ポール・スタンレー、KISS最後の日々とファイナルツアーの展望を語り尽くす

いよいよ「最後の来日ツアー」の詳細をアナウンスしたKISS。今回は昨年9月、ポール・スタンレーが自身の歌声、ファイナルツアーの展望、さらにKISS終了後の未来にも言及した”今こそ読むべき”インタビューをお届けする。

KISSがエンド・オブ・ザ・ロード・ツアーを発表した直後、フロントマンのポール・スタンレーはローリングストーン誌のポッドキャスト「Rolling Stone Music Now」に登場して、詳細なインタビューを行った。その中で彼はKISSがツアーから引退する理由など、さまざまな質問に丁寧に答えてくれた。そこでのスタンレーの発言を編集して要約し、文章化したのが下記の記事だ。



―KISSと同じように、同世代アクトの多くが何かしらの形で引退を表明していることに気づいていると思いますが。

多くの人々、バンド、パフォーマーが引退を発表しているのは偶然ではない。アイコン的な存在には年齢も時間も関係ないと信じたい気持ちもわかるが、現実はそうじゃないと時の流れが証明している。俺たちのようなバンドの場合……まあ、俺たちのようなバンドは他にいないがね。総量15〜20キロの衣装と楽器を身に付けてステージを駆け回るバンドなんて他にいないだろう。とにかく、俺の場合、ステージで歌いながら飛び跳ねるのはなんとかなる。ペルシャ絨毯の上に置かれたスツールに座ってマーティン・ギターを弾くってことなら、うん、永遠に続けられるよ。でも、それじゃあKISSじゃない。俺と同い歳で現役でプレイしている野球選手も、フットボール選手も、アスリートもいないだろう? つまり、俺たちはステージに立って自分たちを100%見せて、このバンドのすべてを、俺たちがやってきた事柄すべてを祝いたいのさ。もちろん、ほろ苦さを感じるけど、これが正しいやり方だと確信しているんだよ。

―以前在籍していたメンバーが何らかの形でツアーに参加する可能性はありますか?

それは明言できない。これはKISSというバンドのセレブレーションであって、特定のラインナップやメンバーのものじゃないのさ。特別なルールを決めるつもりもないが、大事なのはそういうことじゃないんだよ。俺たちはKISSとしての誇りを持って登場する。数カ月前にポルトガルとスペインに行って、2〜5万人の会場で演奏した。そこで、俺たちは大得意になって、堂々とパフォーマンスしたんだ。それと同じことを、これまで一度もやったことのない規模でこれから行うわけだ。今回のツアーを見てしまうと過去のKISSのツアーがちゃちに見えるかもな。

―ローリング・ストーンズは最近のツアーで毎回ビル・ワイマンとミック・テイラーをステージに呼び込んで2曲くらい演奏していますが、これと類似したシナリオは排除すると?

いや、そういう意味じゃなくて……隠したいわけじゃないんだよ。ただ、下手なことを言ってミスリードしたくない。本当に、現時点ではそういう事柄にそれほど意識を向けていないし、俺たちが今考えているのは、どんなステージにするか、どんなライブにするかで、実際に今はセットリストをあれこれ話し合っている最中なんだ。


2018年9月26日、ネバダ州ラスベガスにてPUMAコレクションのローンチイベントに出席したKISSのポール・スタンレー。(Photo by Denise Truscello/Getty Images for PUMA)

―これまでライブでやらなかった楽曲もセットリストに加えるつもりですか?

それはいつも興味深いと思う質問だよ。ほら、熱狂的なファンは「レアな曲を演奏しないのか?」と言うけど、ほとんどの観客が聞きたいのは彼らのよく知っている楽曲だ。いつも言っているけど、レアなものにはレアたる理由がある。つまり、それほど良くないってこと。良いものだったらレアになるわけがない。確かにツアー中10公演に来るような熱心なファンがそう思うのは理解できるが、大抵の観客は何年間に一度観に来るわけで、彼らが聞きたいのは大衆に受けた楽曲だ。つまり、クラシックな楽曲ということ。だから俺たちは「デトロイト・ロック・シティ」「ラヴ・ガン」「狂気の叫び」「ロックンロール・オールナイト」「ファイヤーハウス」「ブラック・ダイヤモンド」を披露する。

これは断言できるが……ベテランバンドのライブビデオを見るとする。そのときに音を消して見てみるといい。するとバンドが新曲を演奏した途端にわかるから。観客が一斉に着席するんだよ。自分のライブで大勢の観客が知らない曲を聞いて我慢するなんて、俺は嫌だ。それに、ライブの雰囲気も壊しかねない。だって、みんな、「それ、なんだ?」ってなるだろう?

