スポーツ科学の分野で運動能力の発達やトレーニング、コーチング、また生まれ月が及ぼす影響などについて研究を行っている東京農業大学の勝亦陽一准教授。多くの少年野球の現場や各年代のデータについて知る勝亦准教授に、最近話題となっている野球部の丸刈り、部活動の時間制限についてお話を聞きました。



――高校野球に限らず、小学校中学校年代でも野球部は坊主頭というチームが多いです。
「みんな坊主というのはいち早くやめた方がいいと思います。坊主でないといけない明確な理由がないですよね。昔は野球部に限らず中学生はみんな坊主でした。当時とは時代や文化も変わったのですから、必要がないと思うルールは改めるべきです。そこには大人が子どもを管理しやすいという側面が大きいように感じます。子どもの育成、成長にプラスになっているのかどうかが大事です」

――制限する側の意見としては、髪の毛に気を使うくらいならもっと野球に集中した方がいいだろう、というものが多いように感じますが。
「坊主にすることで覚悟する、腹をくくる、という意味があるのかもしれませんが、野球をすることに対して、そのようなハードルを設ける必要があるのでしょうか? 理由があって、自分で決めた坊主であればいいと思います。ただ何でもかんでも坊主が素晴らしい、坊主であるべきだ、という考えはやめた方がいいと思います」

――みんな分かっているのになかなか自由な髪型のチームが増えないのはなぜなのでしょうか?
「坊主にこだわりのない指導者もいると思います。でも、みんな坊主なのに、自分のチームだけ長髪、という状況を避けたいのではないかと思います。メディアの方も含め、坊主については触れないことが一番いいのかもしれません。議論が過熱するほどおかしなことになるので、どこがどんな髪型にしていても気にしない、というのが自由な髪型のチームが増える最善の方法のように思います」

――テーマは変わりますが、公立の中学校、高校で部活の時間を短縮しようという動きについても賛否両論分かれています。こちらについてはどうお考えですか?
「活動時間を減らすということ自体は悪いことではないと思います。活動時間が長い、休みの日がないから野球をやらないということが、野球をやることの一つのハードルになっています。多くの子が野球をやりやすい設定をしたうえで、もっとやりたい子は他でやるようにした方が僕はいいと思います」

――もっとやらせてほしい、という指導者の声も多いようですが。
「現状のルールでは難しい部分は多いのでしょうけど、やりたい選手には部活動時間の以外にやる、という形にしていけばいいと思います。学校単位で難しければ、地域単位で受け入れる。学校と地域が協力していく。そうなっていくような気がしています」

――野球はどうしても練習時間が長くなりがちですが、無駄も多いように思います。
「限られた時間の中で結果を出す、という工夫を考えないから延々とやってしまうというのはありますね。時間が限られているのであれば、選手それぞれが家で個人練習をやるという方法もあります。全て全体練習にする必要はなくて、その個人練習をどんなことをするべきかを指導者が一緒に考える。言ってみれば宿題ですよね。部活動に宿題があってもいいと思います。そういう自主練習や宿題だと選手がやらないから、長時間拘束するという考えがまだ多いのではないでしょうか。そうすることが子どもを信用していないことですし、ひいては子どもの成長の妨げになっているとも思います」

――練習を休みづらいという環境も野球にはあるように思います。
「休んだ分、参加したときにしっかりやればいいだけのことだと思います。例えば会社の有給休暇という考え方を入れてもいいかもしれません。『年間で何日は休んでいいよ、ただこの期間は集中してやろう』というようにオンとオフを設けるのも一つの方法ですよね。そうやって結果が出るようなチームを魅力的に感じる選手や親もいるのではないでしょうか」

確かに色んな考え方があって、多様性が認められた方が野球の裾野も広がりそうですね。貴重なお話、ありがとうございました。
(取材:西尾典文/写真:編集部)