アジレント・テクノロジーは7月1日、液体クロマトグラフ質量分析装置(LC/MS)のエントリモデルとして直観的な操作を可能とした「Agilent InfinityLab LC/MSD iQシステム」を発表した。

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    「Agilent InfinityLab LC/MSD iQシステム」

同製品は、同社の液体クロマトグラフ(LC)「Agilent InfinityLab シリーズ Infinity II LC」を利用しているユーザーが、LCの感覚で簡単に使える質量分析計をコンセプトに開発されたもので、ハードウェア、ソフトウェアいずれの面でも、簡単な入力以外は画面の指示に従って操作するだけで求める結果を得られるような直感的な操作を可能とする工夫が施されている。

  • InfinityLab LC/MSD iQシステム

    InfinityLab LC/MSD iQシステムの開発コンセプト

例えば「OpenLAB クロマトグラフィーデータシステム(OpenLab CDS)」クロマトグラフィデータシステム「OpenLab CDS 2」では、ラーニング機能が利用でき、これにより、ソフトウェアの指示に沿って実際の操作を学ぶといった対話方式による操作方法の習得や、ユーザーがMS部分の測定条件を決定しなくても、測定したい質量範囲(Scan)もしくは、測定したいm/zイオン(SIM)を入力するだけで、LCのメソッドから、さまざまなMS条件を自動的に判断、設定してくれる「Auto Acquire」機能などが提供される。

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  • Auto Acquireの利用により、最低限の情報を入力するだけで、自動的に処理が進められるので、ユーザー自身に専門知識やノウハウが蓄えられていなくても容易に作業を行うことができるようになっている

また、CDS 2.4から対応した「Walkup ソフトウェア」を活用すると、「ユーザー名」、「サンプル数」、「メソッド」を入力するだけで、サンプルのセット位置をソフト側で指定してくれ、かつ測定結果は電子メールで担当者に送信されるなど、ルーチン分析の際に余計な作業をすることなく、作業を効率化することが可能になるという。さらに、WlakUpにはノングレアのタッチパネルも提供され、ユーザーは画面に必要事項をタッチ入力で記入するだけで、作業管理を行うことができるようになるという。

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  • Walkup ソフトウェアを使うことで、ユーザー名、サンプル数、メソッドの3項目を入力するだけで、後はソフト側が提示する手順などに従うだけでサンプル分析が可能となる

一方のハードウェアとしても、搭載されたセンサが収集、表示するデータからシステムの準備状況やステータス、機器の構成などの各種状態情報を理解・判断するインテリジェンス性を有しており、これを活用することで、テスト試料を使用して、データ測定前にシステム全体の評価を行うことを可能としているほか、100V電源に対応。さらに、LCと同じ横幅と奥行きを実現し、従来製品比で体積を55%削減したことで、小型化を実現。メンテナンス性についても、真空状態を解除せずにメンテナンス可能なIon InjectorおよびVacShield機構の採用などにより、メンテナンス時間を従来の12時間から5分に短縮するなど、向上が図られている。

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  • ソフト面のみならず、ハード面でも使い勝手やメンテナンス性の向上などが図られている

また、小型化を果たしたことから、搬送が容易になり、ラボ内での移動を可能とするラック「Flex Bench MS」への搭載が可能となった。真空ポンプ用の静音ボックスも用意されており、ラボ内における騒音の問題などを解決しつつ、プロジェクトごとに部屋が異なる、といった場合でも柔軟な対応が可能になったとする。

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  • 電源も一般的な200Vから100Vへと変更されたほか、Ultivoで生み出された技術を活用することで小型化を実現した。これにより、移動式のベンチで省スペースな配置を実現しつつ、快適なラボ環境を構築することができるようになった

なお、InfinityLab LC/MSD iQの価格は、LCやオートサンプラなどを含めたソリューションとして2000万円程度とのこと。受注は即日開始されているが、出荷は9月ころの予定で、同社では主に製薬/創薬、食品、化学薬品、受託分析といった業界を中心に販売を進めていくとしている。

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    InfinityLab LC/MSDシリーズのラインアップ。InfinityLab iQは、Infinity LCとInfinityLab LC/MSDの間をつなぐエントリー的な立ち位置であり、LCユーザーがMSを使うさいのハードルを下げることを目的に開発された