―現時点でKISSは、アルバム制作からも卒業ということですか?

ある時点で、今やることが過去に自分たちがやったことと同じレベルに達することはないと気づいた。だって古い曲はリスナーの人生とリンクしているわけだし、自分の過去の思い出のスナップショットで、時間の経過とともに存在感が増すわけだよ。確かにライブで新曲を演奏したことはあるし、その曲だって昔の楽曲と同じくらい良い曲だと俺は思う。ただ、例えば「Modern Day Delilah」を聞いた観客は「うん、いい曲だ。じゃ、次は『ラヴ・ガン』をよろしく」とか言うわけだ。俺はその気持ちが理解できる。でも面白いのは、「Psycho Circus」なんて今では20年くらい前の曲だから、もうクラシック曲扱いだ。こういうことは一朝一夕でできることじゃないんだよ。どんな理由であれ、時が経るにつれて風格の増した曲というのは、リリース当初にはなかった重みと深みが加わる。その点で、うん、悩ましいと言えるね。


―控えめとはいえ、ジーンがステージであなたの悪口を言いましたが、これを聞いて二人の間に何らかの問題があったのかしら?と思いました。

いいや、ないよ。ほら、ジーンと俺はもう、そうだな、47年くらい一緒にいる。だから、彼が何を言ったところで、外で楽しい時間を過ごしているってだけさ。ジーンは無料コンサートをしているんだ。チケットを売ろうとすると売れ行きが芳しくないから、観客を200〜300人くらいに抑えている。でも、この活動は素晴らしいよ。一昨日もジーンと一緒だったんだが、アイツと俺の間には人から羨ましがられるほど強い絆があるし、俺も強いと断言できる。ジーンの家は俺の家がある通りにあるから、文字通り俺たちはご近所さんだ。何十年も前に互いの性格や人間性で折り合いをつけたし、互いにどんな人間かよく知っているし、二人とも家族が大人になったし……つい最近、ある写真を見つけてね。(ジーンの息子)ニックを抱いている若い頃の俺で、ニックはまだ1歳になっていなかった。それに、ソフィー(・シモンズ)とも2日くらい前に会った。彼女はロスでプレイする予定で、俺も観に行くよ。それが家族ってもんだろ。些細なことを取り上げて中傷することも可能だが、結局、最後に一番ジーンを支持するのは俺で、逆もまた然りってことだ。

―ジーンが言った悪口というのは、「俺の声はいつも大丈夫だし、昔のままだ」と言った後であなたの名前を出したことですが……。

だってアイツはリード・ヴォーカルとして歌ってないから!


2015年、ライブ中のスタンレー。

―若い頃に作った楽曲の高音部を歌うのは大変ですよね?

まあ、自分の劣化に関しては月日の経過とともに折り合いをつけられるようになるってものだ。俺が知っているシンガーは全員が、顔を合わせたときに最初に言うのが「このキー、前より辛くなってないか?」とか、「この歳になってこの歌を歌うなんて考えてなかったよな?」とか。つまりだ、これはどうしようもないことで、歳をとるとケアやウォーミングアップに費やす時間が増すわけだよ。最近、俺もかなり念入りにやっていて、声の調子を常に保つよう心がけている。ただ、『アライヴ!〜地獄の狂獣』のときの俺の声が聞きたいなら、あのレコードを聞けばいい。そうだろ? ロバート・プラントが昔の歌を歌わない理由の一つがそれさ。彼以外にも知り合いのシンガーは多いし、話をするシンガーも多いけど、みんな同じ状況さ。変化を嫌うってことは人間としての自分を認めていないってことだよ。俺たちは機械じゃないけど、俺にしても、他の人間にしても、かつての自分と自分を比べるよりも、今の自分の状態がかなり良いと思う方がいい。声に関していえば、時間の経過が引き起こすネガティブなこと、辛いことは確かにあるけど、これだけ長い間歌っていればそういうことも起きて当然さ。でも、今度のツアーは本当に最高のものになると断言できるし、「Americas Got Talent」を見た連中はきっと新たな自信を得ると思うよ。

―あれはライブ・パフォーマンスだったのですか? それとも事前に撮影していたものですか?

