チェインスモーカーズとのコラボで知られる歌姫、ホールジーが「ミレニアル世代の声」となった理由を辰巳JUNKが解説

チェインスモーカーズの大ヒット曲「クローザー」にヴォーカリストとして参加したことでその名を知らしめ、アリアナ・グランデの「サンキュー、ネクスト」を押しのける形でソロシングル「ウィズアウト・ミー」が2週連続全米1位を獲得して話題を呼んだのが、米ニュージャージー出身の24歳、ホールジーだ。彼女が体現するミレニアル世代の価値観とは一体どのようなものなのか? ライターの辰巳JUNKが考察する。

ホールジーは「ミレニアル世代」を象徴するポップスターだ。1980年代から2000年代初頭に生まれたこの年齢層は、インターネットを通してさまざまな境界線を破壊してきた世代とも言える。アメリカの若者の代表であるホールジーを読み解く行為は、このニュー・ジェネレーションの理解を一歩深めることでもあるだろう。

「私たちはニュー・アメリカーナ 合法のマリファナでハイになって ビギーとニルバーナで育った」(「New Americana」)



デビュー・アルバムでそう歌ったように、ホールジーの音楽には複数のジャンルが共存している。彼女が得意とするサウンドはR&B、エレクトロ、ヒップホップ、ロック等を行き来するポップミュージックだ。「ソーシャルメディア出身のジャンル・ブレンディング世代」としてくくるならば、ザ・ウィークエンドと立ち位置が近い。2人のような90年代生まれのミュージシャンは、インターネットの膨大な音楽アーカイブに触れながら育った。それゆえ、ジャンルという境界線をいとも簡単に飛び越え融和させてしまうのかもしれない。

ホールジーが象徴する「ミレニアル世代」は、なにもサウンドだけではない。彼女は「アンチ・ポップスターなポップスター」だ。これは、富や名声を価値基盤とするセレブリティ文化に同調せず、個々人の多様性を重視する、比較的親しみやすいSNS世代のスター像だ。このフィロソフィーが表れた楽曲には、ロード「Royals」やホールジー「New Americana」、アレッシア・カーラ「Scars To Your Beautiful」が挙げられるが、個人の多様性の肯定という面では、最も有名なカルチャラル・モーメントは映画『アナと雪の女王』の「Let It Go」かもしれない。こういったダイバーシティーの尊重や人権意識が「ミレニアル世代」の特徴とされていることは言うまでもない。


さらに、ホールジーは「クィアな女性ポップスター」だ。彼女はスターダムにあがった初期段階からオープンリィ・バイセクシャルだった。マスメディアと結託した大袈裟なカミングアウトも行わないまま、同性との性愛を描く「Ghost」のMVをリリースしている(なお、本作の舞台は東京)。



前世代ポップスターよりもセクシャリティをナチュラルに享受するホールジーの姿勢は、ヘイリー・キヨコやトロイ・シヴァンなどの若手クィア・アーティスト勢に連なっていく。まだまだ壁は大きいが、アメリカで若者から支持を受けるポップスターがセクシャル・マイノリティであることは珍しくもなくなった。ホールジーのHOT100首位獲得は、USポップスターのジェンダーの多様化としても受け止められる事象だ。

一方で、立ちはだかる壁の大きさを示すように、ホールジーは政治や社会問題にも盛んに声をあげる。これもアメリカン・ミレニアルズの傾向と一致している。2018年中間選挙における投票率激増が示すように、今日のアメリカの若年層は政治への関心が高い。闘う若者を代表するポップスターは、中傷に晒される立場でありながら、声をあげ続ける。2018年、ウィメンズ・マーチ(or ”ニューヨーク女性大行進”)の壇上に立ったホールジーは、性的暴行被害の経験を明かしたスピーチをこう締めくくっている。

「やらなければいけないことが、歌われなければいけない歌があります。神は知っています、これが勝たなければいけない戦いだということを」

Edited by The Sign Magazine