昨年ローン返済が始まった48歳の方の相談。10年で完済するために投資を勧められ、言われるがままに始めてしまったとのこと。10年返済が現実的かどうかを、住宅ローンガイドの大島浩之さんがシミュレートします。

◆我が家は10年で住宅ローンを完済できるでしょうか?
住宅ローンが10年で完済できるかプロに診断してほしい!今回は昨年ローン返済が始まった48歳の方の相談。10年で完済するために投資を勧められ、言われるがままに始めてしまったとのこと。10年返済が現実的かどうかを、住宅ローンガイドの大島浩之さんがシミュレートします。

◇相談内容
2400万円の住宅ローンを10年で返済したいと考えております。ある業者に相談した際、NISAやつみたてNISA、積立投信で600万円以上の投資を勧められ、言われるがまま始めました。現在つみたてNISA以外はマイナス収支になっています。この内容で10年で住宅ローンを完済することは可能でしょうか。

◇相談者
ロレックスさん(48歳男性・会社員・既婚)
家族構成/妻43歳(契約社員)
住まい/三重県(戸建て)

◇住宅ローンの状況
物件/新築一戸建て
物件価格/3000万円
住宅ローン/2400万円
金利/変動0.825%
期間/31年
ローン開始日/2018年11月

◇家計収支状況
<収入>
手取り月収/夫:20万円、妻:15万円
年間ボーナス/夫:20万円

<支出>
月の支出:23.8万円

・主な支出内訳
住宅ローン/7.5万円
食費/4万円
光熱費/2万円
通信費/1.3万円
娯楽費/2万円
雑費/1万円
保険料/6万円
(医療保険2万円、養老保険3万円、車両保険1万円)

<貯蓄>
貯蓄総額:1125万円(預金500万円、投資625万円)

◆住宅ローン控除を最大限生かすパターンで10年完済を診断
いただいた家計の収支状況を元に、今回は経過年数9年後に住宅ローン残債1759万円を完済すると仮定し、今後10年間のキャッシュフローを計算してみます。

※収入と基本生活費は変わらないものとします。また物価上昇や運用利回りの変動率をゼロとしています。

◇繰り上げ返済した場合の10年間の貯蓄合計推移
繰り上げ返済した場合の10年間の貯蓄合計推移 ※単位は万円
貯蓄合計にはNISA、つみたてNISA、投資信託の投資も含めています。投資の元本±0と仮定した場合でも、経過年数6年後にはローン残債を貯蓄合計が上回ります。

そのため、ロレックスさんの場合10年といわず、経過年数6年後であれば、完済自体の可能性アリということになります。もっとも、ご存知のとおり、住宅ローン控除の適用期間中であるため、税金の還付額がなくなってしまうことは考慮しなければなりません。

また、住宅ローン債務者が亡くなるといった万一のことを考えれば、団信をフル活用するという意味でも、あえて、繰り上げ返済しないという選択をすることもありますね。

※なお、住宅ローン控除の「年末残高×1%」と借入金利とを比較した際、「1%」より低い場合は絶対に繰り上げ返済すべきではない、というわけではありません。元利均等返済であれば、住宅ローン控除を加味したとしても、利息を多く支払う借入当初に少しずつでも繰り上げ返済したほうが、10年後に一気に完済するよりも総支払額をおさえられるケースが多いです。

◆支出の再把握は必要だが10年完済の可能性は高い!
現時点での貯金額や今後の収支から見ても、貯蓄額が着々と増える家計といえます。

加えて、9年後に住宅ローンが完済されれば、貯蓄ペースはぐっと上がるので、老後に向けてこれも安心材料となるでしょう。

あくまで概算にはなりますが、今の家計状況で返済10年経過後、完済することは可能であり、メリットも大きいといえます。

ただし、一戸建てにお住まいのため、お風呂などの水廻りのリフォーム代のほか屋根・外壁の修繕費用も数十万円単位で予定しなければならないことには注意です。また、お車をどれくらいの周期で買い替えるかということでも、収支計画が異なってきます。

さらにいただいている情報に限れば、お二人で協力しながら、毎年約150万円(10年後からは約240万円)の貯蓄ができる収支状況ですが、ガソリン代やご夫婦の小遣いなど、月の支出はもう少し多いのではと予想されます。すでに1000万円以上貯蓄ができている計画性のあるご家庭ではありますが、今一度、月と年間の支出を把握しておきましょう。

また今後のリスクとして、ご年齢や社会情勢等の影響でどちらかが働けなくなる、収入が大幅に減る、となる可能性もゼロではありません。

◆「つみたてNISA」も「積立投資」もリスクのある投資であることにかわらない
いただいているロレックスさんの家計ですと、ご希望の10年完済自体は現実的といえます。また、今回の仮定条件では投資元本を±0で試算してますから、投資云々ではなく、ロレックスさんの家計に10年で返済できるポテンシャルがあるということです。

ただし、金融商品取引業者に勧められるがまま投資を始めてしまったという点は、決して褒められたことではありません。

しかし、現時点でマイナスとなっている状況を把握されている点では、意識が高いともいえます。というのも、多くの方は一度投資したら、その時点でお金に対する管理意識が薄れがちだからです。手数料が発生していたり、元本が保証されているわけではないリスクを忘れたり、また、分配金があることで安心してしまう場合もあります。

長い目で見れば、時間分散効果によって一定のリスクを回避することができるものの、行っているのは「リスクのある投資」であることを再認識いただければ幸いです。

特に、投資が原因でご夫婦の仲が悪くなるようなことがあっては本末転倒です。お互いの投資リスクに対する考え方をすり合わせ、ご夫婦で仲良く、これからの生活を送ってくださいね。

※診断結果はあくまでも現在の家計状況からの概算です。将来を保証するものではありません。

解説・キャッシュフロー表作成:大島浩之

住宅ローンを切り口に、ライフプランニングを提案するCFP。上智大学文学部新聞学科卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、現在では、FP試験の講師を務める傍ら、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングの相談を受ける。

文=All About 編集部