傾向としては、ライブ演奏を録画するし、その方が確実だったりする。スタジオに入るとかそういうことじゃなくて、つまり……不完全な部分があってこそライブってものなんだよ。

―今度のツアーのために声をどのようにケアしていますか?

口をつぐんで、君たちのような連中と話す機会を減らすことだよ。

―それは利口なやり方です。

だって、ほら、ウォーミングアップできるし……温熱セラピーをやっているし、超音波や光線療法も取り入れている。すべて声帯の調子を維持するためさ。時間の経過とともに声帯が腫れるし、そうなるとイライラするし、いろんな嫌なことが起きるけど、俺はステージに立って演奏するために自分の状態を安定させたいんだよ。俺たちは週に1〜2回ライブを行うバンドじゃないし、俺の歌声を補強するキーボーディストもいない。「あいつ、すごく上手いぜ」と思うシンガーがいるけど、そういうときはキーボーディストを見てみるといい。そいつの歌声のほうが断然いいから!


―今度のツアーにおける「複数年」とはどういう意味ですか? 一体何年になる予定ですか?

笑っちゃうよね……何年に及ぶのかは俺にもわからない。過去にライブを行ったすべての場所をまわりたいし、そうなると本当に多くの場所に行かないとダメだ。世界は広いのさ。俺たちの計画は過去に行った場所を全部まわることで、1年じゃ無理だろうね。2年かもしれないし、3年かもしれない。それに週7日間ライブをしたい人間なんていないだろう。そんなこと無理だよ。今回のツアーは本当に高い山を登るようなものだけど、登山しながら俺たちは楽しむ予定だ。

―ポール・サイモンが最近さよならツアーを終えましたが、ツアー終了後もときどきライブを行うかもしれないと言っていました。あなたとしては、今度のツアーの千秋楽がKISSとしての最後のライブという感覚ですか?

まあ、そんな先のことは今はわからないな。ほんと、どうなることやら。そこに到達するまでにやるべきことがたくさんあるから。俺たちにとって最も重要だったのは、お互いの顔を見て「みんな、このツアーの最後を見届けるぞ。そして堂々とこれをやり遂げるぞ。みんなの記憶にしっかりと刻まれるように最善を尽くすからな」と確認することだった。

―あなたはR&Bのカバーバンド、ソウル・ステーションで歌っていますが、KISS卒業後はそっちの方向へ進むのですか?

今週末にギャラリーでのショーが2本入っているから、今はほとんどの時間をアートに費やしていて、これが思いのほか上手く行っている。だから、今後もアート制作を続けるつもりだ。一方、ソウル・ステーションは……バンドメンバー全員が、つまり俺を含めた13人が思い切り楽しんでいるって状態だ。メンバーの中にはスティーヴィー・ワンダー、スモーキー、ナタリー・コール、ホイットニー・ヒューストン、テンプテーションズなどと一緒にプレイしていた者もいる。何が楽しいって、これまで手が加えられていない最高の楽曲を、尊敬と畏敬の念を持ってリメイクでき、再プロデュースできることだよ。ほとんどの曲はラップなどのクリップで一部分を聞く程度のもので、悲しいことに、曲全体を聞く機会が最近ではまったくない。そこで俺たちがそういう曲を演奏するんだが、これは俺たちにとっての贈り物だね。

去年(2017年)、俺たちは日本に行ってライブを行った。確か6日間で12公演だったと思う。みんな、大はしゃぎだった。メンバーとはいつも連絡を取り合っている。「もっとやろうぜ」が決まり文句になるくらい、みんなで音楽の話をしているんだ。これも俺のルーツの一つだね、レッド・ツェッペリンなどのバンド以外で。俺は幸運に恵まれていて、オーティス・レディングにも、テンプテーションズにも、ソロモン・バークにも会った。だから、うん、ソウル・ステーションを続けたいかときかれたら「もちろんだ」と答えるよ。演奏したい曲はまだまだたくさんあるから。

―ジーンと二人で落ち着いて話し合う機会というのはあったのですか? つまり、「なあ、バンドの終わらせ方を話し合う時期だと思うんだ。さよならツアーのことを決める時期だ。どうしようか?」というような……。

