政府は、大学や国の研究機関が民間企業との協力を一層強化し、研究開発の効率を向上させるための新しい制度を創設するための検討を始めた。検討作業は安倍晋三首相が議長を務める総合科学技術・イノベーション会議の場で進める。大学や国の研究機関が本体から切り離れた「出島」のような機関を設立することなどが柱になる見通しだ。

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    研究開発機関の「出島」のイメージ(第44回総合科学技術・イノベーション会議に提出された資料から/提供:内閣府・総合科学技術イノベーション会議)

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    5月13日に首相官邸で開かれた第44回総合科学技術・イノベーション会議で発言する安倍晋三首相(右端、提供・首相官邸)

新制度の構想は、13日に開かれた第44回総合科学技術・イノベーション会議で示され、会議では「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」の名称で具体的な内容を検討し、年内をめどに新制度内容を策定することを確認した。

関係者によると、政府が新制度を設けることになった背景には、研究力強化の鍵を握る研究人材や資金の確保、研究環境の整備のいずれについても、従来の取り組みでは不十分との共通認識がある。特に大学に関しては、従来の人事・給与制度や資金運用の仕組みなどが障害となり、研究が効果的に進んでいない実態がある。このため、「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」は、内閣府と文部科学省、経済産業省が中心となり、政府一体で産業界と連携しながら具体的な内容を決める。

現時点での案では、大学や国の研究機関の本体とは別に共同研究機関の外部化を可能にするために「出島」のような身軽な組織を設立する。そこに大学などが「出資」し、国内外の企業から協力を得ながら機動的な研究を後押しする。優れた成果を期待されている研究者を大学に籍を残したまま出向させることや、この「出島」が利益を上げた場合、本体が一部を回収することなどが検討されるという。

「出島」には企業の協力や参加がポイントになるため、開発した新技術の特許取得や税制面での優遇措置を設けることも視野に置いている。「出島」は単独の大学・国の研究機関が設立するケースだけでなく、複数の機関が共同で設立することも想定している。

この「出島」構想は米スタンフォード大が設立した「SRIインターナショナル」などがモデルという。SRIインターナショナルは、1946年にスタンフォード大学から切り離れてできた「スタンフォード研究所(Stanford Research Institute)」が母体。70年には完全に大学から独立し、75年に SRIインターナショナルと改称された。音声アシストアプリの「Siri」など数多くの世界的な製品や技術を開発していることで有名だ。

「研究力強化・若手研究者支援総合パッケージ」では、この「出島」構想のほか、若手研究者の研究環境を整えることを目的に、研究に専念できる新たなポストの創設や研究事務のアウトソーシングなども検討されるという。

安倍首相は13日の会議で「(研究力強化には)民間資金の積極的な活用が不可欠で、多様な産学連携が可能となるよう、大学・国立研究開発法人による共同研究機能の外部化を可能とする仕組みを検討する考えだ」などと述べている。

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