香港で開催されたアジア最大級の映像コンテンツ見本市『香港フィルマート2019』(会期:2019年3月18日~21日/主催:香港貿易発展局)で、今年は日本の出展社数が、香港、中国を除く海外勢のなかで最も多い数を記録した。その数は93社に上り、総務省、文化庁、経済産業省が取りまとめた「ジャパン・パビリオン」が今回初めてブランド統一を図る試みも行われた。来場した総務省情報流通行政局放送コンテンツ海外流通推進室長・岡本成男氏にその狙いについて話を聞いた。

日本のパビリオンブース

■総務省、文化庁、経産省が連携した「ジャパン・パビリオン」

『香港フィルマート2019』に、今年はアジアを中心に9,000人のバイヤーが参加、35か国・地域から880を超えるエンターテインメント企業が出展した。会場には国や地域ごとにまとまったパビリオンブースも展開され、その中で今年は、日本が“まとまり感”を強調していた。一見してそれが「ジャパン・パビリオン」であることがわかるように、赤と白を基調とした「JAPAN」のロゴと、青と白の色使いで統一。総務省所管のBEAJ(放送コンテンツ海外展開促進機構)と民放連による国際ドラマフェスティバルin Tokyoのブースと、文化庁から委託事業を受けるユニジャパンと経済産業省所管のジェトロによるブースが連携した。どのような経緯で統一ブース「ジャパン・パビリオン」が実現したのだろうか。

総務省コンテンツ海外流通推進室長・岡本成男氏

「ジェトロ、ユニジャパンが支援するブースは10年以上前から『香港フィルマート』に出展されていました。そこに昨年初めて総務省チームが出展し、その後、参加者の方から感想などをお聞きしながら、改善策などを探りました。ひとつの答えとして導き出されたのが『オールジャパン』をしっかり出していく必要があるということ。昨年は同じジャパン・パビリオンでありながら、ジェトロ、ユニジャパンブースとは別の外観だったため、バラバラ感が否めませんでした。そのため、ブースの色合いやかたち、『ジャパン』のロゴデザインを統一することにしました。自治体による北海道、九州、沖縄ブースにも同じ『ジャパン』のロゴを使っていただき、立体的なジャパン感を打ち出すことができました。日本のプレゼンスを示すには効果的なやり方だと思います」。

統一したジャパンのロゴ

期間中、総務省およびBEAJ共催による「フレッシュ・コンテンツ・フローム・ジャパン」と題したジャパニーズ・ランチ会も企画され、海外バイヤーとのネットワークの場が作られた。今年は120名の海外のバイヤーやプロデューサーと日本側参加者の合わせて約220人が出席する会となり、賑わいをみせた。海外マーケットにおいて重要視されるネットワーキング企画についても昨年より改善を図ったことで、集客数の上で結果を得ることができた。

総務省主催のジャパニーズ・ランチ会

「昨年は総務省の主催、BEAJの共催のみで企画し、ティーパーティーとして約130人が出席されました。今年はユニジャパン、ジェトロ、映画製作者連盟にもお声がけし、総務省の主催、BEAJの共催に加えて、協力としてユニジャパン、ジェトロの名前も連ねてもらい、ランチビュッフェをご提供しながらネットワーキングの場を作りました。また参加各社から映像を集めて、海外に売り出されている映像をひとつにまとめて上映する機会も初めて試みました。さらに海外バイヤーの方々と会話を弾んでもらえるような工夫も凝らしました。表に日本の事業者名と販売しているコンテンツの写真や、セラーご担当者の方のお名前と顔の一覧、裏には日本地図と名産物の写真とイラストの入ったファイルを各テーブルに用意しました」。

ジャパニーズ・ランチ会に用意された日本紹介ファイル

■ローカル局が海外に地域の情報や魅力を発信していくことがひとつのビジネスモデルに

『香港フィルマート』に出展した93社の出展社の内、NHK、日本テレビ、TBS、テレビ朝日、フジテレビ、角川、東映などはこれまで通り単独ブースを展開した。海外展開が事業化され、海外とのネットワークも独自に構築されている場合はある程度経費をかけながら、自前のブースで商談活動を行うことができる。しかし、全て自力でセールス活動をする段階にはまだ至らないローカル局などは出展が支援される「ジャパン・パビリオン」の中で参加しながら、海外展開を一歩一歩進めていく必要がある。こうした現状を踏まえ、国が支援する「ジャパン・パビリオン」が継続されている。

「総務省が放送コンテンツの海外展開に対して支援制度を設けたのは平成25年度からです。これまで海外の放送局と共同製作した番組を海外で放送する取り組みを対象にいろいろなかたちで支援し続けています。完全な自走とは言えないまでも、自局で海外展開を行うことができる局の数が増え、成功事例も出ています。ただし、ローカル局全体でみると、割とまだ先導的なローカル局に限られます。すそ野も広げていくことも今後の課題にあります」。

ローカル局の具体的な成功例を尋ねると、北海道放送、長崎国際テレビの名前が挙がった。北海道放送は北海道農業の魅力を伝える自社制作番組『あぐり王国』を香港で280話のセールス実績を作り、数年先まで放送継続される契約も結ばれている。また長崎国際テレビは、長崎県、長崎市を含める11の自治体から支援を受け、予算計画に沿ってタイで観光プロモーションを目的としたイベント事業を実施し、海外とのネットワークづくりに成功しているという。こうしたテレビ番組、イベント展開から繋がるインバウンド需要を見据え、『香港フィルマート』には、札幌フィルムコミッションと沖縄フィルムオフィス、九州経済連合会といった自治体ブースも展開されている。自治体ごとの細やかなサポートによって地域の放送局から制作会社まで広く参加しやすく、自治体ブースは『香港フィルマート』で定着化しつつある。

自治体ブース、札幌フィルムコミッション

「ローカル局が実施する事業は地域経済が潤うこともひとつの目的にあります。海外展開を通じて、地元企業からスポンサーシップを得ることに繋がったという話があるように、好循環を生んでいるというのです。ローカル局が海外に地域の情報や魅力を発信していくことがひとつのビジネスモデルになり得る。こうした展開の広がりにも期待しているところです」。

インバウンド需要などによって、ローカル局の海外展開が広がっている。こうした理由からも『香港フィルマート』において、国や自治体による支援が継続的に行われ、昨年よりもブランディングやネットワーキングの機会が強化されていることが改めてわかった。後編は中国や韓国対策を踏まえながら、引き続き現地で聞いた総務省の海外展開支援方針についてお伝えする。