ストリーミングの勝者たるスーパースターたちを襲う、大いなる変化の波

新たに発表された統計は驚くべき事実を明らかにした。ストリーミング市場における音楽界のスーパースターたちのシェア(およびSpotify等から彼らに分配される印税収入)は、過去3年間で著しく減少している。その理由とは?

SpotifyやApple Music等のストリーミングサービスにおいて最も稼いでいるアーティストはと尋ねられれば、大半の人はドレイクやアリアナ・グランデ、エド・シーラン、ビリー・アイリッシュ、カリード等、言わずと知れたスーパースターたちの名を挙げるだろう。事実彼らは最近、全世界を対象とするメジャーなチャートの頂点に立っている。

以前にも伝えた通り、これらのプラットフォームの売り上げ分配システムはそういったスーパースターたちのために考案されたと言っていい。Spotifyの「サービスベース型」の印税支払モデルでは、同サービスが得た利益の何パーセントかをアーティストが(多くの場合はレーベルを介して)受け取る仕組みになっており、その数字は1ヶ月間におけるSpotify上の全楽曲の総再生回数に対する各アーティストのシェアによって決定される。(言い方を変えれば、月に9.99ドルを支払う有料会員がある無名のインディーアーティストの曲だけを聴き続けたとしても、そのアーティストがそのユーザーの9.99ドルを受け取るわけではないということだ。そのお金は同社の売り上げとなり、その総額が世界中のアーティストに分配されることになる。その中にはもちろんドレイクやアリアナ・グランデ、エド・シーラン等も含まれている)

この構造を見る限り、スーパースターたちがストリーミングサービス市場におけるシェアを益々拡大し、そこから得る印税収入は増す一方だと考えられるだろう。しかし、それは事実ではない。

以下に掲載したアメリカでのストリーミングプラットフォームにおける統計によると、むしろその逆であることがわかる。ストリーミング市場における音楽界のスーパースターたちのシェア、およびSpotify等から彼らに分配される金額は、過去3年間で著しく減少している。

その兆候を最初に示したのが、1月に発表されたMBWによるレポートだ。BuzzAngle/Alphaのデータによると、アメリカのストリーミング市場における上位50曲の総再生回数は、去年1年間で合計37億回となっている。2017年にはその数字が147億回であったことを踏まえると、2018年にはそれが約4分の1にまで減少していることがわかる。

図:アメリカにおけるストリーミング市場上位50曲の合計再生回数(単位は10億)


こういった変化はまったくの想定外だったに違いない。アメリカにおけるストリーミング市場は順調に拡大を続けており、2018年度の総再生回数5346億回という数字は前年比42パーセント増となっている。その一方で、ストリーミング市場全体に対する上位50曲のシェアは0.7パーセントであり、前年の3.9パーセントから大きく減少している。
 
範囲をトップ500曲に拡大してみても、その傾向は同じだ。Buzzangle/Alphaのデータによると、Spotify等のプラットフォームにおける上位500曲のアメリカ国内での総再生回数は、去年1年間で合計550億3000万回となっている。前年と比較するとその数字は21億7000万回増となっているが、すべての楽曲を対象とした場合のアメリカ国内における総再生回数が実に1577億回増加していることを踏まえれば、上位楽曲の再生回数の増加率が驚くほどのものではないことがわかる。

これが意味するのは、昨年度のアメリカにおけるストリーミング市場成長の98パーセント以上が、上位500曲以外のものに起因しているということだ。

そこで気になるのは、上位500曲以外ではどういったアーティストが人気を博しているのかということ、そしてその状況がストリーミング市場を独占してきたスーパースターたちにどう影響しているのかという点だ。


ゆっくりではあるが確実に、ストリーミングというビジネスモデルがより公平なものへと変化しつつある

その回答を導き出すべく、筆者はBuzzAngle/Alphaによる統計をもとに、過去3年間のアメリカにおけるストリーミング市場(注::ミュージック・ビデオは対象としていない)の上位5曲、10曲、25曲の合計再生回数を年ごとに算出した。(気になっている方のためにアメリカにおける最多再生回数を誇ったアーティストを述べておくと、2016年はドレイク、2017年もドレイク、そして2018年もドレイクだった)

