東京大学(東大)を中心とする研究グループは4月25日、オリオン大星雲の中の巨大原始星「オリオンKL電波源I」から回転しながら吹き出すガスの流れ(アウトフロー)の根元付近に、揮発性の低い元素であるアルミニウムを含む分子(一酸化アルミニウム:AlO)が存在することを、アルマ望遠鏡の観測から確認したと発表した。

同成果は、東大/宇宙航空研究開発機構(JAXA)の橘省吾 教授、東大の上塚貴史 特任助教、国立天文台/総合研究大学院大学の廣田朋也 助教、理化学研究所の坂井南美 主任研究員らの研究グループによるもの。詳細はアメリカの天文学専門誌「Astrophysical Journal Letters」に掲載された

これまでの研究では、一酸化アルミニウム分子は年老いた恒星から吹き出すガスからしか観測されておらず、それが固体の微粒子となって銀河を漂い、新たな恒星や惑星の材料となると考えられてきた。しかし、今回、研究グループは巨大原始星の観測から、その分子を発見したほか、空間分布についても、アウトフローが吹き出す根元の付近に限られていることを確認したという。

太陽系で最初につくられた固体物質はアルミニウムやカルシウムといった揮発性の低い元素に濃集した鉱物からできており、これらの物質が惑星をつくる材料となったことがこれまでの研究からわかっていたが、そうした鉱物がどのような環境でどうやって作られたのかについては良くわかっていなかった。

今回の成果を受けて、研究グループでは、原始星周囲での惑星材料の進化の一般的理解を進めることはもちろん、太陽系で惑星の材料がどのようにつくられ、惑星へと進化したのかを理解するための手がかりとなることが期待されると説明している。

また、研究グループでは、こうした観測結果から得られる知見と、はやぶさ2のような小惑星探査機などが地球に持ち帰る実際のサンプルから分かる太陽系に関する知見とを比較することで、太陽系の形成・進化過程が銀河系内の他の惑星系と似ているのか、それとも異なるのかといったことなども議論することができるようになると期待されるともコメントしている。

  • オリオンKL電波源I周囲の一酸化アルミニウム分子の分布

    アルマ望遠鏡が観測した、オリオンKL電波源I周囲の一酸化アルミニウム分子の分布。楕円状の等高線は塵が放つ電波の分布 (C)ALMA(ESO/NAOJ/NRAO),Tachibana et al.