『ユーリ!!! on ICE』や『風が強く吹いている』など、数々の話題作に出演し、声優として目覚ましい活動を続ける豊永利行。そんな彼は、声優だけではなく、自身で作詞作曲を手がけるアーティストとしての顔も持つ。

  • 豊永利行

    豊永利行(とよながとしゆき)。1984年4月28日生まれ。東京都出身。スーパーエキセントリックシアター所属。主な出演作は『デュラララ!!』竜ヶ峰帝人役、『ユーリ!!! on ICE』勝生勇利役など

今回は4月17日に約一年ぶりのアルバム『光へ』をリリースした豊永に、楽曲制作の裏側や、アーティスト活動と声優業の違いについて聞いた。

■自分を見つめ直したときに、かけたい言葉を探した

――今回のアルバムタイトル『光へ』には、どのような意味が込められているのでしょうか?

「夢」とか「未来」とか「目標」、そうしたものを光にたとえて、そこに向かっていく、というイメージでこのタイトルになりました。

――ジャケットでも豊永さん自身が、こちらに背中を向けて光に向かっていますね。

今回はジャケットで顔を出したくないっていうのがあって。そもそも『光へ』というアルバムは、「自分自身を見つめ直す」というコンセプトでつくられているんです。だから、聴いてくださるみなさんと顔を向き合わせるのではなく、同じ方向を見て、光に向かっていきたいと思って、背中を向けさせていただいています。

――ステージの照明に照らされているようにも見えました。

初回盤のジャケットはどちらかというと、舞台に立っている自分というのを意識しています。通常盤がプライベートの自分だったら、初回盤は仕事の自分。表現者として、板の上に立っている姿を出そうかなと思いました。

――今回のアルバムは、自分自身を見つめ直したものになっているとのことですが。

今までは人に向けたエールソング、「誰かに活力を与えられるもの」をコンセプトとしていることが多かったんです。でも今回は、35歳になるし、改めて自分自身を振り返ってみたいというのがあって。自分を見つめ直して、どんな言葉をかけようか考えながらつくっていました。エールという部分は変わらないですが、そこに至るまでの経緯は、今までと違うものになっています。

――誰かに向けてのエールと、自分に向けたエール。豊永さんの中ではどのような違いがありますか?

抽象的か、そうでないかですね。自分自身に向けてのエールは、より具体的に、自分の体験をベースにしています。例えば失恋がテーマの「穴」という曲は、自分自身が失恋した時に、時間が解決してくれたことを思い出して書きました。例え話ではなく、「自分はこうして生きてきた」というのを言葉にしていったのは、今までと大きく違う部分ですね。

――今回のアルバムでは4曲を作詞作曲されていますが、他の曲にも、豊永さんの体験や経験が反映されていると。

そうですね。表題曲の「光へ」も、自分が父親になったことをテーマにしていますね。でも、そこをあまり具体的にせず、聴いてくださる方の色々な境遇とリンクしてもらった方が良いなと思ってます。ただ、「未来との約束」だけは完全にノンフィクションです。これに関しては、作詞家としての挑戦がしたくて。実体験からヒントを得るのではなく、完全にノーヒントで、ゼロからつくってみたいなと。

――「潮風」や「太陽」など、爽やかな夏らしいフレーズが並んでいますよね。

割と、春にアルバムを出させていただくことが多かったので、僕には夏の曲が少なかったんですよ。だから、爽やかな曲が書きたいなと思って。ちょっと同窓会というか、青春っぽい感じを意識しました。「サイダー」とか炭酸飲料の CMになればいいなって思いながら。

■ガチで挑戦した「アイドルソング」

――では、「マジカル☆だでぃ?(仮)」も実体験がベース……?

これも実体験……なわけがないですね(笑)。これはネタ曲です。僕のアルバムには毎回ネタ曲というものが入っていて。声優、俳優をやらせていただいているからこそできることをしようと、こういう曲をつくっているんですけど。今回は「アイドルソング」を歌いたいなと思ったんです。

――なぜアイドルソングを?

アイドルのキャラクターを演じさせていただくことはあるけど、女性アイドルの曲を一生懸命に歌う機会って今までなかったんですよ。じゃあガチで作ってみようと。改めて気づいたのは、女性アイドルの方々の歌唱法の難易度の高さでしたね。

――女性アイドルの歌唱法は、普段の歌い方とどう違うのでしょうか?

すごくわかりやすいところで言えば、歌の一節の後ろのほうをしゃくりあげたりとか。あと、歌を息で抜いてごまかさない。最後まで声を出し切るとか、そうした部分は自分の歌い方と大きく違うなと思いました。

――やってみたら、難しさに気づいたと。

女性アイドルの方々って、歌だけじゃなく、さまざまなパフォーマンスでも勝負をされている方々じゃないですか。だけど、あの歌唱法だけをとっても、とにかく難しい。今改めて脱帽しました。ネタ曲ではあるんですけど、自分的にすごくいい経験の場になったなと思います。

――こちらの歌詞は、とても日曜日の朝のアニメらしさを感じる魔女っこモノですね。

そこは完全に意識しましたね! お母さんは魔法少女で、お父さんも魔法少女……。娘も魔法少女だけど、まだお父さんに認められていない。「娘にまだ知られたくない」というお父さんの気持ちもあるんです。