世界一の自動車博物館!?誰でも楽しめるロサンゼルスのテーマパーク

ピーターセン自動車博物館は最高の立地にある。"ミラクル・マイル" と呼ばれるロサンゼルスのウィルシャー・ブルバード沿いにあり、さらにミュージアム・ロウといわれる、ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)、建築&デザイン博物館、クラフト・アンド・フォルクアート・ミュージアム、そして天然アスファルトの中から氷河期の化石が発見されたラールピットが並ぶ一画にある。

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車のコレクションも、出版業界の大物ロバートとマージー・ピーターセンが集めた、ホットロッド誌に取り上げられるようなものに加え、地元のカーコレクターが集めたものもある。地元といっても、ここはビバリーヒルズの近くで、世界有数のクラシックカー・エンスージアストが集まる地域だ。
 
その土地がら、どこの館長も悩まされる資金調達に関しては恵まれていた。ピーターセン夫妻(ロバートは2007年に、マージーは2011年に他界)は、博物館の営業を継続させる協定を結んでいたが、おそらく世界で最も裕福なエンスージアストグループであるチェッカード・フラッグ200が追加支援を行っている。
 
建物は1992年にピーターセン夫妻が購入した西武デパートの跡だ。それは1962年に建築され、地下フロアと、ミラクル・マイルではめずらしい屋根のある駐車場、そしてドラマチックな天井が打って付けだった。1994年のオープン以来、世界中から高い評価を得、多くの来場者が集まった。
 
しかし、博物館のディレクターたちからすると、完璧とはいえなかった。ピーターセン博物館はロサンゼルスの車文化については紹介していたが、世界中の自動車のストーリーにはほとんど触れられていなかった。集客力を上げる必要があり、外観も目立たせる必要があった。外観に合わせた内装も必要で、展示スペースも広げる必要があった。しかし、拡張はできず、建物を壊して立て直すことも不可、さらに改修のための閉館期間も最小限に留めなければならなかった。



新しい会長職にはピーターセンの元ディレクターでアールデコ時代の車の有名なコレクションとして知られる、マリン・オートモーティブ・ミュージアムの創設者であるピーター・マリンが就任した。この人事は、ビバリーヒルズのコレクターで博物館の役員を務めるブルース・マイヤーとデイヴィッド・シドリックの後押しによるものだ。さらにディレクターには、ルーシュ・パフォーマンスとディズニーランドでも経験のあるテリー・カーゲスを迎えた。また、デイヴィッドは、著名建築家のユージーン・コーンに現在の無難な建築をどのように特徴的で、世界一級の建物へと変換させられるのか、一杯飲みながら尋ねた。コーン・ペダーセン・フォックスは、ロサンゼルスを除く全米の主要都市で、NYの現代美術館をはじめとする重要な建築を手がけてきた。
 
「問題は、建物の中にあるものをどう表現するかでした。車の流線的な特徴から検討を始め、スピードを象徴するリボンにたどり着きました」とジーンは告白している。そのリボンは、制作スペシャリストのザーナーによる巨大なアルミとステンレスの作品となり、むき出しと赤く塗られたステンレスは、外壁に鉄のチューブで固定された。夜間はバックライトによって照射され、素晴らしい演出となっている。
 
内装は、既存の構造を活かした改築が行われていた。事務所は地下へ移動し、車移動用のエレベーターを導入。中央には、3階のフロアを結ぶ螺旋階段が設置された。しかし、内装はどうなるのか。インテリアの決定にあたってはザ・シーニック・ルートのウルフ・エンリクソンを呼んだ。

「ピーター・マリンに外装の完成図を見せられ『世界で一番の自動車博物館にしたい』と言われたので、その場で承諾しました。ディレクター、スタッフ(長年ロバートとマージー・ピーターセンに尽くしてきたメンバー)、そして私の統一ビジョンを掲げ、7カ月間を掛けてマスタープランを作りました。これには私のすべてを投入しました。気に入らないという方があれば、すべての責任は私にあります」


 
そして編集部は、わずか14カ月の改修期間を経て、グランドオープニングを迎えた博物館を訪れた。新しいロビーはウィルシャー・ブルバードに面しており、無料で売店に立ち寄ったり、ガラス越しに1階の展示を覗いたりすることができる。
 
