30代以降の女性に多く、頬に左右対称に茶色のシミが出現する肝斑(かんぱん)。飲み薬で実際に肝斑は消えるのか、その効果と副作用、注意点等について解説します。

◆シミの種類……日光黒子・肝斑・そばかすなど
シミには日光黒子(にっこうこくし)、肝斑(かんぱん)、一般的にはそばかすと呼ばれる雀卵斑(じゃくらんはん)、炎症後の色素沈着など、さまざまな種類があります。それぞれのシミの種類に合わせて、適切な治療法で対処することが大切です。

これらの中でも、両頬に対称的に色がつくタイプのシミである肝斑は、レーザーやフォト治療が効きにくく、治療が難しいことが知られています。

◆肝斑の症例写真・トランサミン(トラネキサム酸)の効果
■肝斑の症例写真
べたっと頬が全体的に茶色くなった肝斑の重症例。このような典型的なタイプにはトランサミンの効果が出やすい
肝斑は、主に30代以降の女性によく見られ、頬に左右対称に出現する茶色のシミです。

この肝斑に効果があるのが「トランサミン」という飲み薬です。トラネキサム酸が成分で、処方される「トランサミン」の他、「トランシーノ」という名前でL-システインやビタミンCと配合されている市販の製品などもあります。

トランサミンは血液の塊を溶かしたり、炎症を起こす「プラスミン」という物質の作用を抑えます。のどが痛い時に内科に行って、トランサミンを処方された経験のある方もいると思います。私も経験がありますが、これはトランサミンが炎症を抑え、のどの腫れを抑える効果があるためです。

プラスミンはそれと同時にメラニンを作るのを刺激する作用があります。そのため、トランサミンによってプラスミンの作用を抑えることで、肝斑が薄くなる効果があるので
す。

◆トランサミンによる治療は肝斑以外のシミにも有効か
一方で、トランサミンはどのシミにも効果が証明されているわけではありません。上で解説した通り、30代以降の女性によく見られる「肝斑」には効果がありますが、肝斑以外のシミへの効果はまだはっきりとしていません。

最近ではトランサミンが炎症後の色素沈着を抑える可能性がある、という研究成果があり、今後肝斑以外のシミ治療に応用が期待されています。

また、証明はされていないものの、レーザーや手術などの施術の後に皮膚が炎症を起こしてメラニンがついてしまう炎症後色素沈着という現象を和らげる効果は期待できるかもしれません。

◆肝斑を薄くするためのトランサミンの使い方
肝斑には他のシミに比べてレーザーが効きにくく、トランサミンの飲み薬は有効な治療法です。通常、2~4カ月ほど内服することで効果が現れます。

経験的には最初の肝斑の症状が強いほど効果を実感しやすく、2~4カ月で大きな改善が見られます。もともと肝斑の程度がひどくない場合には劇的に効果が現れることは少なく、徐々に効果を実感します。

トランサミンの飲み薬と、メラニンを作るのを抑えるハイドロキノンやルミキシル、メラニンを外に排出させるトレチノインといった塗り薬を併用していくのがおすすめできる肝斑の治療です。

レーザーを使用する場合は2~4週程度おきに弱めの出力でメラニンに反応するレーザーを当てる、「レーザートーニング」と呼ばれる方法が効く場合があります。

この場合はレーザーの種類にもよりますが、5~15回ほど弱めにレーザーを当てることを繰り返すことで肝斑を悪化させることなく少しずつ改善させることを目指します。

非常に短い間隔(ピコ秒の単位)でレーザーを当てることのできる、ピコレーザーによる肝斑治療も試す価値のある治療です。

◆トランサミンの服用量と治療期間の目安
トランサミンにはカプセルと錠剤があり、いずれも通常は1粒250mgの量です。肝斑治療に使うトランサミンの量がクリニックによって異なることに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。

