による観戦体験の強化、ファンエンゲージメントの強化、収益力の強化を行う」(井戸氏)。

最後に井戸氏は、「逆算でのビジネスビジネスモデルの構築、他社との協業の強化などを通じて、施設空間の価値向上や、新たなサービス事業の創出に取り組む。そして、これは、2020年で終わりではない。このビジネスモデルが将来の標準になることを目指す」と改めて強調していた。