ガートナー ジャパンは5月27日、国内企業におけるデータ活用の取り組み状況に関する調査結果を発表した。これによると、国内のユーザー企業で、「全社的に利活用している」と答えた企業は20%、「一部の事業・組織で利活用している」と答えた企業は36%で過半数がデータを利活用している半面、現時点で活用可能なデータからビジネスに十分な成果を得られているかについては「十分に得ている」という回答は3%にとどまったという。

  • データ利活用の現状

    データ利活用の現状

同調査は昨年10月から12月にかけて、全国の従業員数20人以上のITユーザー企業の中から同社がランダムに約5200社を抽出し、電話で承諾を得た上で約2900社に調査票を郵送した上で、フォローアップ・コールなどを実施して回答を得た。回答者には情報システム部門の責任者を想定しており、回答の全返送数(有効回答企業数)は750社だった。

データ利活用の現状を尋ねると「全社的に利活用している」または「一部の事業・組織で利活用している」との回答は計56%だった一方で「利活用しておらず、要望もない」という回答が全体の25%あった。

利活用可能なデータによるビジネスへの成果を聞くと、「十分に得ている」が3%、「ある程度得ている」が34%であり、「あまり得ていない」が31%、「まったく得ていない」が11%だった。

  • 利活用可能なデータによるビジネスへの成果

    利活用可能なデータによるビジネスへの成果

データ利活用について全社的に利活用していると答えた企業(全体の20%)に限定すると、ビジネス上の成果を十分に得ているとの回答は12%となり、回答者全体と比べると4倍になる。しかし「一部の事業・組織で利活用している」という企業(同36%)では1%と大きく減少し、それ以外の企業では0%だった。この傾向は、ビジネス上の成果を「ある程度得ている」という割合でも同様だったという。

ビジネス上の成果を「あまり得ていない」「まったく得ていない」という割合は、全社的か一部の事業・組織のみかを問わず、データを利活用している企業としていない企業では逆転するため、データ利活用の状況とビジネス上の成果には相関関係があると分析。

  • データ利活用の状況とビジネスへの成果の相関関係

    データ利活用の状況とビジネスへの成果の相関関係

今回の調査では、成果を得ているか得ていないかなどの回答が定量的な指標に基づいたものか(感覚的なものではないか)を検証するために、ビジネス成果を判断する定量的な指標の有無も尋ねた結果、データを利活用している企業やビジネス上の成果を得ている企業ほど、定量的な指標を定めていることが明らかになったという。

同社のアナリストでシニア プリンシパルである一志達也氏は「データの利活用からビジネス上の成果は得られているのか - それを確かめるためにも、現状を把握したり改善を実感したりするにも、指標が必要です。定量的な指標を定め、データの利活用を全社的に根付かせるのは、決して容易なことではありません。データを扱うスキルを備え、一定以上の経験を有する人材が組織全体にいなければ、データを利活用する文化は醸成されにくく、十分な成果を得ることもできないでしょう。それだけに、人材の確保は重要ですが、多くの企業では育成や採用の取り組みが進んでいません。人事部門の協力を仰ぎながら、長期的、短期的に人材を確保する方法を計画し、文化醸成と人材育成の両面から取り組んでいくことが重要です」と述べている。