一番少ないと1日2錠を2回にわけて飲む1日500mgの量、一番多い時で1日6錠を3回にわけて飲む1日1500mgの量で処方します。

どの量でも肝斑に治療効果があるというデータがありますので、私見では潜在的なリスクを最小限に下げて1日2錠を2回にわけて飲む1日500mgの量が適切だと考えています。

この少なめの量で治療しても私の経験では肝斑に効果が出ます。患者さんが多めの用量を希望される場合には柔軟に対応しています。
余談ですが、市販のトランシーノでは1日量が750mgとなっています。

◆トランサミンの副作用・デメリット・注意点
飲み薬を使う時には、塗り薬以上に副作用が気になる方がいらっしゃると思います。

トランサミンは血の塊を溶かす作用のあるプラスミンの作用を抑え、出血を抑えることが知られているため、手術後の出血を抑える目的や、月経で出血が多い場合にも治療薬として使われることがあります。

ただし、この場合には通常肝斑に使うよりも多めの用量でトランサミンを使います。

トランサミンを使った時に考えうるリスクとしては、血液をサラサラにするプラスミンの作用を抑えることで、「血栓症」といって血が固まって血管が詰まってしまうことが挙げられます。

しかし理論的にはリスクがあるものの、トランサミン内服により実際に血栓症になったという報告は調べた限りほとんどありません。数カ月の間、肝斑に使う分にはまず問題がないということができます。

しかし、深部静脈血栓症といった血の塊で血管が詰まる病気を患った方がある方、血が固まりやすい傾向があると指摘されたことがある方は使用を控えた方がいいでしょう。喫煙やピルの内服によっても血は固まりやすくなりますので、その場合も潜在的なリスクは高くなります。
トランサミンが効く場合には2~4カ月程度で効果が出てきます。数カ月したら一度内服を終了して、再度肝斑によるシミが濃くなってきた時に内服を再開するというように、永続的にトランサミンを飲み続けるのは避けた方がいいと考えます。

◆塗り薬としてのトラネキサム酸の使用効果
飲み薬のトランサミンだけでなく、塗り薬のトラネキサム酸にも肝斑に効果があるという研究のデータが増えてきています。

肝斑の患者さんに対して、顔の半分にトラネキサム酸、逆の半分にハイドロキノンを3カ月間、1日2回塗ったところ、効果は同等か、むしろトラネキサム酸の方に効果がある、というデータも出ています。

マイクロニードリングもしくはフラクショナルレーザーといった施術で皮膚表面に目に見えない程度の細かい穴を開け、同時にトランサミンを外から塗り、浸透を良くする、という施術も最近はクリニックで行われています。

飲み薬のトランサミンに比べると治療効果のデータが少ないのでこれからさらに効果の検証は必要ですが、最近増えてきているトラネキサム酸を含んだ塗り薬は、肝斑に試す価値があるといえます。

◆まとめ……シミの種類に合わせて適切なケアを
シミやくすみは年齢とともに増えていきます。特に女性の場合は妊娠、出産を通して肝斑ができることもありますし、30代以降はシワや肌のハリとともに、見た目の年齢を決める重要な要素のひとつになります。

冒頭でも述べた通り、シミには日光黒子、肝斑、雀卵斑(そばかす)、炎症後の色素沈着などさまざまな種類があり、最適な治療法も少しずつ異なります。

そのため、自分で考えて治療を開始するのではなく、最初に皮膚科を受診し、自分のシミがいったいどの種類のものなのかを見極めてもらうことが大切です。

また、どのシミに対しても、日焼け止めで予防することは非常に大切ですので、日焼け止めを季節や天気にかかわらずこまめに塗ることは実践する価値があります。

肝斑であればトランサミンの飲み薬がいい治療になりますので、気になっている方は皮膚科の先生に相談してみてください。ハイドロキノン、トレチノインの塗り薬や弱めに顔全体にレーザーを当てる方法も含めて複合的に治療することで、難治の肝斑も改善が見込めます。

文=野田 真史(皮膚科医)