独自のスタイルと足回りを追求したエキゾチックなヒット作

PSA傘下に入ってから、ヴィザ以上にシトロエンらしさを追求したのがBXだった。一般に、コストダウンの要求が厳しい小型車ほど部品の共用化が多くなり、上級モデルほどブランドの看板を背負うのでオリジナリティを出したいものである。BXはGSの後継に相当し、シトロエン・ブランドの生命線といったら大げさかもしれないが、その独自の足回り技術とスタイルが、死守されることになった。
 
基本的にはプジョー305の技術を流用しているが、プジョーの提案を拒んでハイドロニューマチックの採用だけは貫きとおした。ただし前がダブルウィッシュボーンでなくマクファーソンストラットになったので、直進安定性に有利な、DS以来のゼロスクラブのジオメトリーは消えることになった。
 

BX のブレーク。CXと同じようにルーフ後半がハイルーフになっており、シトロエン独特の雰囲気を漂わせる。BX は車体の各部に軽量化のためにプラスチックを多用したのも特徴であり、ベーシックモデルの車重は900kgを割っていた。BX は230万台以上が売られる成功作となった。

いっぽうスタイリングは、典型的3ボックスセダンのプジョーとはまったく異なる。305より長い2655mmのホイールベースに架装されるボディは、上級シトロエンのトレードマークと化していた宇宙船的なファストバックスタイルが採用された。これはコンペにかけたうえでベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニに委ねられたものだ。ガンディーニは、イタリアのカロッツェリア・デザイナーのなかでも革新的ということで名を馳せており、シトロエンには適した人選ともいえた。近未来的ファストバックスタイルやリアホイールが半分カバーされたデザインは、シトロエン流デザインであると同時に、ガンディーニの作風にも合うものだった。ちなみにガンディーニの代表作といえばランボルギーニ・カウンタックである。


BX にはGTi やGTi 16バルブなどの高性能モデルが設定されたが、モータースポーツシーンではあまり見られない車種だった。とはいえWRCのグループBに4WDマシンを仕立てて参戦したほか、スーパープロダクションと呼ばれるフランスのツーリングカーレースにも一時期挑戦していた。
 
それまでのシトロエンがドーム型で丸みを帯びていたのに対し、BXは極端に直線的であったために、当時のシトロエニストからはシトロエンらしくないという声もあったが、今の目で見れば十二分にシトロエンらしくエキゾチックに感じられるのではないだろうか。