4月17日、LINEはモバイル決済「LINE Pay」の発表会で、2019年4月後半に実施する「平成最後のキャンペーン」を発表した。注目すべきは、LINE Payの決済に特化した専用アプリのリリースだ。

LINE Payのアンバサダーには女優の今田美桜さんを起用した

これまでLINEは、ほとんどのスマホに入っているLINEアプリを窓口として、さまざまなサービスを提供してきた。なぜこのタイミングで、流れに逆行するような専用アプリを出すに至ったのだろうか。

正味の還元率は20%から15%に低下

LINE Payの国内登録ユーザーは3,200万人。LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏は「国内No.1を自負している」と強気を示す。特に注力してきたのが毎月の後半に実施する還元策「Payトク」で、バーコードやQRコードによるコード支払いの利用者は21倍に増加したという。

還元キャンペーン「Payトク」でコード支払いは21倍に

平成最後となる4月後半は「実質最大20%還元」として、4月18日から30日までの期間中に1人あたり最大5,000円を還元する。

気になるのは「実質最大」という表現だ。正味の還元率は15%で、そこに利用量に応じて決まるマイカラー制度やコード支払いのポイント増量を加えて合計20%という建て付けになっている。

3月後半には正味で20%還元だったことに比べれば、4月は還元率を下げたことになる。午前中の発表会では「2万5,000円の支払いで5000円分を還元」としていたが、夕方になって「15%分の還元として最大5,000円分」に訂正。つまり、5,000円分の還元を得るには約3万3,333円の利用が必要になる計算だ。

「平成最後」は実質最大20%還元に(2万5,000円のお支払いという表現は後に訂正された)

還元率15%が破格のオファーであることは間違いないものの、他の事業者が20%還元を継続する中、実質最大という表現でお茶を濁した印象は否めない。高い還元率をいつまでも続けるわけにはいかず、そろそろ息切れが近いのだろうか。「令和最初」は還元率20%の復活を期待したいところだ。

専用アプリでシンプルかつ便利になった「LINE Pay」

還元率がややトーンダウンした一方、LINEが新たに発表したのがLINE Payの決済専用アプリだ。4月後半のPayトク期間中にこのアプリをコード支払いに使うことで、還元上限が2倍の1万円に増加することからも、見逃せない点だ。

LINE Payの決済専用アプリをリリース

なぜ、通常のLINEアプリとは別に、LINE Pay専用のアプリを出す必要があったのだろうか。背景にはLINEアプリの複雑化がありそうだ。

LINEの月間アクティブユーザーは6,600万人に達しており、日本国内のほとんどのスマホにLINEアプリが入っていることは大きな強みだ。だが、1つのアプリに多数の機能やサービスを盛り込んだことで、目当ての機能を見つけにくいとの指摘は増えている。

もともとQRコード決済はかざすだけのFeliCaに比べて手間がかかるのに加え、LINEアプリ自体の複雑さが面倒さを助長していたといえる。そこで登場したのが、LINE Payの決済専用アプリというわけだ。

LINE Payアプリ。コードの読み取り、コードの表示の両方に対応する

アプリを起動すると、画面の上半分にはQRコードを読み取るためのカメラが、下半分には読み取ってもらうためのバーコードとQRコードが表示される。また、30万円までならFace IDやパスワードによる認証なしで支払えるようになった(認証を必須にする設定も可能)。

ほかにもアプリ内には、LINE Pay対応店舗を表示する地図や、すぐにアクセスできるクーポン画面を備えており、ライバルのPayアプリに見劣りしない使い勝手を実現している。かざすだけのFeliCaより手間はかかるものの、決済だけでなく情報提供もできる点はアプリ決済ならではのメリットだ。

LINE Pay対応店舗の地図機能や、クーポン機能を備える

ただし、Android用アプリを即日提供したのに対し、iPhone用アプリは「近日中」との表現にとどまった。アプリ開発をぎりぎりのスケジュールで回している際にはよくある話だが、アップルの審査を待っているなど、不確定要素が多く明言できない印象だった。

質疑応答にこたえる長福久弘COO。iOS版の提供時期は明言できなかった

4月末までのキャンペーンに利用したいiPhoneユーザーからは不満の声が上がっているものの、長期的な視点ではコード支払いの手間が減ることは大きな前進だ。これをきっかけにQR決済の普及に弾みが続くかどうか、注目したい。

(山口健太)