年次有給休暇の消化や時間外労働時間の上限といったところが注目されている「働き方改革関連法」だが、企業が対応すべき項目は他にもある。また、大企業と中小企業で対応すべき内容や時期に違いもある。そうした中、2019年度の始まりにあたっての企業の動きはどうなのだろうか?

「大手企業に関してはすでにトライアルを行ってきており、4月からいよいよスタートということで慌てている印象はありません。中小企業は対応が遅れがちですが、時期集中型の業種だと対応は難しいかもしれません。中小企業にとって、2023年4月に控える中小事業主に対する割増賃金率の猶予廃止が本丸ともいえます」と語るのは、多くの企業に関わってきた大槻経営労務管理事務所 代表社員の大槻智之氏だ。

  • 大槻経営労務管理事務所 代表社員 大槻智之氏

業界別に見ると、飲食業をはじめとするサービス業に対応の遅れが目立ち、コンサルタント業やクリエイティブな職種では進展が早いという。

「労働集約型産業は人がいないとどうにもなりませんから、どうしても厳しい状況にあります。進みが早いのは、時間の使い方がある程度自由な業務です」と大槻氏は現場の実態を語った。

  • 「働き方改革関連法」の施行日 資料:大槻経営労務管理事務所

フレックスタイム制や勤務間インターバルは?

検討しているのは大手企業がほとんどですが、2019年4月1日から施行されたものに「フレックスタイム制の弾力化」と「勤務間インターバルの制度普及促進」がある。

まず、フレックスタイム制の弾力化について大槻氏は、「使いづらくなった裁量労働制からフレックス制へ移行する傾向はあります」としながらも、「精算期間の上限は1カ月から3カ月になったものの、幅は広がっていないので慎重にならなければならない制度です。時間外労働規制に対応しつつ運用するのは難しいので、今まで1カ月精算でやってきた企業はそのままにしておいた方がいいでしょう。これまで利用していなかった企業は安易に導入すると失敗の危険もあります」と指摘する。

勤務形態、賃金精算、労働時間管理の兼ね合いを考えると利用の難しい制度になっているようだ。

もう一つの、勤務時間インターバル制度は、前日の時間外労働が長時間にわたった場合、翌日の勤務開始時間を繰り下げる等で十分な休養を取らせることを義務化するものだ。しかし大槻氏が知る範囲では、実際に新規導入するという話はあまり聞かないという。

先行事例では8時間をインターバルの下限とする企業が多いが、首都圏の通勤時間の長さを考えると十分な睡眠時間を確保できるインターバルとは言いがたい。何かトラブルがあって一時的に超長時間勤務が必要になった場合には、制度が障害となるだけに、見送りになっている企業が多いのかもしれない。

  • フレックスタイム制改正内容 資料:大槻経営労務管理事務所