本気を出すのは2030年?

日本では、2020年をめどに超小型EVを導入する。これは、人口が密集する都市部と過疎が進む地方では、生活様式や公共交通機関の整備状況に大きな隔たりがある日本の特殊事情に合わせるためだろう。

  • トヨタEV普及説明会のスライド

    トヨタが日本市場に投入する超小型EV

また、高齢者による交通死亡事故などが多発する中で、運転免許証返納の気運が高まっていることから、公共交通機関が十分に整っていなかったり、廃止されたりする地域へ向けた支援策として、超小型EVを普及させたいという思いもあるはずだ。一方、都市部では、商用EVとして「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)への道筋を検証する考えもあるだろう。実際、EVの開発責任者は、「地元の日本であれば、そうした検証もやりやすい」と語っている。

  • トヨタEV普及説明会のスライド

    トヨタは「MaaS」で使用することも視野に入れて超小型EVを開発しているようだ

超小型EVの販売に関して寺師副社長は、「必ずしも既存の販売店を通じてということではなく、何か新しい取り組みが適しているかもしれない」と語っていた。すなわち、これまでのようにクルマを「所有するもの」と考えるのではなく、クルマを「利用するもの」と捉え、原価がなお高いとされるリチウムイオンバッテリーの負担を軽減したいと考えているのではないだろうか。

実際、現時点で市販されているEVの価格は300万円以上だ。超小型EVが200~300万円したのでは、誰も手を出さないだろう。すでに中古EVも市場に出回っている。近距離で使用するため、低価格でEVを手に入れたいと考えるなら、中古で十分だ。

いずれにしても、日本市場へ向けては、超小型EV導入以外の具体策は示されなかった。寺師副社長は「2030年までには、右ハンドルの日本市場に合ったEVを販売したい」と述べるにとどめた。2030年といえば、先ごろ公表された新たな燃費基準の施行が予定される年である。乗用車平均でリッターあたり25.4キロの燃費性能を求められる新たな基準では、エンジン車はおろか、HVでも車種によっては対応が難しくなる。その時期にはトヨタも、日本で本格的な(?)EVを売り出すということなのだろう。