ピーター・バラカンが語るポーランド音楽「政治でこんなにも音楽の形が変わって行くのか」

冷戦下のポーランドを舞台に、時代に翻弄される恋人たちの姿を美しいモノクロ映像と名歌で描き出したラブストーリー『COLD WAR あの歌、2つの心』が日本公開を迎えた。それを記念し、ポーランド人を父に持つピーター・バラカンがヒューマントラストシネマ有楽町で開催されたイベントに登壇。ポーランド映画とその音楽の魅力について語った。

第91回アカデミー賞では監督賞、撮影賞、外国語映画賞の3部門にノミネートされ、第71回カンヌ国際映画祭では監督賞に輝いたパヴェウ・パヴリコフスキ監督による『COLD WAR あの歌、2つの心』。本作をすでに3回鑑賞したというバラカンは、「回を重ねるごとにこれまで気づかなかった事に気づけた」と、余計な説明は一切排除し、余白を通して自分なりの想像や解釈も楽しめる本作の魅力を彼なりに堪能したことを伝えた。

その後、「父親はポーランド人だが、これまでポーランドに行く機会もなく、それほどポーランドに関心を持たないまま大人になってしまった」と述べたが、今年の4月にとある音楽フェスの取材のためポーランドに行く機会があったことを告白。その場所で偶然本作の劇中にも出てくる民族合唱舞踏団”マゾフシェ”の原型でもある素朴な民族音楽”農村マズルカ”と出会ったと明かし、ショパンも愛したと言われるこの民族音楽について「社会主義の時代になると、田舎の農村の音楽はダサいと言われるが、洗練された形にすると初めてみんなが評価する」「政治でこんなにも音楽の形が変わって行くのか」と、いつの時代も社会の波に翻弄されてしまう文化の現実を語った。

『COLD WAR あの歌、2つの心』の公開初日記念イベントに登壇したピーター・バラカン

現在、ワルシャワを中心に空前の盛り上がりを見せる農村マズルカ。そのリバイバルの立役者でもあるヤヌシュ・プルシノフスキにつては「彼らは民族音楽を収集してアレンジ、歌い演奏し続けている。アレンジしているため”純粋な伝統音楽”ではないかもしれないが、形は変わっても残り続けて行くには重要なこと」と称賛し、「三拍子ではあるのだけど、アクセントのつけ方などが独特で一言で表現しきれない」と農村マズルカの不思議な魅力について持論を展開した。

ほかにも、主人公ズーラがジャズクラブで「ロック・アラウンド・ザ・ロック」を背景に踊り出すシーンについては、「彼女のパリでの生きづらさを表現しているはず」と、本作の第3の主人公とも言える音楽を中心とした鑑賞の仕方についても、彼なりの解釈を伝えていた。

映画『COLD WAR あの歌、2つの心』は、ヒューマントラストシネマ有楽町/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開中。


<映画情報>



『COLD WAR あの歌、2つの心』
監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
脚本:パヴェウ・パヴリコフスキ、ヤヌシュ・クウォヴァツキ、
脚本協力:ピヨトル・ボルコフスキ
撮影:ウカシュ・ジャル
出演:ヨアンナ・クーリク、トマシュ・コット、アガタ・クレシャ、ボリス・シィツ、ジャンヌ・バリバール、セドリック・カーン 他
2018年/原題:ZIMNA WOJNA /ポーランド・イギリス・フランス/ ポーランド語・フランス語・ドイツ語・ロシア語 / モノクロ
/スタンダード/5.1ch/88分/ DCP/ G / 日本語字幕:吉川美奈子
配給:キノフィルムズ/木下グループ
後援:ポーランド広報文化センター
https://coldwar-movie.jp