そんなふうに話し合ったよ(笑)。ほんと、そんな感じさ。ある時点で、誰もがわかっていても話したくない問題を話さなきゃと思うときがくる。だろう? KISSというバンドの特性を考えると、そうなるのが自然なんだ。俺たちはジーンズとスニーカーでステージに登場して演奏するバンドじゃない。俺たちはアスリートだ。俺たちはギターを弾くスーパーマンだ。だから、うん、ある時点で互いの顔を見合って、「俺たちが望むレベルでこれを続けられるのはあと何年かな? 大好きなままで続けられるのはあと何年かな?」と言うことになる。利口なら、移り行く状況を最大限に利用できるように計画を練るだろう。その場しのぎをしながら枯れていくんじゃなくてさ。俺はそれだけは嫌だった。ツアーを終えたあとに「じゃあ、これで終わりにしよう」と宣言したり、ツアー後に1年くらい待って「まだ戻れない」と言って、それから1年後にも「まだだ」みたいな状況は嫌なんだよ。俺は最後にウィニングランをしたい。形勢を逆転したい。みんなをびっくりさせたい。これまで何でもかんでも反対する連中を全部克服してきた。だから世界中をまわって、みんなとハイタッチしたいんだよ。ただ、それを実現しようとすると案外時間がかかるのさ。

―KISSのステージで最後にプレイする曲は何にしたいですか?

最後の曲はこれ以上ないってくらい長尺にしたい。そうだな、最後の曲として「ロックンロール・オールナイト」をプレイするのは想像できるかも。KISSにとってアンセムのような曲だし、俺たちとのつながりも深いし、掛け声やときの声として使われることも多いから、この曲が最後になる可能性は高いと思う。演奏し終えた俺は1分間微笑んで、次の1分間は泣くだろうな。これが俺が感じるほろ苦さだよ。最後の瞬間はあらゆる感情に響いて、俺の中の感情スイッチを全部押すはずさ。



―きっとジーンも泣くでしょうね。それって想像できますか? ジーンが泣いた姿を見たことがありますか?

最近のジーンはインタビュー中に泣くのがお気に入りだぜ。ほら、俺たちが過去に成し遂げたことを振り返ったとき、メンバーそれぞれに思い出があるわけだ。でも、そういうことについて語り始めたのは最近だし、過去を振り返って、過去にやったことを思い出して目が潤むなんて珍しいことでもないよ。ジーンと知り合ったとき、俺は実家暮らしだった。ジーンもそうだった。二人でこのバンドを始めたとき、俺たちには夢があった。どんな困難に見舞われても、俺たちの決心は固かったし、労働理念は「絶対にノーと言わない」だった。これは今でも、どんな仕事をしていても変わらないし、周囲にもこの考えを勧めているよ。

―最後の質問です。ジーンがここ何年か「将来的にオリジナル・メンバーが一人もいない異なるバージョンのKISSが生まれる未来が想像できる。そして、そのバンドのクローンが生まれて次の時代のKISSが生まれる」と言っています。現時点でそういう未来を想像できますか?

KISSのショウだったら想像できるね。だってどこかの時点でKISSはメンバーを超越するし、既に俺たちを超越した存在になっている。だから、そういう未来が見えるかときかれたら「うん、見える」と答えるよ。ただ、近い将来のKISSがどんな形かはわからない。でもさ、KISSは最高なんだから、こんな最高なものを世界が拒否するわけがないだろう?

※関連記事「ポール・スタンレー、KISS引退の理由を語る」




KISS END OF THE ROAD WORLD TOUR

【仙台】
12月8日(日)ゼビオアリーナ仙台
OPEN 17:00/START 18:00 

【東京】
12月11日(水)東京ドーム
OPEN 17:30/START 19:00 

【盛岡】
12月14日(土)盛岡タカヤアリーナ(盛岡市総合アリーナ)
OPEN 16:30/START 17:30

【大阪】
12月17日(火)京セラドーム大阪
OPEN 17:30/START 19:00  

【名古屋】
12月19日(木)
ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)
OPEN 18:00/START 19:00

■チケット
SS席:¥25,000
S席:¥20,000
A席:¥15,000
(全席指定・税込) 

■一般発売
仙台:9月7日(土)
東京:7月20日(土)
盛岡:9月7日(土)
大阪:7月27日(土)
名古屋:後日発表

特設サイト:
https://endoftheroad.udo.jp