来春には主演を務めるNHK連続テレビ小説「エール」が控える窪田正孝さん

 6月17日に最終回を迎えたフジテレビ系“月9”ドラマ「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」。全11話の期間平均視聴率は12.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・以下同)を記録、同24日放送の特別編では、番組最高となる視聴率15.6%をマークと、好数字を残した。本作で、主人公の天才的な読影技術を持つ診療放射線技師・五十嵐唯織を演じたのが俳優の窪田正孝さんだ。劇中では検査中の真剣な表情、本田翼さん演じる甘春杏に話しかけられたときのデレッとした表情、「ここぞ」というときには男らしい仕草も見せるなど、立体的な人物造形で見ている人を楽しませてくれた。

 ◇2006年に主演ドラマで俳優デビューも…

 窪田さんといえば、2006年に主演ドラマ「チェケラッチョ!! in TOKYO」(フジテレビ系)で俳優としてデビューを果たしたものの、その後はなかなかオーディションでも結果が出ず、一時は俳優業を辞めてしまおうと思った時期もあったと、以前インタビューで話していた。そんな中、2008年放送のドラマ「ケータイ捜査官7」(テレビ東京系)でシリーズ監督を務める三池崇史に見いだされ、1年という長丁場でハードな撮影を経験し「与えられた役を全うすることがすべてなんだ」と学んだと語っていた。

 そこからは、昼ドラ「Xmasの奇蹟」(東海テレビ・フジテレビ系、2009年)でファンタジックな世界観の中、年上女性と恋に落ちる大学生を演じたかと思えば、映画「ガチバン」シリーズ(2010年~)でハードなヤンキーを演じるなど「与えられた役を全うする」という意味では、変幻自在にキャラクターを演じ分ける俳優として注目度は増していった。

 大きな話題を呼んだのが、2010年に放送時期が重なったNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ゲゲゲの女房」と「ジョーカー許されざる捜査官」(フジテレビ系)での演じ分けだ。「ゲゲゲの女房」で、熱血漢でちょっと暑苦しいが憎めない水木プロに勤めるアシスタント・倉田圭一を演じていたかと思えば、「ジョーカー~」では、連続通り魔犯として次々に人を刺し殺すサイコパスを“狂演”。朝と夜でまったく違う顔を見せた窪田さんの演技に驚いた視聴者は多かったのではないだろうか。

 ◇清濁どちらも演じられる振り幅の大きさが魅力

 清濁どちらも演じられる振り幅の大きさは、窪田さんの魅力となり、出演作が続いていく。ドラマ「SUMMER NUDE」(フジテレビ系、2013年)や、映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」(2013年)では、キラキラした女子受けしそうな役を演じる一方、映画「ふがいない僕は空を見た」(2012年)で演じた、認知症の祖母と共に団地で暮らす複雑な感情を抱く青年など、作家性の強い作品でも高い演技力を披露するなど、非常にバランス良く作品に出演し実績を積み上げていった。

 作品が途切れることがなくなってきた窪田さんの知名度をさらに上げたのが、2014年に放送された朝ドラ「花子とアン」だろう。本作で窪田さんは、吉高由里子さん演じる主人公・はなの幼なじみで同級生の木場朝市を好演し、スピンオフドラマ「朝市の嫁さん」も制作されるなど、人気を博した。

 その後もドラマ「Nのために」(TBS系、2014年)でミステリアスかつ繊細な演技を披露すると、唐沢寿明さんとタッグを組み、映画化もされた「THE LAST COP/ラストコップ」シリーズ(日本テレビ系、2015年~)では、スタート時とはまったく違うキャラクターに変貌していく“変化”をハイテンションで表現。さらにドラマ「デスノート」(日本テレビ系、2015年)では狂気たっぷりに夜神月を演じ、ドラマ「僕たちがやりました」(カンテレ・フジテレビ系、2018年)では28歳にして高校生役に扮(ふん)したが、違和感ない窪田さんの表現力に多くの賞賛が寄せられた。

 ◇今後も質量ともに圧倒的な芝居 30代に突入し充実一途

 「ラジエーションハウス」以降に目を向けると、7月5日に公開されたばかりの映画「Diner ダイナー」では、全身傷だらけの殺し屋・スキンを演じ内から漏れ出るような色気を、19日公開の「東京喰種トーキョーグール 【S】」では、松田翔太さん扮する月山習に翻弄(ほんろう)されるなか、強さと弱さを巧みに表現するなど、質量ともに圧倒的な芝居を披露している。窪田さんは以前のインタビューで「作品のなかに溶け込むような感覚は意識している」と語っていたが、その言葉通り、どんな色の作品でも、すっと役柄に入り込むからこそ、見ている人の心をつかむのだろう。

 来年は「10年後に窪田を選んだ理由が分かる」と「ケータイ捜査官7」に抜てきした際に話していた三池監督とタッグを組んだ映画「初恋」の公開や、主演で臨む朝ドラ「エール」の放送も控えている。30代に突入し充実一途の印象を受ける窪田さんの演技から目が離せない。(磯部正和/フリーライター)