この計算によって、SpotifyやApple Music等のプラットフォーム全体に対する大物アーティストたちのシェアが判明すると同時に、各年の上位500曲のシェアの著しい低下との関連性が見えてくる。

まず最初に、アメリカ国内のストリーミング市場上位5曲、10曲、25曲の合計再生回数を年ごとに算出した以下の図を参照してほしい。

図: アメリカのストリーミングプラットフォームにおけるスーパースターたちの合計再生回数(単位は100万)


見ての通り、3つのカテゴリーすべてが年ごとにその数字を順調に伸ばしている。2018年における上位5アーティストの総再生回数(223億回)は、2016年の数字(129億回)のほぼ2倍となっている。

しかし、アメリカにおけるストリーミング市場全体に対する彼らのシェアは、実のところ減少している。

図: アメリカでのストリーミング総再生回数に対するスーパースターたちのシェア


上位25アーティストのカテゴリーに注目してみよう。2016年における上位25アーティストの総再生回数は全体の12.8パーセントだったのに対し、2018年は11パーセントとなっている。

2年間で1.8パーセント減少という結果は注目に値しないと思われるかもしれないが、2018年度のアメリカでのストリーミング総再生回数(5346億回)の1.8パーセントは、実に96億回に上る。事実上、上位25アーティストはその膨大な数字をランク外のアーティストたちに奪われた形だ。

かなり大まかな数字だが、この96億回という再生回数がアーティストおよびレーベルにもたらす印税収入は、約3800万ドルに上ると考えられる。

こういった傾向と、古い楽曲よりも新しいアーティストたちがストリーミング市場におけるシェアを伸ばしている事実を考慮に入れると、世界中の音楽業界で大きな変化が起きていることがわかる。それはストリーミングの勝者たるトップアーティストたちが持つ何百万ドルという予算とは無縁の、「ミドルティア」と呼ばれる新人アーティストたちが市場におけるシェアを伸ばしつつあるということだ。言い換えれば、ゆっくりではあるが確実に、ストリーミングというビジネスモデルがより公平なものへと変化しつつあるということだ。それはトップアーティストたちが毎年手にする巨大な富がより公平に分配され、より多くのアーティストが音楽で生計を立てられるようになることを意味している。

こういったミドルティアのアーティストたちの躍進を支える企業のひとつがKobaltであり、同社が所有するAWALはいわゆるレーベル業務(制作費や宣伝費の確保等)を請け負いつつも、楽曲の著作権はアーティストに100パーセント帰属する。ニューヨークに拠点を置くKobaltのCEOを務めるWillard Ahdritzは筆者の取材に対し、2018年には世界中で約2万のアングロアメリカン系アーティストたちの楽曲が何十万ドルという利益を生み出したと語った。先述の傾向を追い風とするKobaltは、向こう5〜10年間で契約アーティストの数が3倍、つまり6万以上になると予想している。

ストリーミングの隆盛に後押しされる形で、同社は今後ミドルティアのアーティストたちがスーパースターたちやロアーティアのアーティストよりも遥かに早いペースで利益を伸ばしていくだろうと予想している。「我々の目標は、毎年10万以上のアーティストが多額の著作権印税を受け取る状況を生み出すことです」Ahdritz氏は力強くそう語った。

また興味深いのは、同様のコンセプトを掲げているのはAWALだけではないということだ。これまでに1200万ドルの資金集めに成功しているロサンゼルスに拠点を置くディストリビューターStemは、同社の契約アーティストがSpotifyやApple Music、Pandora等に楽曲をアップロードできるツールを今月廃止し、多くのアマチュアアーティストたちの怒りを買った。

その代わりにStemがローンチした「Stem Direct」というサービスは、AWALのビジネスモデルと共通する点が少なくない。同社は何万人というDIYアーティストたちをシステムから締め出しつつ、今後大きな成功を収める可能性があるVIPアクトの数を増やすことにフォーカスする。これらが示唆しているのは、ストリーミング市場において今後成長が期待されるのは「ミドルクラス」のアーティストたちだということだ。彼らの躍進はおそらく、世界のトップスターたちが手にする富の減少につながるだろう。

・著者のTim Inghamは、Music Business Worldwideの創設者兼出版人。2015年より、世界中の音楽業界に最新情報、データ分析、求人情報を提供している。毎週ローリングストーン誌でコラムを連載中。