TOKYO, JAPAN - MARCH 18: Outfielder Ichiro Suzuki #51 of the Seattle Mariners stretches prior to the preseason friendly game between Yomiuri Giants and Seattle Mariners at Tokyo Dome on March 18, 2019 in Tokyo, Japan. (Photo by Masterpress/Getty Images)

全盛期イチローは股関節脳に優れていた

 世界のさまざまな種目のトップアスリート、たとえば、ジョージ・シスラーのメジャー歴代シーズン最多安打記録を更新した2004年前後のイチローなどは、日本が生んだアスリートの中では、本当に頂点ともいえる股関節使いができていました。
 
 私のような運動科学の専門家からすると、当時のイチローの動きは、股関節が動いているように見えました。つまり、ユニフォームを着ていても、服の上から彼の股関節の動きがわかるぐらい、股関節を鮮やかに使えていたことを覚えています。あのような小さな細い身体ながら、過酷なメジャーリーグの世界の中で長く、トップ選手として活躍し続けることができた要因のひとつが、この股関節の優秀さにあることは、間違いありません。
 
 とくにイチローはバッティングだけでなく、走塁や守備なども、超一流であったことを忘れてはいけません。体格、体力の面で、身体資源に恵まれていないにもかかわらず、首位打者、盗塁王、ゴールドグラブ賞などのタイトルを数多く取ることができたということは、必要に応じて使う身体の関節(さらには骨格)や筋肉のことを、メジャーリーグのどの選手よりも脳がわかっていた選手だったからに間違いありません。それに尽きると言ってもいいでしょう。
 
 その中でも、関節の中で一番重要な働きをしている股関節、また最も鈍感でもある股関節をキレッキレに使えるほどに股関節脳が優れていたのが、全盛期のイチローだったのです。




大谷翔平の股関節はまだまだ


 イチローの股関節脳の次元から語れば、同じメジャーリーグで活躍中の大谷翔平の股関節は、まだまだ開発ができていない状態です。逆に言えば、大谷には股関節の開発による伸び代が、まだたっぷりと残っているとも言えるでしょう。前著「肩甲骨本」でも紹介したように、大谷は肩甲骨の開発に関しては相当に進んでいる選手です。その肩甲骨に比べると、この股関節、そして股関節とつながっている骨盤骨の開発度は、まったく低い次元でしかありません。
 
 「大谷はあれほど足が速いのに?」と思うかもしれませんし、私自身も、野球専門のネットメディアである『ベースボールチャンネル』で、彼の足の速さを評価していました。しかし大谷の足の速さは、肩甲骨のおかげなのです。我々人類の脳には四足動物時代に作られた、肩甲骨が働くと同時に腸骨も働く「甲腸同調性」というメカニズムが備わっているからです。
 
 それをなぜ多くの選手が使えていないかと言うと、そのスイッチが入っていないからです。人間の脳と身体のスイッチは、テレビやエアコン、パソコンなどの電化製品のように、ポッと触れただけでオンになるようにはできていません。そのスイッチを入れるためには、どうしてもトレーニングが必要で、その方法を紹介したのが「肩甲骨本」でした。
 
 大谷はその肩甲骨が非常によく開発されている選手です。それによって腸骨が働くようになっていて、「甲腸連動」を起こすことで速く走ることができているのです。
 
 
[著者プロフィール]
高岡英夫(たかおか・ひでお)
運動科学者、高度能力学者、「ゆる」開発者。運動科学総合研究所所長、NPO法人日本ゆる協会理事長。東京大学卒業後、同大学院教育学研究科を修了。東大大学院時代に西洋科学と東洋哲学を統合した「運動科学」を創始し、人間の高度能力と身体意識の研究にたずさわる。オリンピック選手、企業経営者、芸術家などを指導しながら、年齢・性別を問わず幅広い人々の身体・脳機能を高める「ゆる体操」をはじめ「身体意識開発法」「総合呼吸法」「ゆるケアサイズ」など、多くの「YURUPRACTICE(ゆるプラクティス)」を開発。多くの人々に支持されている。
 


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