入場料を払うとエレベーターで3階「歴史フロア」へと誘導される。単純な自動車の歴史ではなく、コンセプトカー、技術、化、映画、モーターサイクル、カスタマイズカー、そして地域の歴史などをかいつまんで紹介している。
 
2階は、まったく違う次元の展示となっていた。工業フロアなので、車のデザイン、テスト、製造などについて紹介されているのはもちろんのこと、デザイン面に関しては、ここ数十年間で最も成功しているカーデザイナーたちを輩出している、ロサンゼルスの著名なアート・センター・カレッジ・オブ・デザインのサテライトキャンパスになっているのも特筆すべき点だ。学生たちは、このミュージアムスタジオで実際にプロジェクトを進め、来館者は自由にその様子を見る事ができる。
 
フロアを進むとBMWミニとマセラティの製造技術の紹介があり、その対面には博物館所有のGT40 Mk.IIIとフォード所有の2017年GTが展示されている。ここピーターセン博物館のみが、2016年を通してフォードの最新GTを展示する確約が成されている。
 
子供向けにも、これまでで最も高い水準の展示を仕掛けてきた。ピクサー・アニメーション・スタジオと組み、映画『カーズ』をテーマとした展示で、子供たちがタブレットで自分のレースカーをデザインすることができる。ここは『カーズ』のキャラクターたちがステップ・バイ・ステップに指導してくれる。たとえば"メーター"がガイド、"フロー"が初期デザイン、"ルイジ"が製作工程、"フィルモア"が燃料、"ラモーン"が塗装、"サリー・カレラ"が最適化、そして"ライトニング・マックィーン"がデザインされた車のレース出場を承認するといったわけだ。この一連の流れで、エンジン、トランスミッション、タイヤ、カラーリング、そしてレースのレインまで選ぶことができる。各工程は、2階中に設置されたステーションで行う。3歳児から高齢者まで、魅了されずに耐えるのは難しいだろう。
 


これに関連してあるのが"ライトニング・マックィーン"の働きを解説するピクサー・メカニカル・インスティテュートだ。実際には、2007年の NASCARを用いて、タッチスクリーンで指示やアニメーションで解説をしている。
 
角を回ると、フォルツァ・モータースポーツ・レーシング体験のコーナーがあり、フォードGTでバーチャルレースを体験できるシミュレーターが10台も並ぶ。ミュージアムからル・マンのコースをGTでバーチャルレースもできる。
 
リアルな"スチールプロダクト"に話を戻すと、次はモーターサイクルで、マン島TTレースにインスパイアされたしなやかな台座の上に展示されている。その先のガラス戸を開けて進むと屋上に出る。イベントや集まりがここで開かれる。その横にはモータースポーツ・ギャラリーがあり、象徴的なレーシングカー(現在はポルシェ917、935、936、956)が展示されている。正面には幅50mもある180度スクリーンがあり、モータースポーツに関する心を揺さぶるようなコンピレーション映像が流れていた。視聴者の数人は涙を浮かべ見入っていた。
 
そして、ブルース・マイヤーが提供するスペシャル・エキシビット・ギャラリーがある。彼はロバートとマージーに継いで、博物館のために色々と尽くしてきただろう。ここにあるのは銀色に限定したプレシャス・メタル・コレクションで、非常に目を引く展示となっていた。
 
1階はアーティストリ(芸術)・フロアで、ピーター・マリンなどのアールデコの車が展示されており、その奥の部屋には3台のBMWアートカーが並んでいる。そして改修当時、センターを飾っていたのはブガッティT57SCクーペアトランティークで、一番目を引いていた。数カ月毎に車は入れ替わる。
 
ピーター・マリンは控えめながら「世界でトップ10の自動車博物館に入ると思うが、個人的には上位5位から3位には入ってほしいと思っています。メルセデス・ベンツ、ポルシェ、そしてフェラーリの博物館とは間違いなく同じレベルで、しかも奥が深い。したがって、私たちは1位かもしれないのです」と語った。



現在は2020年5月まで、ハリウッド映画に登場した特別な車やバイクをフューチャーした企画展が開催されている。