RPA総合プラットフォーム「RPA BANK」を運営するセグメントは6月7日、東京国際フォーラムにて「RPA DIGITAL WORLD TOKYO 2019」を開催した。本稿では、多数の業種業界でRPA導入支援を手がけてきたエル・ティー・エス シニアマネージャー 関野まり氏による講演「RPA進め方再考と失敗しないデジタルトランスフォーメーション」をレポートする。

  • エル・ティー・エス シニアマネージャー 関野まり氏

RPAが当然になり、「そんなことを手でやっていたの?」と思われる時代がくる

関野氏は講演の冒頭で、昨今のRPAを取り巻く状況について「お祭り騒ぎなところがある」と過度な期待が先行している様子を指摘しつつも、「手書きでやっていたことをワープロで行うようになっていったように、RPAも今後企業活動におけるスタンダードなものになっていくことが予見される。RPA自体はパソコン、システム間でデータをコピー&ペーストしているだけのもの。未来の人から見たら『そんなことを手でやっていたの?』と思われる時代がやってくるかもしれない」と、RPAをはじめとするデジタルツールの利活用は今後も進んでいくという見通しを示した。

だだし現状では、企業はRPAに対して大きく分けて下記3つの課題を抱えているという。

1. 成功事例はあるが、自社に合うものがわからない
2. トップダウン、ボトムアップのどちらで進めていけばよいかわからない
3. 導入後に課題が発生してしまった

自社にあった導入パターンは何か?

1つめの自社にあった導入パターンがわからないという課題に対して関野氏はまず、全社的に大規模RPAを導入するパターンと、各部署でフィットした業務に対して現場で作成していくパターン、そしてスキル人材を育成するパターンの3つに導入パターンを分類した。

関野氏によると、小規模対応/例外対応したい場合や、すでに業務整理ができている場合には、現場で作成していく"小回り"パターンが、抜本的な見直しが必要だったり、業務整理が行われていなかったりする場合には、組織横断的に大規模なRPA導入を検討するパターンが向いているという。また、スキル人材を育成するパターンに対しては、「大変な労力がかかる」としつつも、「人的戦力が増えることで長期的な効果が期待できる」と説明した。

  • RPA導入の進め方典型パターン

トップダウンで進めるべきか、ボトムアップで進めるべきか

では、RPA導入は、俯瞰的・経営的視点から抜本的改革を進めるトップダウン型、現場ニーズをすくい上げるボトムアップ型のどちらで進めていくべきだろうか? 関野氏は、それぞれにメリット・デメリットがあるとする。

「トップダウンで行う場合は、俯瞰的視点が見える化されていないと号令をかけづらく、また実行した場合に業務フィットが難しくなる場合が多いというデメリットがある。一方で、前提条件が満たされていれば、全体ビジネスとして最適化され、デジタルトランスフォーメーション(DX)の下地となりうる。

ボトムアップに適するのは、ITリテラシーを持つ人たちが現場にいる場合。人材やアセットが今後の強みになっていく。ただし、個別最適で全体最適化につながっていきづらいのがネック」(関野氏)

また、トップダウンで号令をかけるが、実際には現場のニーズに従って外部ベンダーがロボを作成するような、トップダウンとボトムアップがミックスされたような場合には「両方からのサンドイッチ型を勧めている」と関野氏。「経営的視点を持ちながら現場ニーズを拾い上げることを推奨する。バランス感は会社によって異なるが、全体最適を目指す場合はトップダウンに重きを置く、現場にスキルを持たせて変革への強みとしたい場合はボトムアップに重きを置くといった形でバランスをとるべき」と、目的に応じてトップダウン/ボトムアップのバランスを調整していくことの重要性を述べた。

  • トップダウンとボトムアップの定義